絶対評価と相対評価の違いは?納得感と成果を両立する人事制度設計を解説

  • 評価制度

「評価が不公平だ」「頑張っても報われない」といった声が従業員から上がり、評価制度の見直しを検討していませんか?他方で経営陣からは人件費を抑えるよう求められ、納得感とコスト管理の板挟みに悩む人事担当者も少なくないでしょう。解決の鍵になり得るのが、絶対評価と相対評価の使いわけです。両者の概念自体は広く認知されていますが、自社の等級制度や報酬制度との連動まで設計・運用できている企業は多くありません。

本記事では、絶対評価と相対評価それぞれの仕組みとメリット・デメリットを整理した上で、使いわけ方や納得感と組織成果を両立させる評価制度の設計方法までを解説します。 

  • 遷移先ページ「経営と人事をつなぐ人事制度設計・育成体系構築」のサムネ画像

    生産性最大化・社員定着を実現する
    人事制度設計・育成体系構築のアプローチをご紹介

    • よくあるお悩みを解決する人事制度設計プロセス
    • 「制度を作って終わり」にしない定着支援
    • 【事例】専門人材育成・若手中堅の能力開発を重視した育成体系構築

人事評価で用いられる相対評価とは?

人事評価の方法を見直すうえで、まず押さえておきたいのが「相対評価」という考え方です。従業員のモチベーションや評価の納得感にかかわる重要な手法といえます。ここでは、相対評価がどのような仕組みなのか、基礎から解説します。

相対評価とは?

相対評価とは、他の従業員との比較によって個人の能力や実績を判断する評価手法です。評価対象となる集団のなかで順位づけを行い、順位に応じて評価が決まります。一般的には、あらかじめランクごとの人数配分を決めておくケースが多いです。たとえば「Aランク」「Bランク」「Cランク」の3段階を設けるとします。高評価のAランクは5人、中間のBランクは10人、低評価のCランクは20人といった形で枠を定めておきます。「Aランクは上位10%まで」というように、割合で決めるやり方も可能です。周囲との比較を通じて順位が明確になるため、相対評価は評価の透明性が高い点に特徴があります。公正さが求められる場面に向いている評価方法だと言えるでしょう。

相対評価と絶対評価の違い

相対評価を正しく理解するために、絶対評価との違いを知っておきましょう。絶対評価とは、目標の達成度やスキルなど、あらかじめ定めた一定の基準にもとづいて評価する手法です。他者との比較ではなく、個人がどれだけ基準を満たしたかで評価が決まります。両者の違いは、ランクごとの人数や割合に決まりがあるかどうかにあります。相対評価では枠が決まっているため、全員が同じ高評価になることはありません。一方の絶対評価では枠の制限がなく、全員が基準を満たせば全員がAランクになる可能性もあります。

人事評価で相対評価を取入れるメリット

相対評価の運用で、企業にはさまざまなメリットが期待できます。ここでは、評価手法の見直しを検討している方に向けて相対評価の4つのメリットを順に解説します。

メリット1:社内の競争を活性化できる

相対評価は、社内の健全な競争を促す効果を持っているとされます。評価が同僚との比較によって決まるため、社内で自然とライバル意識が芽生えやすいと考えられます。上位の評価をめざす意欲的な従業員は、業務の知識や技術を率先して身につけるようになり、スキルアップのモチベーションが高まるでしょう。互いに切磋琢磨する風土が育つことで、個人の成長が組織全体の成果向上にもつながるようになるでしょう。

メリット2:人件費を抑えられる

報酬の予算を管理しやすくなる点も、相対評価ならではのメリットと言えるでしょう。相対評価では報酬の対象となる人数や割合があらかじめ決まっていることが一般的です。たとえば、高評価の「Aランク」のみにインセンティブを支給する場合、枠内の従業員だけが対象となります。基準を満たせば全員が報酬対象になりうる絶対評価とは、大きく異なる点と言えます。昇給や賞与にかかる費用を見積もりやすいため、人件費の管理に役立つでしょう。

メリット3:評価の分布を調整・統制しやすくなる

相対評価は、組織内の評価バランスをコントロールしやすい点も特徴です。あらかじめ高評価の「Aランク」は〇人といった形で設定されるため、ランクごとの人数に偏りが生じるのを避けられます。対して絶対評価の場合は、特定のランクの人数に偏りが生じる可能性があるため、大部分の従業員が高評価に集中したり、逆に低評価に偏ったりする可能性もあり得ます。相対評価であれば評価結果を一定の分布に保ちながら、組織全体のバランスを整えることができます。

メリット4:評価者の作業負荷を軽減できる

相対評価は、評価する側の負担を抑えやすい手法でもあります。順位づけは、「売上金額」や「顧客獲得数」など、評価項目を点数化し、その合計点の高い順に評価対象者を並べることで順位を決定できます。経験の浅い評価者でも時間をかけずに評価がしやすいとも言えるでしょう。人事考課の度に多くの時間を要していた企業にとって、上司や人事担当者の作業負荷を減らせる点は大きな利点です。

