人事異動をスムーズに行うコツとは?
- 人事異動を進める際のポイント
- 避けるべき人事異動のパターン
など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。

人事施策の一つである配置転換は、適切に運用することで、従業員のスキル向上や業務効率化が期待できます。一方、不適切な配置転換は職場のモチベーション低下や労働トラブルの原因にもなりかねません。
そこで本記事では、配置転換の目的や異動との違い、メリット・デメリット、適切な進め方や注意点について詳しく解説します。
など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。
配置転換とは、企業内で従業員の勤務地や部門・部署、職務内容などを変更することで、組織の最適化や人材の能力開発を促すための人事施策の一つです。
多くの企業では、従業員のスキル向上や適性の見直しを目的に配置転換を実施し、組織全体の生産性向上を図ります。
配置転換は、「異動」や「出向」「転籍」などと混同されがちですが、それぞれ目的が異なります。
「異動」とは、広義には配置転換を含む概念であり、従業員の職務や勤務地が変わることをさします。
文脈によっては同義的に使われることもあります。
「出向」とは、配置転換とは異なり、雇用契約が継続したまま、別の企業で業務を行う形態の異動を指します。
出向は、企業間の合意のもとで実施されることが多く、労働契約の変更が発生する点で、配置転換とは大きく異なります。
「転籍」とは、従業員の雇用契約が新しい企業に移ることを意味します。
特に、M&A(企業の合併・買収)や事業売却の際に転籍が発生することがあります。
企業が配置転換を実施する目的は、多岐にわたります。
従業員のキャリア開発だけでなく、組織の生産性向上や経営戦略の一環としても重要な役割を果たします。
ここでは、配置転換を実施する主な目的について解説します。
企業が成長し、市場環境が変化する中で、組織の最適化は不可欠です。
適材適所の人員配置を行うことで、業務の効率化や生産性の向上を図ることができます。
たとえば、営業経験のある社員をマーケティング部門へ異動させることで、顧客視点を取り入れた戦略立案が可能になります。
企業の成長には、従業員のスキル向上が欠かせません。従業員が配置転換を通じて多様な経験を積むことで、長期的な企業価値の向上につながります。
ジョブローテーションを活用し、複数の業務を経験することで、多様なスキルを身につける機会を提供できます。
たとえば、新入社員が営業部門からマーケティング部門を経て商品企画部門へのローテーションを経験することで、ビジネス全体の流れを理解できるようになります。
従業員のスキルアップと関連しますが、管理職候補者は、異なる部署での経験を積むことが重要です。
経営視点を持つリーダーの育成を目的に、定期的な配置転換を行う企業もあります。
従業員が長期的に活躍するためには、モチベーションや働きがいの向上が不可欠です。
配置転換は、キャリア形成の機会を提供し、従業員のエンゲージメント向上につながります。
長年同じ業務を続けることで、従業員のモチベーションが低下することがあります。
配置転換によって新たな挑戦の機会を提供することで、仕事への意欲を向上させることができます。
希望する職種や分野に挑戦できる制度を設けることで、従業員の自己実現を支援します。
たとえば、「社内公募制度」を導入することで、従業員が自らキャリアを選択できる仕組みを作り出せます。
配置転換は、労働環境の改善や職場内のトラブル回避にも活用されます。
職場のハラスメントや対人トラブルを未然に防ぐため、当事者同士を別部署へ異動させることがあります。パワハラ・セクハラの加害者や被害者の配置転換は、トラブルの深刻化を防ぐ手段の一つです。
業務負荷が高すぎる社員に対し、別の業務に配置することで、ストレスの軽減やワークライフバランスの向上を図ることができます。
たとえば、営業の数字にプレッシャーを感じて精神的な負荷が高くなっている社員を、サポート業務や管理部門へ異動させることで、メンタルヘルスを守ることが可能です。
企業が長期的に成長するためには、戦略的な人材活用が求められます。
配置転換は、経営の視点からも重要な役割を果たします。
新規事業の立ち上げや海外拠点の拡大に伴い、適切な人材を配置する必要があります。
