人事評価制度見直しのポイントとは?進め方や目的までわかりやすく解説

  • 評価制度

近年の社会変化のスピードは目覚ましく、企業を取り巻く環境も激変しています。
このような状況下で、企業が持続的な成長を遂げるためには、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性を向上させることが不可欠です。
そのため、従業員のパフォーマンスを適切に評価し、処遇に反映させる人事評価制度の重要性はますます高まっています。

日本の企業において、人事評価制度を見直すことは、まさに企業の未来を左右する重要な取り組みといえるでしょう。

そこでこの記事では、人事評価制度見直しのポイントや見直す目的、具体的な進め方などを解説いたします。

人事評価制度とは

人事評価制度とは、従業員の能力や成果を正確に評価し、適切な処遇やキャリア形成につなげるための仕組みのことです。 組織の成長や生産性向上をめざす上で欠かせないもので、人材活用の重要な基盤となります。

人事評価制度は主に以下の3つの要素で構成されています。

 

等級制度

等級制度とは、従業員を役職や職務内容、責任の大きさに応じて階層的に区分する制度です。
企業内でのキャリアパスを明確に示すことから、従業員が自身の立ち位置やめざすべき方向性を理解する手助けにもなります。

 

評価制度

評価制度とは、従業員の業績や行動、能力を評価するための制度です。

人事評価の軸としては、主に以下の3つが採用されています。

  • 業績評価
  • 能力評価
  • 行動評価

これらについて詳しくは、「3.人事評価の手法を決定」をご覧ください。

 

報酬制度

報酬制度とは、評価結果に基づいて給与やボーナスなどの処遇を決定する制度のことです。
適切な報酬制度は、従業員のモチベーション向上と企業全体の生産性向上につながります。

報酬制度の種類には、次のようなものがあります。

年功序列型報酬制度

勤続年数や年齢に応じて給与が増加する、従来の日本企業の制度です。
安定性がある一方で、成果主義が薄れがちです。

成果主義型報酬制度

個人やチームの業績に応じて報酬を支給する制度です。
優秀な人材の確保に適していますが、短期成果に偏る恐れもあります。

スキル・役割ベースの報酬制度

従業員のスキルや役割に応じて報酬を決定する制度です。
成長意欲を促し、長期的な人材育成が可能です。

報酬制度について詳しくは、下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
 報酬制度の設計のポイントについてわかりやすく解説

人事評価制度の見直しのタイミングとは

人事評価制度を見直すタイミングは、企業の状況や環境変化に応じて適切に判断することが大切です。

以下は、人事評価制度の見直しが必要となる、代表的なタイミングです。

 

企業の規模や方針が変わったとき

企業が成長し、組織規模や事業方針が変わった場合に、従来の評価制度がフィットしなくなることがあります。

たとえば、社員数が増加すると、従来の単一的な評価基準では、個々の業務成果や責任範囲を正確に評価できなくなります。 そのため、新しい役職や業務内容に合わせた等級制度や評価項目の再構築が必要になります。

また、新たなビジネスモデルや事業戦略に移行する場合は、求められるスキルや成果基準も変化します。 そこで、企業の方針に合致するような評価基準の新設が求められます。

 

従業員が評価制度に不満を抱いているとき

従業員から評価制度への不満が出ている場合は、制度の公平性や透明性が欠けている可能性があるため、やはり人事評価の見直しが必要です。

たとえば、従業員の不満が現れる状況として、以下のような状態が挙げられます。

  • 評価が上司の主観に左右されている。
  • 評価基準が不明確で、努力が正しく反映されない。
  • 評価と報酬が連動していない。

このような問題は、社員のモチベーション低下や離職率増加につながる恐れがあります。 従業員の納得感を高めるため、以下の見直しが有効です。

  • 評価基準の明確化…成果や行動に基づく具体的な基準を設定する。
  • 360度評価の導入…複数の評価者による客観的な評価を実施する。
  • フィードバック強化…評価結果を明確に伝え、成長の方向性を示す。

 

法改正や制度など外部環境が変わるとき

労働関連法の改正や社会制度の変化が発生した場合にも、人事評価制度もそれに適切に対応する必要があります。

たとえば、「働き方改革関連法」の実施により、働き方の多様化や残業時間の削減が進む中で、柔軟な勤務形態や成果主義に基づく評価が求められています。

外部環境の変化に合わせた柔軟な制度設計により、法令遵守はもちろん、企業イメージや従業員の働きやすさも向上するでしょう。

 

社名変更や世代交代のとき

企業の大きな節目となる「社名変更」や「経営陣の世代交代」も、人事評価制度を見直すタイミングです。

たとえば、社名変更や世代交代に伴い、企業理念や価値観が刷新されることがあります。 このような場合には、新しいビジョンを評価基準に反映し、組織全体に浸透させる必要があります。