人事評価に相対評価を導入する際の注意点

相対評価には多くのメリットがある一方で、運用前に押さえておきたい注意点も存在します。ここでは、相対評価を取入れる際に気をつけたい5つのポイントを解説します。

個人の成長を評価しにくい

相対評価では、従業員一人ひとりの成長を正しく評価しにくい点に注意が求められます。たとえば、ある従業員の業績が5%伸びたとしても、周囲の多くが10%伸びていれば、5%の成長は評価に反映されません。成果だけが対象となり、結果に至るまでの過程が見えにくくなる場合があるのです。従業員が自分の成長を実感しにくくなり、特に成長途上にある若手の不満につながりやすいと言えるでしょう。

モチベーションの低下を招くおそれがある

順位づけが長く固定化されると、従業員のモチベーションが下がる恐れもあります。下位に位置づけられた従業員は、努力しても評価が変わりにくいと感じてしまう可能性があります。一方で、最高評価に達した従業員にも意欲の低下が見られることもあります。たとえば、営業成績がトップであれば、売上が800万円でも1,000万円でも評価に差はつかないといった運用の場合には、一定以上の成果が評価されないため、優秀な人材が力を発揮し続ける意欲を失う場合も考えられるのです。

チームの一体感を損ねる可能性がある

相対評価では組織の競争力が高まる反面、チームの協調性が損なわれるリスクが存在します。評価順位を上げようとするあまり、チーム全体の成果よりも個人の成果を優先する意識が強くなる恐れがあります。従業員同士が協力し合う関係を築くことが難しい場合、結果として組織の生産性が低下する可能性があります。競争の活性化と協調性の維持を、どう両立させるかが課題になるでしょう。

社内の人間関係に影響を与えるおそれがある

明確な順位づけは、社内の人間関係に影響を及ぼす場合があります。評価が序列として可視化されることで、従業員が互いの立場を強く意識するようになります。人によっては、常に周囲と比べられる状況にストレスを感じるかもしれません。結果、業務に集中しにくくなったり、職場の雰囲気に不満を抱いたりする従業員が出てくることもあるでしょう。

所属する組織により評価が変わる場合がある

相対評価では、運用によっては所属する組織によって評価結果が変わる点にも留意しておきましょう。能力の高い従業員が集まる部署では、ある従業員が相対的に低いCランクと判定されることがあります。ところが、同じ従業員が別の部署に移れば、高評価のAランクになる可能性も十分にあります。本人の実力が同じでも、周囲のレベル次第で評価が大きく左右される仕組みであることを忘れないようにしましょう。評価の前提となる集団の特性を、あらかじめ考慮しておくことが大切です。

人事評価で絶対評価を取入れるメリット

絶対評価は、従業員の成長を後押ししたい企業や、評価の納得感を重視したい企業におすすめとされています。ここでは、絶対評価ならではの5つのメリットを解説します。

メリット主な効果
個人の成長や努力を評価できる取組み過程や成長可能性を反映しやすい
モチベーションを高めやすい努力が評価に結びつく実感を得られる
評価基準が明確で納得感がある評価理由を従業員に説明しやすい
目標達成に向けた行動を促せる一人ひとりが目標に集中できる
チームの協力関係を保ちやすい過度な社内競争が起きにくい

メリット1:個人の成長や努力を評価できる

絶対評価の大きな利点の一つは、従業員一人ひとりの成長を反映しやすい点です。他者との比較ではなく本人の達成度で評価が決まるため、成長が比較的結果に表れやすくなります。たとえば、前年より業績が伸びた従業員は、周囲の状況にかかわらずその伸びが評価に反映されます。成果だけでなく、そこに至る過程や努力も評価対象に含めやすい点も、特徴の一つでしょう。自分の頑張りが認められることで、従業員は前向きに業務へ取組めるようになるはずです。

メリット2:従業員のモチベーションを高めやすい

努力が評価に直結しやすい点も、絶対評価のメリットの一つです。定められた評価基準を満たせば高い評価を得られるため、目標に向けて努力する意欲が湧きやすくなると考えられます。順位の枠に縛られる相対評価とは異なり、必要以上にほかの従業員の成績に気を取られることも少なくなるでしょう。自分の成長に集中できる環境が整うことで、従業員のモチベーション維持にも貢献します。

メリット3:評価基準が明確で納得感がある

評価の根拠を示しやすい点も、絶対評価ならではの強みと言えるでしょう。「目標達成率90%以上でAランク」といった形で、基準があらかじめ定められています。評価者は数値や達成状況にもとづいて判断するため、評価の理由や根拠を従業員に説明しやすくなります。なぜその評価になったのかが明確であれば、従業員も結果を受け入れやすいはずです。

