適材適所とは?メリットや人事施策をご紹介

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適材適所とは、人材の能力や特性を適切に活かせる仕事内容や地位に就かせることをいいます。

近年、日本の企業では、人手不足や生産性向上といった課題を抱えており、適材適所の実現が求められています。

本記事では、ビジネスにおける適材適所の概要や必要性、さらに導入メリットや具体的な施策について、詳しく解説いたします。

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ビジネスにおける適材適所とは

「適材適所」とは、もともと日本建築の分野で、木材をその特性に応じて最適な場所に使い分けることを意味する言葉です。たとえば、湿気に強い木材を柱に使用したり、柔軟性のある木材を梁に活用したりすることで、建物全体の耐久性や機能性を高める考え方です。

この概念がビジネスの場に転じ、人材配置の考え方として用いられるようになりました。企業経営においては、従業員一人ひとりのスキルや経験、個性を適切に把握し、最適な業務や役割を与えることが重要です。適材適所が実現されることで、個々の能力が最大限に発揮されるだけでなく、組織全体の生産性向上やチームワークの強化にもつながります。

また、適材適所は単なる配置の問題にとどまらず、従業員のキャリア形成や成長の促進にも関わります。適切な環境で仕事をすることで、従業員はやりがいや達成感を得やすくなり、組織への貢献意欲も高まるでしょう。企業が適材適所の考え方を戦略的に活用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させることが可能になります。

なぜ適材適所が必要とされるのか

ビジネスにおいて、適材適所が求められる理由は、次の3点です。

人手不足・人件費高騰

日本では少子高齢化が進行し、生産年齢人口の減少が深刻化しています。
その結果、多くの企業が人手不足に直面しており、特に専門スキルが必要なポジションでの人材確保が困難となっています。

さらに、人材の需給バランスが崩れる中、人件費が高騰しており、企業にとっては採用コストや給与負担が大きな経営課題となっています。

このような状況下で、今いる人材を適切に活用する「適材適所」を実現することで、コスト削減と生産性向上につながります。

事業環境や社会情勢の変化への対応

近年、テクノロジーの進化や市場のグローバル化により、企業を取り巻く事業環境は急速に変化しています。

このような変化に対応するためには、企業は従業員の役割を柔軟に見直し、スキルに合った適切な配置を行う必要があります。
たとえば、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する際には、新しい技術に対応できるスキルを持った人材を重点的に配置する必要があります。

多様性のある柔軟な働き方のニーズの高まり

現代の労働市場では、多様な働き方へのニーズが高まっています。実際に、リモートワークや副業の許容、フレックスタイム制度など、柔軟な働き方を可能にする仕組みを導入する企業の動きが目立ちます。
従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観に合わせた業務の割り振りが不可欠となっているのです。

適材適所の観点では、多様性を尊重した配置を行うことで、従業員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させる効果が期待できます。また、企業と従業員との信頼関係につながり、持続可能な成長の実現にもつながります。

適材適所の例

適材適所の実現は、企業の競争力を向上させるだけでなく、従業員のモチベーションや生産性向上にもつながります。具体的なイメージを持っていただくために、適材適所の例をご紹介します。

営業部門での適材適所

営業部門では、担当者の得意分野に応じて、新規開拓が得意なAさんを新規顧客獲得の専任担当とし、一方で、既存顧客との関係維持やフォローアップが得意なBさんをリピート顧客対応に配置することで、それぞれの能力を最大限に発揮できます。さらに、プレゼン能力に優れたCさんを大口案件の提案担当にすることで、商談の成功率を高めることができます。

DX推進プロジェクトにおける適材適所

デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するプロジェクトにおいて、システム導入を効率化するため、ITスキルを持つ若手社員をプロジェクトマネージャーに据え、現場のベテラン社員をアドバイザーに任命します。
こうすることで、システム導入がスムーズに進み、プロジェクト完了までの時間が従来よりも短縮される効果を狙います。

カスタマーサポート部門での適材適所

カスタマーサポート部門では、クレーム対応に長けたスタッフをトラブル対応窓口に配置することで、顧客の不満をスムーズに解消し、企業の信頼向上につなげることができます。一方で、親しみやすく丁寧な対応ができるスタッフを新規顧客のサポート窓口に配置することで、顧客満足度の向上やリピート率の増加が期待できます。

プロジェクト型業務での適材適所

プロジェクト型業務において、プロジェクトメンバーのスキルセットや適性を見極め、リーダーシップに優れた社員をプロジェクトリーダーに、細かい作業が得意な社員をデータ分析担当に配置します。
このようにして、プロジェクトの進行がスムーズになることと、リソースの無駄が大幅な削減を狙います。

適材適所に配置するメリット

上記でお伝えしたように、適材適所を実現することは、企業の経営基盤を強化し、競争力を向上させる上で欠かせません。
ここではさらに、適材適所を行うことで得られる具体的なメリットについて見ていきましょう。