また、経営層の世代交代に合わせて、次世代のリーダー候補を育成するための評価項目を導入するケースも出てくるでしょう。

人事評価制度の見直しの目的とは

人事評価制度を見直す目的は、単なる評価の再設定だけではなく、組織全体の成長と社員一人ひとりの働きやすさを高めることにあります。

具体的には、以下の6つの目的が挙げられます。 
 

従業員に対する処遇を適切に改善するため

従業員が正当な評価を受け、その結果が給与や昇進などの処遇に反映されることで、モチベーションの向上が期待できます。 
 

適材適所の人員配置を実現するため

人事評価制度を通じて従業員のスキルや適性を把握することで、最適なポジションへの配置が可能になります。 
 

効果的な人材育成を促進するため

評価制度の見直しは、社員の能力開発や成長の道筋を示す良い機会となります。
たとえば、評価結果をもとに具体的なアドバイスや目標を共有し、成長を促すことができます。
また、評価項目から浮かび上がる課題に対して、必要な研修や学習プログラムを導入するといった対応が可能です。 
 

組織全体の業績アップにつなげるため

適切な評価制度は、従業員のモチベーション向上に直結します。さらにこれが、企業全体の業績向上につながります。
特に、個人目標と組織目標をリンクさせることで、業務の効率化と成果の最大化が期待できます。 
 

経営戦略に適合した制度運用を行うため

経営戦略や企業ビジョンに合致する人事評価制度を設計することで、組織全体の方向性を統一できます。 
 

自社の価値観に合った人材を育成するため

人事評価制度を通じて、企業の価値観やビジョンに即した人材を育成することが可能です。
具体的には、企業理念に基づいた行動を評価基準として明確化し、組織全体の統一感を醸成することや、企業文化に適応した次世代のリーダーや中核人材を育成するための評価指標を設定することができます。

人事評価制度の見直しの進め方

人事評価制度を効果的に見直すための具体的な方法を、8つのステップでご紹介します。
 

1.目的の明確化

まず、評価制度を見直す目的を明確にすることが重要です。目的が曖昧なままでは、制度改変後の成果も不明確になるためです。
特に、企業の経営方針や組織目標と整合性を持たせることが大切です。

例として、「従業員のモチベーションを向上させたい」「業績と報酬の連動性を強化したい」などが挙げられます。 
 

2.現状の問題点を把握する

次に、現行の評価制度にどのような課題があるかを分析します。 社員へのアンケートやヒアリングを通じて、課題を洗い出しましょう。

よくある問題点としては、

  • 評価基準が不明確で不公平感がある。
  • 評価と報酬が連動していない。
  • 現場の声が反映されていない。

などが挙げられます。 
 

3.人事評価の手法を決定

つづいて、評価手法を選定します。これで、組織のニーズに合わせた評価制度を構築できます。

人事評価の手法としては、以下の3つの評価手法を組み合わせるのが一般的です。

能力評価

社員のスキルや専門知識を評価し、今後の成長可能性を判断します。
能力向上のフィードバックがしやすいのが能力評価の特徴です。

業績評価

従業員が設定された目標をどれだけ達成したかを評価します。
数値化しやすいため、透明性の高い評価が可能です。

行動評価

日々の業務における行動や企業文化への貢献度を評価します。
組織の価値観に合った行動を促進する効果があります。 
 

4.評価項目を決定

さらに、具体的な評価項目を決め、制度の基盤を作ります。

能力評価

例:問題解決力、コミュニケーション能力、リーダーシップ。

業績評価

例:売上目標の達成率、プロジェクトの成功率。

行動評価

例:チームへの貢献度、責任感、積極性 。
 

5.変更による変化をシミュレーションする

新しい制度を導入する前に、組織全体への影響を予測してみましょう。 特に、報酬や昇進の基準が変わる場合、社員の反応を事前に想定することが重要です。

シミュレーション例:

  • 新制度での評価結果を仮設定し、既存のデータと比較。
  • 報酬制度の変更によるコスト増減を分析。

 

6.評価のためのシステムや、フォーマットを整備

評価を円滑に行うためのツールや仕組みを導入しましょう。 最近では、クラウド型の人事管理システムが普及しています。これを活用することで、データ収集や分析が効率化されます。 
 

7.社内に周知する

新しい評価制度を導入する際には、従業員への周知を徹底することが重要です。 社員が制度の目的や仕組みを理解しないまま運用を始めると、不満や混乱を招く可能性があるためです。

社内説明会や研修を開催したり、社内ポータルサイトで資料を共有したりすると良いでしょう。 
 

8. 運用を開始する

いよいよ、新しい評価制度を運用し、継続的に改善を行います。 初期段階では試験運用を行い、問題点を洗い出すと良いでしょう。

人事評価制度の見直しのポイント

人事評価制度を見直す際には、評価基準の整備や手法の見直しなど、企業の現状に合わせた取り組みが重要です。
最後に、制度の見直しを成功させるためのポイントを解説します。 
 