たとえば、グローバル進出を計画する企業では、海外経験のある社員を海外拠点へ配置することで、スムーズな事業展開が可能になります。
配置転換は、企業の成長と従業員のスキル向上において有効な手段ですが、適切に運用しなければ、組織の混乱や従業員のモチベーション低下につながるリスクもあります。
ここでは、配置転換のメリットとデメリットについて解説します。
配置転換のメリットは、主に次の3点です。
配置転換により、新しい視点を持った従業員が加わることで、組織全体の活性化が期待できます。
同じ業務を長く担当していると、固定概念にとらわれるようになっていきます。
そこで、他部署の知見を持つ従業員が加わることで、異なる視点からの発想が生まれ、業務の改善につながる可能性があります。
また、業務が属人化すると、その人が異動や退職した際に業務の継続が困難になります。
定期的な配置転換により、業務の属人化を防ぎ、組織の柔軟性を高めることができます。
従業員のスキルアップを目的とした配置転換は、企業にとっても従業員にとっても成長の機会になります。
異なる業務を経験することで、従業員は新しいスキルを身につけることができます。
特に、将来の管理職候補には、さまざまな部門での経験が重要です。
経営視点を持ったリーダーを育成するためには、複数の部署での経験が不可欠です。
営業・マーケティング・企画・人事など、さまざまな部門を経験することで、企業の全体像を理解した幹部候補を育成できます。
長期間同じ業務に従事すると、仕事に対する新鮮さが失われ、モチベーションが低下することがあります。
配置転換は、こうしたマンネリ化を防ぐ手段としても有効です。
新しい環境での業務は、従業員にとって刺激となり、意欲の向上につながることが期待されます。
また、従業員が異なる業務を経験することで、自身の適性や新たなキャリアパスを発見する機会になることもあります。
配置転換にはデメリットもあります。次の3点です。
新しい部署に異動したばかりの従業員は、業務に慣れるまでに時間がかかるため、短期的には生産性が低下する可能性があります。
また、スムーズな適応のために、適切な研修やOJTの準備・実施が必要となります。
配置転換は必ずしも従業員の希望どおりとは限りません。
本人の意向とは異なる業務への異動は、モチベーションの低下につながるおそれがあります。
たとえば、営業を希望していたのに管理部門に異動した場合、業務に対する意欲が低下する可能性があります。
また、長年築いてきた職場の人間関係がリセットされることにストレスを感じる社員もいます。
対策としては、配置転換を実施する際には事前に従業員と十分な面談を行い、希望や適性を考慮することが重要です。キャリア相談の機会を設け、従業員自身が納得できるかたちで配置転換を進めることが大切です。
配置転換は、従業員のキャリアに大きな影響を与えるため、トラブルにつながるケースもあります。
場合によっては、不当な異動とみなされる可能性があるため、注意が必要です。
適切な理由がないと、配置転換になった労働者側から「不当な処遇」として訴えられるリスクがあります。詳しい説明は「配置転換が違法になる場合」の章をご確認ください。
など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。
配置転換を適切に実施するためには、計画にもとづいた手順と明確な基準が必要です。
ここでは、候補者の選定から内示、辞令の発行までの一連のプロセスについて解説します。
配置転換を成功させるためには、適切な人材を選定することが重要です。
候補者を決定する際には、以下の基準を考慮する必要があります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や新規事業立ち上げなど、企業の成長戦略に応じた適切な人材の配置が求められます。事業拡大や組織改編に伴う配置転換を行う場合は、新しい部署で求められるスキルや経験を明確にしましょう。
現職での業務実績やスキルを適正に評価し、新しいポジションで活躍できるかを検討しましょう。
たとえば、リーダーシップやマネジメント能力を持つ従業員は、管理職への配置転換が適しているなどです。
配置転換が従業員本人のキャリア開発に役立つかどうかも考慮しましょう。
事前に本人の意向をヒアリングし、キャリア目標とマッチするかどうかを確認することで、モチベーションの低下を防ぐことができます。