メリット4:目標達成に向けた行動を促せる

絶対評価には、従業員を目標達成へと導く効果も期待できます。評価基準が個人の目標と結びついているため、めざす指標が明確になりやすいでしょう。従業員は周囲との競争ではなく、自分の目標に集中して取り組める点も特徴です。一人ひとりが達成したい水準を意識することで、組織全体の生産性向上にもつながると考えられます。

メリット5:チームの協力関係を保ちやすい

過度な社内競争が生まれにくい点もメリットの一つです。絶対評価では、ほかの従業員の成績が自分の評価に影響しにくい仕組みとなっています。順位を奪い合う必要がないため、従業員同士が協力しやすい雰囲気が保たれると考えられます。知識やノウハウを共有し合う風土が育ち、チーム全体の成果向上も期待できるでしょう。

人事評価に絶対評価を取入れる際の注意点

絶対評価には多くの利点がある一方で、運用面で気をつけたい点も存在します。基準のつくり方や運用方法を誤ると、評価のばらつきやコスト増を招く恐れもあるでしょう。ここでは、絶対評価を取入れる際に押さえておきたい3つの注意点を解説します。

人件費が増える可能性がある

報酬にかかる費用が予測しにくい点も、絶対評価の懸念点の一つです。基準を満たせば全員が高評価になり得るため、報酬の対象者を事前に絞り込みにくい傾向があります。たとえば全員が目標を達成した場合、全員がインセンティブの対象となる可能性もあります。報酬の枠が決まっている相対評価と比べ、人件費の予算を見積もりにくくなる点を念頭に置いておきましょう。

評価に手間と時間がかかる

評価者の負担が大きくなりやすい点にも留意しておきましょう。絶対評価では、従業員ごとに達成度を一つひとつ確認し、基準と照らし合わせて判断する必要があります。結果にもとづき順位付けをする運用の相対評価と比べると、評価作業に時間がかかる傾向にあります。評価対象の項目が多い場合は、上司や人事担当者の業務負荷が増えてしまうのが一般的です。

評価の分布を調整しにくい

組織内の評価バランスを整えにくい点も、絶対評価の課題の一つです。あらかじめランクごとの人数を定めないため、特定のランクに人が偏る場合もあります。大多数が高評価に集まったり、逆に低評価に偏ったりする状況も起こり得ます。分布の偏りが気になるときは、相対評価を組み合わせて調整する方法を検討するのも一つの手と言えるでしょう。

  • 資料「人事評価制度の作り方 主な手法と手順、注意点を解説」のサムネ画像

    人事評価制度を作る際の流れ・ポイントを解説

    • 制度構築の基本的な流れ
    • 評価方法の種類、面談時の注意点

    など、評価制度を作る際に重要なポイントをまとめています!

絶対評価と相対評価はどのように使いわけるべき?

絶対評価と相対評価には、それぞれ異なる強みと注意点があります。どちらか一方だけが正しいわけではないため、目的や対象に応じて使いわけるのもおすすめです。ここでは、使いわけの判断基準となる3つの視点を解説します。

成果が数値で出る職種は絶対評価を使う

成果を数値で測りやすい職種では、絶対評価がおすすめと考えられます。営業職のように売上や契約件数で実績が明確に数字で表せる仕事が代表例です。あらかじめ目標値を定めておけば、達成度にもとづいて公平に評価しやすくなります。一人ひとりが自分の目標に集中できるため、達成意欲も高まりやすくなるでしょう。数値という客観的な根拠があることで、評価の納得感を得やすい点も利点の一つです。

成果が定量的に見えにくい職種は相対評価を軸にする

成果を数値化しにくい職種では、相対評価を軸に据えるのがおすすめです。バックオフィス業務や企画職のように、貢献度を数字で示しにくい仕事が該当します。明確な基準を設けにくい場面でも、集団のなかで比較すれば評価の差をつけやすくなるでしょう。順位づけによって評価の偏りを抑えられるため、一定の公平性を保ちやすくなります。ただし、評価が曖昧にならないよう、判断の観点を事前に整備しておく必要があります。

等級や役職に応じて比重を柔軟に変える

等級や役職に応じて、両者の比重を調整する方法も有効でしょう。たとえば若手従業員には、成長を後押ししやすい絶対評価の比重を高め管理職は組織全体への貢献度を測る相対評価を重く見る、といった使いわけの考え方もあります。階層ごとに適するバランスを探ることで、納得感のある評価制度に近づけやすくなるでしょう。

納得感と組織成果を両立させる評価制度の設計方法

納得感と組織成果を両立させるには、設計の段階から一貫した考え方を持つことが求められます。ここでは、納得感と成果を同時に実現するための3つの設計ステップを解説します。

