ヴィルモランみかど株式会社

~ボトムアップで作りあげた実践的防災マニュアル~ ヴィルモランみかど

  • 建設・製造・運輸
  • 301~500人
  • 災害対応・防災
社名ロゴを背景にして、社員2名が撮影された写真
ヴィルモランみかどのロゴ画像
ヴィルモランみかど株式会社

業界・業種製造・販売

従業員~500人

約300年の歴史を持つ種苗会社として、世界各地に持続的に野菜の種を提供し続けるために、常に新しい課題に挑戦し、安定的な生産・販売を行っているグローバルカンパニーです。

本事例のポイント


「ヴィルモランみかど」はフランスの農業協同組合「リマグレン」グループの一員で、野菜の種子の開発・生産や販売を手掛けられています。「種子」という生き物を扱う事業の性質上、倉庫の空調が止まると発芽が始まり商品として出荷ができなくなるなど、事業継続は重要な経営課題の一つと以前から認識されていました。 そこで社員の危機意識醸成を目的として、NTTExCパートナーのオリジナルオンラインプログラム「防災インバスケットトレーニング」の受講をきっかけに、より実践的な防災マニュアルの策定に着手することになり、NTTExCパートナーがファシリテーター兼アドバイザーとして支援をさせていただきました。経営幹部から各現場の社員まで総勢21人が“対策本部”“設備”“情報”“人事”の各ワーキンググループに分かれ、完成まで約半年間、議論と検討に取り組んだプロジェクトの成果や感想などについてお話をうかがいました。

――貴社の事業内容をお聞かせください。

山田慎吾・管理部長 日本とフランスを起源とした約300年の歴史を持つ種苗会社で、野菜の種子の開発・生産・販売をしています。日本国内だけでなく、世界の100ヵ国以上の5大陸、でビジネスを展開しています。アジアなど諸外国への輸出入も行っています。

――防災に関するこれまでの取り組み状況をお聞かせください。

山田部長 簡易な防災のガイドラインを作ってイントラネットに載せ、社内での判断基準にしてもらおうとしていました。
2016年には安否システムの導入も完了し、2018年までは年に一度避難訓練をして終わりでした。BCPはなかったので早晩作らないと、と話してはいましたが、2019年の台風19号で本社のある千葉県内で大きな被害があり、さすがにまずいなという意識を持ちました。

社員の危機意識を高めた「防災インバスケット」

――今回のプロジェクトのきっかけを教えてください。

山田部長 2019年に千葉サイト委員会からの要請を受け、机上で訓練をしました。その後、管理部でBCPを作り、そのマニュアルをもとに、2021年春に訓練をしたのですが、その時になってみんなマニュアルを初めて見たような状態でこれはダメだなと思いました。

――社員のみなさんにとって、防災や事業継続が自分ごとになっていなかったということでしょうか。そこで「防災インバスケット」を受講されたということですね。いかがでしたか?

管理部 菅田太さん 役に立ちました。文字で見ているだけではなく、タイムラインで自分が対応しているように決断をしていくプログラムだったので、受講によって一段と災害に対する想像力がかきたてられました。みんなもともとやらなきゃいけないという意識はあったので、改めて(有効な防災マニュアルの策定について)考えるきっかけになったと思います。

合意形成に〝第3者〟を活かす

――防災マニュアル策定というプロジェクトについても、引き続き、外部の力を使おうと思われたのはなぜですか?

山田部長 社内に知見のある人がいなかったということが大きいですね。(防災マニュアルを)まとめようとした時に、的確な情報や回答を誰も持ち合わせていないのが実態でした。また外部の方の意見は客観的なので、みんな素直に耳を傾けてくれました。

下條一伸・経営企画本部長 我が社の社員は中途入社の人が多くなってきています。このため、特に部門長クラスの人はそれぞれのバックグラウンドを持っていて、話が全然まとまらない時もある。合意形成がなかなか難しいんですよ。そこにNTTExCパートナーさんが第三者として入って、うまくまとめて下さったのは本当に助かりました。

山田部長 議論の過程では難しい場面もありましたが、とても我慢強くまとめる努力をしていただきました。

――特に対策本部のワーキンググループでは、会社としての方針を改めて見直す必要にも迫られました。議論が白熱し大変でしたね。

下條本部長 (幹部の間で)災害というテーマで話し合ったのは初めてでした。各々の経験も違うし、課題も多かったので再三、議論があちこちへ飛んでいました。各組織のトップであるだけにみんな思いも強い。ファシリテーションは本当に大変だったと思いますが、NTTExCパートナーさんがいて下さったことでとても安心感がありました。プロフェッショナルなファシリテーターの力で、何とか合意形成ができたと感じています。

「自分たち」のマニュアルだからこそ

――議論や検討を重ねたうえでのマニュアル策定となりましたが、意義も含めてどのような感想をお持ちですか?

