
パーパスブランディングを社内外に浸透し人的資本経営を加速させる ~EX/CX領域を両輪で取組むことが成功のカギ~
事業スピードや変革を求められる社会の中、自社としての組織文化を醸成するにはEX(従業員体験)とCX(顧客体験)を両輪で取り組むことが重要です。一貫性のあるパーパスの社内外への浸透や、エンゲージメント診断結果の分析による組織課題の発見の事例などをポイントとして解説します。

インナーブランディングとは、企業が自社の理念やビジョンを社員に浸透させるための取組みのことを指します。
近年、多くの企業が、競争力強化や企業文化の統一を目的としたインナーブランディングに注目しています。
また、デジタル化の進展により、リモートワークの普及や多様な働き方の実現が進む中、従業員同士の一体感を醸成する必要性が高まっています。このため、多くの企業が効果的なインナーブランディング施策を展開しつつあります。
本記事では、インナーブランディングの基本概念や重要性、企業が得られるメリット、具体的な手法について詳しく解説します。
ブランディングには、企業などの組織の外側に向けた「アウターブランディング(エクスターナルブランディング)」と、内部に向けた「インナーブランディング(インターナルブランディング)」があります。
インナーブランディングとは、企業が自社の理念やビジョンを社員に浸透させるための取組みのことです。 従来の社内向けの広報活動とは異なり、企業文化の定着を目的とし、社員のエンゲージメント向上や行動の統一を図るのが特徴です。
インナーブランディングの目的は、主に以下の3つに分類できます。
企業のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を社員に深く理解させ、共通の価値観を持って行動できる組織を作ることが目的の一つです。
企業理念の浸透と行動指針の統一を図れれば部門間の連携がスムーズになり、意思決定のスピード向上も期待できます。
インナーブランディングによって社員のモチベーションやロイヤルティを高め、自発的に企業の成長に貢献できる環境を作ることも重要です。
企業理念・ビジョンを浸透させたり、社内コミュニケーションを活性化させたり、働きがいのある環境づくりを行ったりすることで、社員のエンゲージメント向上が望めます。
社内で企業理念が定着し、社員が一貫した行動を取ることで、企業のブランド価値が自然と高まります。
たとえば、社員が自社のファンとなり、SNSや口コミなどを通じて社外へポジティブな情報を発信することで、企業イメージの向上につながります。
インナーブランディングと似た言葉にアウターブランディングあります。
インナーブランディングとは、どう違うのでしょうか?
アウターブランディングとは、企業のブランド価値を顧客や市場に発信する取組みのことです。インナーブランディングの対象が自社の従業員であるのに対しアウターブランディングは顧客や市場が対象となります。
たとえば、SNSやオウンドメディアを活用したブランド発信や、広告キャンペーンやPR活動、顧客向けのイベントやセミナーの開催などが、アウターブランディングの例です。
インナーブランディングとアウターブランディングは、単独で機能するものではなく、相互に影響し合う関係にあります。
たとえば、社内で企業理念や価値観がしっかりと浸透していなければ、外部向けのブランドメッセージも一貫性を持たせることができません。
近年、多くの企業がインナーブランディングに注目し、その重要性を認識するようになっています。
ここでは、インナーブランディングが注目される、主な理由について解説します。
近年、リモートワークやハイブリッドワークの普及により、社員同士が直接顔を合わせる機会が減少しています。この結果、企業理念や価値観の共有が難しくなり、組織としての一体感が薄れるリスクが高まっています。
社員同士のつながりが希薄になりがちな現状において、インナーブランディングは従業員の帰属意識を高める有効な手段となります。
インナーブランディングの強化は、社員のエンゲージメント向上に大きく貢献します。 企業理念を理解し、会社への帰属意識を持つことで、従業員のモチベーションが向上し、離職率の低下につながると期待できます。
企業が外部に向けたブランド戦略(アウターブランディング)を成功させるためには、まず社内でのブランド意識を統一することが不可欠です。
この結果、社内で企業理念が定着し、社員が自発的にブランドを語ることで、顧客との接点においても一貫性が生まれ、顧客満足度の向上に寄与します。
これにより、競争力が向上し、持続的な成長が可能となります。
デジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展に伴い、企業の内部コミュニケーションも大きく変化しています。
このため、社内SNSやオンラインプラットフォームを活用し、企業理念を可視化・共有することで、より柔軟で効果的なインナーブランディングが可能になりました。
インナーブランディングを強化することで、企業は単なる理念の浸透だけでなく、多くのメリットを享受できます。
ここでは、特に重要な3つのメリットについて、詳しく解説します。
理念やビジョンを社内に共有・浸透させることで、従業員の会社に対する理解を深めることができます。企業の目的や価値観が明確に伝わることで、従業員一人ひとりが自らの業務と企業のミッションを結びつけられるようになります。