1.企業理念や行動指針を、具体的な項目へ落とし込む

企業の理念や行動指針を評価項目に反映することで、組織の価値観を従業員に浸透させましょう。 
 

2.職種、段階にあわせて評価項目を調整する

評価項目は、職務や役職に応じて柔軟に設定する必要があります。これにより、公平かつ適切な評価を実現できます。 
 

3.評価基準は明確にする

評価基準が不明確だと、評価への不満や不信感が生じます。
そのため、基準を明確化し、全社員に共有することが不可欠です。 
 

4.評価者のスキルを磨く

評価制度を適切に運用するためには、評価者のスキル向上が欠かせません。
主観的な判断を避け、公平性を保つスキルを評価者に身につけさせることが必要です。 
 

5.状況に合わせて新しい手法を導入する

従来の方法だけに固執せず、組織のニーズに合わせて柔軟に手法を取り入れることが重要です。

以下は、評価手法の例です。

MBO(目標管理制度)

従業員が自身で目標を設定し、その達成度を評価します。

OKR

目標(Objective)とその達成指標(Key Results)を明確に設定し、進捗を短期間で評価します。

360度評価

上司だけでなく、同僚や部下、他部署の関係者など、複数の視点から評価を行います。

コンピテンシー評価

特定の役職や業務に必要とされるスキルや行動を基準に評価を行います。

年次評価の廃止

従来の固定的な年次評価から、リアルタイムでのフィードバックを重視する仕組みへ移行します。

人事評価制度の課題と解決策

人事評価制度は企業の成長と従業員の満足度向上に寄与する重要な仕組みですが、制度の設計や運用には多くの課題が伴います。ここでは、具体的な課題と、それらを解決するための対策について詳しく解説します。

評価基準の曖昧さ

課題:

評価基準が明確でない場合、従業員が評価の内容や結果に納得できず、不公平感を抱くことがあります。これにより、モチベーションの低下や離職率の上昇につながる恐れがあります。

解決策:

  • 評価基準の可視化:評価項目を具体的かつ簡潔に文書化し、全従業員に共有します。これにより、全員が同じ基準で評価されることを理解しやすくなります。
  • 業務内容に応じた基準の設定:職種や役職ごとに異なる評価基準を設けることで、より適切な評価が可能になります。例えば、営業職には売上や顧客満足度を重視した基準を設定するなど、職務内容に即した基準を採用します。

評価者による主観的な判断

課題:

評価者の主観が強く影響する場合、評価結果が不公平になる可能性があります。この問題は特に、評価者ごとに基準や観点が異なる場合に顕著です。

解決策:

  • 評価者トレーニングの実施:評価基準の適用方法や客観的な評価手法を学ぶためのトレーニングを評価者に提供します。これにより、評価の一貫性と公平性を向上させることができます。
  • 360度評価の導入:上司だけでなく、同僚や部下、取引先など複数の視点から評価を行う360度評価を導入することで、主観に頼らない多角的な評価が可能になります。

評価結果のフィードバック不足

課題:

評価結果が従業員に十分に共有されない場合、従業員は自身の評価に対する理解を深める機会を失います。また、改善点や成功ポイントが不明確になるため、モチベーションの低下を招くことがあります。

解決策:

  • 定期的なフィードバック面談の実施:評価の結果や改善点、目標設定について従業員と話し合う時間を設けます。このような面談は、従業員が自分の役割や課題を理解する助けとなり、目標達成に向けたモチベーションを高めます。
  • フィードバックの質の向上:改善点だけでなく、達成した成果や具体的な努力についてもポジティブに伝えることで、従業員の成長意欲を刺激します。

外部環境の変化への対応不足

課題:

業界動向や法改正などの外部環境の変化に伴い、評価制度が時代遅れになることがあります。この場合、制度が従業員や企業のニーズに合わず、適切な運用が困難になる可能性があります。

解決策:

  • 定期的な制度見直し:年に一度など定期的に評価制度を見直し、時代に即した内容にアップデートします。特に、リモートワークやフレックスタイム制など新しい働き方に適応する評価基準を取り入れることが重要です。
  • 市場調査の活用:他社事例や業界トレンドを把握し、自社に適した評価制度の改善を行います。

評価プロセスの煩雑さ

課題:

評価プロセスが複雑で時間がかかる場合、管理者や従業員に負担を強いることになります。この結果、評価制度の形骸化や運用効率の低下を招くことがあります。

解決策:

  • ツールの活用:人事評価システムやクラウドベースのツールを導入し、評価プロセスの自動化や効率化を図ります。例えば、評価データの一元管理やリアルタイムでの進捗確認が可能になります。
  • 評価プロセスの簡素化:必要最低限の評価項目に絞り、従業員にとって負担の少ない制度設計を行います。

まとめ

人事評価制度の見直しは、従業員のモチベーション向上や組織全体の生産性向上を図るために欠かせないプロセスです。企業の現状やめざす方向性に応じて、柔軟に制度を再構築することが重要です。

人事評価制度は、運用開始後も定期的に見直しや改善を行うことが不可欠です。市場環境や組織の変化に対応できる柔軟な評価制度を維持することで、企業の競争力を強化できます。

また、評価結果を人材育成やキャリアプランと結びつけることで、従業員と組織の双方がメリットを享受できる仕組みをめざしましょう。

ぜひ、この記事を参考に貴社の人事評価制度を進化させてください。

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