菅田さん メンバーが防災に対して、自分ごととして真剣に考えてくれたことが非常に大きいです。最初の頃は「必要なことだけど忙しいから…」という感じの人が多かったのですが、最後の方では「こういう資料が欲しいんだけど」と積極的な取り組み姿勢に変わってきました。
中途入社の人がほとんどだからこそ、こういう取り組みを通じてお互いのことをよく理解し合えたのも良かったと思いますね。

山田部長 以前は「BCPは上から落とすもの」という感覚がありました。だから当初は我々管理部で作って社員に配ったという経緯があったのですが、今回の取り組みでトップダウンも必要だが、ボトムアップってとても良いなと自分自身の印象が変わりました。

――ボトムアップの「良いところ」とは、具体的にどのような点だとお感じになっていますか?

山田部長 マニュアルに書かれている内容が、メンバー自身が議論や検討で用いていた言葉そのものなんですね。だから、実行する時には、自分達が考えたことがそのまま行動になるはずです。例えば災害時の設備点検方法についても、単なるマニュアルではなく、自分がやるべきこととしてイメージされています。

下條本部長 実際に動くメンバーがマニュアルを作ったという点がとても意義が大きいです。今回はみんなが自分たちで想像しながら作り上げました。誰かが作ったマニュアルを渡されても実際には機能しないと思います。あとはこれを訓練で何度もやってみることによって本当に自分たちのものになっていくでしょうから、今後の訓練が重要だと考えています。

――私達の取り組みや、今回の議論の進め方について感想をお聞かせください

山田部長 プロフェッショナルなファシリテーターとして、我慢強く丁寧に検討の道筋をつけ、良いところに議論を落ち着かせてもらったと感じています。私達、事務局の意見も十分取り入れてもらったので助かりました。

菅田さん 困った時には相談にのってもらい、マニュアルの書きぶりにもアドバイスをいただけて有難かったです。

山田部長 初動対応の全体フローを作る過程で、細部は最終的な調整が必要でしたが、本筋については理解のうえで、支援していただいたと感じました。ただ、私達の進め方の反省点として、全体の縦軸となるフローができた時点で一旦全員に説明をしてから、各グループと調整できていれば、よりメンバーが自分たちの対応との関係性をイメージしやすかったかな、というのはありましたね。最終の全体セッションの前に、それをやっておけばより良かったかなと。

下條本部長 確かに全体フローをもっと早く固められていれば他のグループが楽だったかもしれませんね。対策本部ワーキングではうまくファシリテートしていただきながら、様々な意見を出せたのは非常に良かった半面、まとめるのが遅れてしまいました。  また、今回ほとんどの議論をリモート会議で行ったこともあり、情報共有の方法やツールに課題が見えました。他社に比べてもITリテラシーは決して低くないと思うのですが、会議の資料の読み込みなどにバラツキがあって、議論の進め方にも難しさを感じましたね。

――今後の課題についてはどのようにお考えですか?

下條本部長 次は本格的なBCPの策定です。そこまで作らないと初動の次はどうなるの?となってしまいます。その際、難しいだろうと想定しているのはグローバル連携です。しかしながらまずは日本単独で進められるところから作成していこうと思っています。特に調達と輸出販売は事業継続の観点からグローバルでの連携が必須になってくるでしょうが、それ以外は進められるところからどんどん取り組んでいきたいと考えています。
BCPというと分厚い立派なものを作りがちですが、自分たちが動かせて、運用に耐えられるものにしないといけないし、自社のサイズに合ったものをめざしていきたいです。

――本日は有難うございました。

VOICE

担当コンサルタントの声

今回は防災マニュアルの策定に向けて、災害対応フローや判断基準などを決定するセッションの実施をご支援しました。 一般的に、企業における防災マニュアルの策定は総務や管理部門が担当し、完成したものを全社に配布・周知することが多いものです。しかしその方法では、経営者を含めて社員への浸透が難しく、訓練を実施してもなかなか防災に真剣に向き合ってもらえないという悩みをよくお聞きします。 ヴィルモランみかど様では半年をかけ、経営層のメンバーで構成された対策本部ワーキングで災害対応の全体像を設計したうえで、関係する部署が自らマニュアルを作成していくというやり方で、まさに全社をあげてプロジェクトに取り組まれました。 多くのメンバーを巻き込んで取り組みを進めたことで、意見が分かれたり合意形成に時間がかかったりするなどの苦労は多々ありましたが、様々な経験、知識を持つ方々がそれぞれの視点で意見を出し合った結果、最終的には、皆さんが災害への対応を自分のこととして受け止めることができる実践的なマニュアルができあがりました。 ただマニュアルに「完璧」はありません。今後の訓練などを通して、更にブラッシュアップしていくことで、今回、みなさまがボトムアップで生み出した防災への意識がより確かなものになっていくのではないかと思っています。

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