たとえば、社内研修やeラーニングを活用し、定期的に企業理念やビジョンを学ぶ機会を提供することで、従業員の理解を深めることができます。
インナーブランディングを強化することで、従業員の帰属意識が高まり、離職率の低下につながります。
また、企業文化や価値観が社内で明確になることで、企業に共感する優秀な人材の採用の促進も可能です。
企業の文化は、単なるルールや制度ではなく、従業員の行動や考え方、価値観の統一によって形成されます。
インナーブランディングを通じて企業の理念が日常業務に浸透すれば、一貫した行動規範が生まれ、強い組織文化の構築が期待できます。
組織文化を強化するためには、社内イベントやワークショップ、コミュニケーションツールの活用などが有効です。たとえば、オンラインでの社内共有会や、企業理念を反映した表彰制度などを導入することで、より効果的なインナーブランディングが実現できます。
インナーブランディングには多くのメリットがある一方で、導入や運用においてはいくつかの課題も存在します。
ここでは、インナーブランディングのデメリットについて、解説します。
インナーブランディングは、短期間で結果が出る施策ではありません。企業理念やビジョンを社内に浸透させ、従業員がそれを理解し、行動に落とし込むまでには、一定の時間がかかります。
定期的に企業理念を伝える取組みを行ったとしても、社員一人ひとりがその価値を理解し、実際の行動に反映するには時間がかかります。そのため、段階的に目標を設定し、成果を可視化することが重要です。
企業が強力なインナーブランディングを推進することで、企業の価値観や文化に合わないと感じる従業員が離職する可能性もあります。
これは、企業と従業員の価値観のギャップが浮き彫りになることで発生します。
たとえば、企業が「挑戦する文化」を推進している場合、それに馴染めない従業員は働きづらさを感じることがあります。
しかし、これは企業にとって必ずしもマイナスとは限りません。価値観が合わない人材が離れ、企業文化にフィットする人材が残ることで、組織の統一感が高まり、生産性が向上する可能性もあります。
インナーブランディングを推進する際は、すべての従業員に一律に価値観を押し付けるのではなく、多様な意見を尊重する柔軟な施策を併用することが重要です。
インナーブランディングを成功させるためには、従業員に企業理念を浸透させ、日常業務に落とし込むことが重要です。
そのためには、社内イベントや社内報、コミュニケーションツール、社内メディア、トップメッセージなど、多様な手法を組み合わせて活用することが大切です。
ここでは、代表的なインナーブランディングの手法をご紹介します。
社内イベントは、従業員同士のつながりを強化し、企業文化を浸透させるのに効果的です。
特に、部門を超えたコミュニケーションを促進することで、組織の一体感を高められます。
社内報で企業の理念や活動、成功事例などを定期的に発信することで、従業員の企業理解を深めるという手法です。
紙媒体・デジタル版どちらでも活用可能で、定期的に情報を届けることがポイントです。
最近では、デジタル社内報を導入する企業が増えており、動画コンテンツやインタラクティブな要素を取り入れることで、より高い効果が期待できます。
従業員同士の情報共有や意見交換を活性化するために、チャットツールや社内SNSを活用する企業が増えています。
これにより、リアルタイムでの情報共有が可能になり、企業文化の醸成も期待できます。
特に、リモートワークが進む中で、デジタルツールを活用して円滑なコミュニケーションを維持することが重要です。
社内メディアとは、動画・ポッドキャスト・ブログなどを活用して企業独自のコンテンツを発信する手法です。
従業員に対して、情報を発信し、理念や企業文化を伝えることで、より深く企業理念を理解してもらうことが期待できます。
映像や音声コンテンツなら、文字情報よりも理解しやすく、インパクトがあります。
経営陣が直接メッセージを発信することで、従業員のモチベーション向上や企業文化の定着が期待できます。
トップダウンだけでなく、社員との双方向コミュニケーションを意識することで、より効果的なブランディングが可能になります。
経営陣の考えを直接、社員に伝えることで、企業の理念やビジョンに対する共感を高めることができます。
インナーブランディングは、企業理念やビジョンを社内に浸透させ、従業員のエンゲージメントを高めるための重要な施策です。組織文化を統一することで、企業の競争力を強化し、長期的な成長と持続可能な経営を実現する鍵となります。
インナーブランディングは、単なる一時的な施策ではなく、企業の持続的な成長を支える「文化の醸成」そのものです。これをしっかりと推進することで、従業員の意識改革、企業ブランドの強化、優秀な人材の確保につながります。
貴社に合ったインナーブランディング施策の導入を検討し、継続的な改善を進めていきましょう。
最後に、従業員に企業理念を浸透させるため、経営層に向けた研修機会を検討してみてはいかがでしょうか。NTT ExCパートナーが提供する「経営幹部向け研修」は、ミッションを自分の言葉で伝え組織に事業計画として浸透する方法を、様々な企業のケースを踏まえて理解促進を促すプログラムです。
詳細はこちらをご覧ください。

パーパスブランディングを社内外に浸透し人的資本経営を加速させる ~EX/CX領域を両輪で取組むことが成功のカギ~
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