求める人物像を定義し評価基準へ落とし込む

評価制度づくりは、企業が求める人物像を明確にするところからはじめます。どのような行動や成果を高く評価するのかを、組織の方針にもとづいて定義していきましょう。その人物像を、具体的な評価項目や基準へと丁寧に落とし込みます。評価の軸が組織の期待と重なることで、評価が個人と組織の成長を同時に後押しする仕組みへと近づくでしょう。

評価結果を昇降格や報酬に連動させる

評価への納得感を高めるには、評価結果を従業員の処遇へしっかりと反映することが大切です。評価が昇降格や報酬に結びついていなければ、従業員は評価の立ち位置を正しく認識しにくくなる恐れがあります。高い評価が昇給や昇格につながる仕組みがあれば、目標達成への意欲も高まりやすくなるでしょう。一方で、連動のルールはあらかじめ明示し、透明性を保っておくことが求められます。

評価者研修で評価基準を揃える

評価の公平性を保つには、評価者への研修が求められます。評価者ごとに基準の解釈が異なれば、同じ成果でも評価にばらつきが生じやすくなります。研修を通じて評価の観点をそろえ、判断のブレを抑えましょう。あわせて、個人的な感情や印象といった主観が入り込まないよう意識づけを行う必要があります。評価者の目線が統一されることで、従業員の納得感と制度への信頼も高まりやすくなるはずです。

公平で納得感のある人事評価を実現する「人事制度設計・育成体系構築」

絶対評価と相対評価には、それぞれメリットもあれば注意点もあります。一方を選べば課題がすべて解決するわけではなく、どちらの手法も等級・報酬・育成といった他の仕組みと連動して効果を発揮すると考えられます。評価結果が昇格や報酬に正しく反映されなければ、従業員の納得感は得られにくくなりかねません。だからこそ、評価手法は人事制度全体の設計のなかで位置づけることが求められます。

NTT ExCパートナーの「人事制度設計・育成体系構築コンサルティング」は、評価制度に加えて等級・報酬・育成体系までを一体で設計し、導入から運用、定着までを一気通貫で支援します。30年以上にわたりNTTグループで培ってきた知見を活かし、経営戦略や人材戦略と連動した制度づくりを実現できる点が特長です。「自社にはどちらの評価が合うのか」と迷う企業さまこそ、制度全体を見渡せる専門家とともに最適解を探ってみてはいかがでしょうか?

  • 遷移先ページ「経営と人事をつなぐ人事制度設計・育成体系構築」のサムネ画像

    生産性最大化・社員定着を実現する
    人事制度設計・育成体系構築のアプローチをご紹介

    • よくあるお悩みを解決する人事制度設計プロセス
    • 「制度を作って終わり」にしない定着支援
    • 【事例】専門人材育成・若手中堅の能力開発を重視した育成体系構築

まとめ

この記事のポイントをまとめます。

  • 相対評価は他者との比較で順位づけする手法で、評価のばらつきを調整しやすい
  • 絶対評価は定めた基準で判定する手法で、個人の成長や努力を反映でき納得感を得やすい
  • 相対評価はモチベーション低下や協調性の低下、絶対評価は評価者ごとのばらつきに注意する
  • 成果が数値で出る職種は絶対評価、定量化しにくい職種は相対評価を軸にする、等級や役職で比重を調整する等して評価手法を使いわける
  • 評価は等級・報酬・育成と連動させ、評価者研修で基準を揃えることで納得感と成果を両立できる

自社の課題と職種特性を見極め、絶対評価と相対評価を上手に組み合わせて、納得感のある評価制度づくりを進めましょう。

関連事例

CASE STUDY

NTTグループの人事制度と「NTT Group Job Board」の活用

  • IT・情報通信
  • 1,001人~
  • 働き方
  • 組織開発
  • 生産性向上
  • DX

NTTグループの人事制度の特徴や、自律的にキャリアを検討・実現していくため考え方、仕組みをご紹介いただきます。

ExCの強み

  • NTTグループの技術力を活用した
    先端ソリューション

    • NTTグループの研究開発の実績や技術力を基盤にしたソリューションで、一歩先を行く、科学的アプローチを実現

  • 人事・総務の各領域に精通した
    プロフェッショナルが伴走

    • 30年以上にわたりNTTグループの人事・総務を担ってきたHC領域の専門家が伴走

  • 『人と組織を変える施策の実行』と『振り返りでやりっぱなしを防止』の文字を、双方に向かう矢印でサイクルになっていることを表した図。

    施策効果の振り返りまでを
    実施して改善サイクルを実現

    • ExCパートナーのソリューションでは、実行後の振り返りを行い、次の改善活動に向けた示唆出しまでサポートします。

30年以上のご支援で
培われたノウハウで
800社以上の企業での
導入実績