生産性の向上

従業員の能力や特性を活かせるポジションに配置することで、業務効率の大幅な向上が期待できます。

従業員が得意分野に集中できる環境を用意することで無駄な業務時間の削減につながり、結果としてチーム全体のパフォーマンスを高められます。

従業員の離職率低下

従業員が自身の能力を十分に発揮できる環境を用意することで、業務への満足感や自己実現感が高まる効果が期待できます。

この結果、従業員のエンゲージメントが向上し、離職率の低下につながります。 
特に、人間関係やキャリアの不満が原因で離職するケースが多い現代では、適材適所の実現がそのような問題を未然に防ぐ効果は高いでしょう。

人件費等のコスト削減

適材適所を徹底することで、人材のミスマッチによるコストの無駄を防ぐことができます。
具体的には、採用コストをはじめ、過剰な人材配置や必要以上の残業、外部人材の過度な活用などを低減できます。

また、従業員一人ひとりが効率的に業務を遂行することで、全体的なコストパフォーマンスが向上します。
人件費の最適化により、他の経営資源(設備投資や新規事業)に回せる予算を確保でき、企業全体の成長促進につながります。

適材適所を実現できなかった場合のリスク

適材適所が実現できない場合、企業の成長や組織運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。人材配置の不適切さは、従業員だけでなく、チームや組織全体にも負の連鎖を引き起こします。

ここでは、適材適所を実現できなかった場合の主なリスクについて解説します。

従業員のモチベーション低下

適材適所が実現されない場合、従業員は自身のスキルや適性が正しく評価されていないと感じ、やる気を失うことがあります。

特に、得意分野や能力が発揮できない業務に従事させられると、成果が上がらないだけでなく、心理的なストレスも増加します。
その結果、退職リスクが高まる可能性があります。

生産性の低下

不適切な人材配置は、業務効率や生産性の低下を招きます。スキルや経験が不足している従業員に重要なタスクを割り当てた場合、期待された成果を出せないだけでなく、業務プロセス全体に遅延をもたらすこともあります。特にDX推進などスピードが求められるプロジェクトでは致命的です。

チーム全体への悪影響

一部の従業員が不適切な配置で苦労している場合、チーム全体の士気にも影響します。
責任の偏りや不満の蓄積により、職場環境が悪化し、最終的には優秀な人材が離職する事態を引き起こす恐れもあります。

顧客満足度の低下

適材適所が不十分な組織では、顧客対応の質が低下するリスクもあります。
たとえば、顧客のニーズを正しく理解し対応するスキルが十分でない従業員がフロント業務に従事することで、サービス品質が低下し、クレームの増加や顧客離れにつながる場合があります。

組織全体の競争力低下

企業が競争力を維持するためには、限られたリソースを最大限に活用する必要があります。
しかし、不適切な人材配置が続けば、組織全体のパフォーマンスが落ち込み、他社との競争で後れを取る結果となるでしょう。

経済的コストの増加

不適切な配置により生じる生産性の低下や離職は、採用コストや再教育コストの増加を招きます。

さらに、配置ミスが原因でプロジェクトが遅延した場合、機会損失が発生し、企業収益に直接的なダメージを与えるリスクも考えられます。

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適材適所に効果的に配置する方法

適材適所を成功させるため具体的な手順とポイントをご紹介します。

業務内容を可視化し、整理する

まずは、現在の業務内容を詳細に把握する必要があります。そのためには、業務内容を可視化し、整理することが大切です。

後のステップで人材のスキルと照らし合わせるために、各業務が求めるスキルや役割をリスト化し、それぞれの重要度や優先度を評価しましょう。

従業員の能力や性格を把握する

次に、従業員一人ひとりのスキルや特性を把握します。
このステップでは、既存の人事データの分析や、デジタルツールの活用が役立ちます。

この時、従業員のスキルだけでなく、性格・性質を考慮することで、チーム全体のパフォーマンス向上を図ることができます。

従業員の適性や希望を知る

適材適所を実現するには、客観的なスキルや特性だけでなく、従業員本人の意見や希望を反映することも欠かせません。これが、従業員のモチベーションを高め、配置の成功につながります。

具体的には、面談を実施して従業員の希望や将来的なキャリアビジョンを確認しましょう。
従業員の希望を適切に反映することで、エンゲージメントを高める効果が期待できます。

配属部署との調整・フォローアップを実施する

最後に、配属後のフォローアップを徹底することが重要です。
従業員が新しいポジションや業務にスムーズに適応できるよう、部署間の調整やサポートを行いましょう。

適材適所のための人事施策

適材適所を実現するには、単に従業員を適切なポジションに配置するだけではなく、長期的な視点で従業員の成長と組織の発展をサポートする仕組みが必要です。
ここでは、適材適所を進めるために効果的な3つの人事施策をご紹介します。

ジョブローテーション

ジョブローテーションとは、従業員を一定期間ごとに異なる部署や業務に配属する施策です。
ジョブローテーションによって、従業員はさまざまな部署の業務内容を知ることになり、さらに多様なスキルを習得できます。