次に、内示を行います。内示とは、正式な辞令を出す前に、配置転換の意向を本人に伝えることです。
内示は従業員の納得感を高める重要なステップとなるため、適切に行う必要があります。
配置転換の1~2か月前に伝えるのが一般的です。
早過ぎると不安を抱かせ、遅すぎると十分な準備ができない可能性があるため、適切なタイミングを見極めることが大切です。
上司や人事担当者が本人へ直接説明し、異動の理由や期待する役割を伝えます。
ネガティブな印象を与えないように、前向きなメッセージを伝えるように意識しましょう。
従業員の不安や疑問に丁寧に対応し、配置転換をポジティブに受け止めてもらいましょう。
必要に応じて、異動先の上司やメンターを紹介し、スムーズに異動できるようサポートします。
最後に辞令を行います。辞令とは、配置転換を正式に決定し、従業員に通知する最終段階です。
辞令の発行方法や通知の仕方によって、従業員の受け止め方が大きく変わるため、慎重に進める必要があります。
辞令は口頭と書面の両方で通知するのが一般的です。
辞令を発行した後も、新しい職場に適応できるよう、継続的なフォローを行うことが大切です。
異動後1か月以内に上司や人事担当者が面談を実施し、適応状況を確認しましょう。
必要に応じて研修やメンター制度を導入します。
配置転換は、企業の成長と従業員のキャリア開発の両方に貢献する重要な施策です。
しかし、適切な手順を踏まずに実施すると、労働トラブルや法的リスクを引き起こすリスクがあります。
本章では、配置転換を実施する際に注意すべきポイントについて、解説します。
配置転換を実施する前に、労働契約や就業規則に違反していないかどうかを確認することが重要です。明記されていることを確認しましょう。
そもそも労働契約・就業規則が労働基準法に準拠したものであることが前提となります。
配置転換は、業務の必要性がある場合にのみ正当とされるため、単なる人員整理や個人的な理由での異動は認められません。
業務量やスキル適性に関係なく、配置転換を強行すると権利濫用に該当するおそれがあります。
配置転換は企業の裁量で実施できる人事施策の一つですが、法的な基準を満たしていない場合、不当な配置転換とみなされ、違法となるリスクがあります。
本章では、配置転換が違法と判断される代表的な3つの条件について解説します。
前述のとおり、企業が配置転換を実施する場合は、業務上の必要性が認められることが前提となります。
合理的な理由がないまま異動を命じた場合は、「配転命令権の濫用」と判断され、違法となるおそれがあります。
配置転換に業務上の合理性がないケースや、配置転換後の業務内容が適切でないケースが、これに該当します。
配置転換の目的が、企業の経営戦略とは無関係であり、不当な意図が含まれる場合、違法と判断される可能性があります。
企業が従業員に対し懲罰的な意図を持って配置転換を行うことは違法です。
配置転換によって従業員の生活や健康に深刻な影響が生じる場合、違法と判断される可能性 があります。
企業は、配置転換が従業員に与える影響を十分に考慮しなければなりません。
など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。
配置転換は、企業の成長戦略や従業員のキャリア形成にとって重要な施策ですが、適切な手順や配慮を欠くと、労働トラブルやモチベーションの低下の原因となる可能性があります。
また、違法となるリスクもあります。
企業の人事担当者は、人員整理としての配置転換ではなく、従業員の成長機会を提供する手段として捉えることが重要です。
適切なルールと手順を整え、従業員が新しい環境で最大限の能力を発揮できるようサポートすることで、企業と従業員の双方にとって「Win-Winの配置転換」を実現することができます。
最後に、適切に従業員のスキルを評価し、配置転換の候補者を選定するために「タレントマネジメントシステム」を活用してはいかがでしょうか。NTT ExCパートナーが提供する「カオナビ」は、社員一人ひとりのスキル、行動特性、異動希望等を見える化し、人事異動時の判断材料としながら配置シミュレーションすることが可能です。適材適所の配置により社員のエンゲージメント向上にも寄与します。
詳細はこちらのページをご覧ください。

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