実施の際は、各部署で業務に就く目的を明確化し、適切な期間と内容を設計した上で、フォローアップ面談を実施し、従業員の感想や要望を収集しましょう。

ジョブローテーションのメリット

  • スキルの幅を広げられる…従業員が複数の業務に精通することで、部門横断的な課題解決能力を高める効果が期待できます。
  • 適性の発見…従業員の新たな強みや潜在能力を発見し、さらなる成長を促進できます。
  • キャリア形成の支援…多様な経験を積むことで、従業員のキャリアパスが明確になります。

キャリア面談

キャリア面談とは、従業員のキャリアビジョンを明確にするために、上司や人事担当者が従業員と1対1で話し合い、希望を聞いたり気づきやアドバイスを与えたりする場のことです。
従業員一人ひとりの目標や適性を理解し、長期的な成長を支援するために重要な施策です。

少なくとも年に1~2回、定期に実施し、面談で得た情報は、人材データベースに記録し、後続の配置や育成に活用しましょう。

キャリア面談のメリット

  • モチベーションを向上できる…従業員の声に耳を傾けることで、信頼関係が強化され、モチベーションアップが期待できます。
  • 生産性を向上できる…従業員の希望や能力に合った業務を割り当てることで、生産性向上が期待できます。

社員情報をデータベース化する

従業員に関する情報をデータベース化して一元管理することで、適材適所な配置を効率的に進められます。スキルやキャリア履歴、評価結果などをデータベース化することで、人事部門は迅速かつ正確な意思決定が可能になります。

これには、専用の人材管理システムを導入し、データ入力の精度を確保するのが最適です。データベースは定期的に情報を更新し、最新の状態を保ちましょう。

社員情報をデータベース化するメリット

  • 迅速な意思決定が可能になる…データを基に、最適な配置や育成計画を迅速に立案できます。
  • スキルを見える化できる…従業員のスキルや経験を可視化することで、ミスマッチの防止につながります。

適材適所の実施における注意点

適材適所の施策を成功させるためには、企業文化や目標に合わせて慎重な計画と管理が必要です。

以下で、注意すべきポイントを具体的に解説します。

明確な目標設定

適材適所を実現するためには、まず企業としての明確な目標を設定することが重要です。
どのようなスキルや能力を持つ人材が必要かを特定し、業務のニーズを適切に把握することがポイントです。

人材データの収集と分析

適切な人材配置のためには、従業員のスキルや適性、実績などのデータを効率的に収集・分析する仕組みが不可欠です。
たとえば、AIやデータ分析ツールを活用し、効率的に人材データを活用することが大切です。

フィードバックの活用

従業員の業務遂行能力や意欲を定期的に評価し、適切なフィードバックを提供することで、適材適所の実現を促進できます。
この結果、従業員の満足度向上と業務効率化が期待できます。

多様性と柔軟性の尊重

適材適所を実施する際には、従業員の多様な背景やスキルセットを尊重しつつ、業務内容に応じた柔軟な対応が求められます。
固定的な配置ではなく、プロジェクトや市場の変化に応じた適材適所を実現することが重要です。

デジタル時代の新たなスキルへの対応

デジタル化が進む現代において、従業員に対してリスキリングやアップスキリングを推奨する施策も重要な要素です。この結果、適材適所の幅を広げ、企業全体の競争力を高めることができます。

社内コミュニケーションの改善

適材適所の実現のためには、部署間や上司・部下間のコミュニケーションを円滑にすることが成功の鍵です。
定期的なミーティングや意見交換の場を設けることで、従業員間の相互理解を深められます。

リーダーシップの育成

適材適所を実現するためには、経営層やマネージャーのリーダーシップが欠かせません。リーダーシップの育成は、全社的な変革を支える基盤となるでしょう。

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    • 人事異動を進める際のポイント
    • 避けるべき人事異動のパターン

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まとめ

企業の生産性向上や従業員の満足度向上のためには、適材適所が重要です。
適切な人材配置を行うことで、業務効率化、離職率低下、コスト削減といった成果を得られるだけでなく、従業員のキャリア形成や組織の持続的な成長も促せます。

適材適所を実現することで、企業は変化する市場環境に柔軟に対応し、競争力を高めることができます。人材活用の新たなステージへ進むための第一歩として、ぜひ適材適所の実現を検討してみてください。

最後に、適材適所に効果的に従業員を配置するために、面談や1on1の機会を活かすスキル醸成施策を検討してみてはいかがでしょうか。NTT ExCパートナーグループが提供する「部下指導力強化研修」や「1on1ミーティングスキルと実践 eラーニング」では、部下との関係構築の方法を学ぶトレーニングや、限られた接点の中でいかにコミュニケーションの質を高められるのかを実践を通じて学び、エンゲージメント向上を支援します。

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また、社員情報を蓄積するには「タレントマネジメントシステム」の活用がおすすめです。従業員のスキルや経験を可視化し、ミスマッチの防止につなげ、より最適な適材適所の実現につながります。

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