成果を生む目標設定とは?管理者に求められる目標設定術

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現代のビジネス環境は、 DXやAIの発展、グローバル市場の競争激化 によってますます複雑になっています。このような状況下で、管理職が優れた成果を上げるためには、効果的な目標設定術が不可欠です。適切な目標設定は、チームを一つにまとめ、組織全体の成功を導く重要な要素です。

この記事では、目標設定がなぜ管理職にとって重要なのか、具体的かつ実行可能な目標をどのように設計すべきかを解説します。 管理職の方はぜひ参考にしてください。

管理職の目標設定の重要性とは?

管理職として組織の未来をつくるには、明確で効果的な目標設定が欠かせません。明確な目標設定により、単に数値を追求するだけでなく、チーム全体を活性化し、個々の成長を促すことにつながります。はじめに、管理職がなぜ目標設定を重視すべきなのか、その理由と影響について解説します。

●目標設定が組織の成功を左右するため

目標設定は、管理職にとって組織の成功を左右する重要な要素です。明確な目標は、チームの方向性を示し、全員が共通のゴールに向かって努力するための指針となります。管理職が適切な目標を設定することで、チームの熱量が一つにまとまり、組織全体の成功や成長に直結します。

●チームのモチベーションを高めるため

管理職には、単なる数値の追求ではなく、メンバーのモチベーションを高める目標設定が求められます。具体的で測定可能な目標は、メンバーのやりがいにつながり、達成時には大きな満足感をもたらします。曖昧な目標ではなく、メンバーにとって現実味がある挑戦的な目標を掲げることで、チームは達成感を感じ、より積極的に取組むことができます。

●目標達成のプロセスを支援する必要があるため

管理職は目標達成のプロセスをサポートする役割も担っています。適切なフィードバックを提供し、定期的に進捗を確認しながら必要に応じて軌道修正を行うことで、チームを正しい方向に導きます。このサポートにより、チームは一丸となって目標を追い続けることが可能になります。

●メンバーの成長を促進するため

また、目標はメンバーの成長を促す強力なツールでもあります。目標を通してメンバーが新しいスキルを習得することができるよう、役割の拡大をサポートすることは、チーム全体のスキルアップにつながり、結果として組織の競争力を高めることになります。

このように、目標設定の重要性を理解し、適切な目標を立てることで、管理職は組織全体の発展を力強く支えることができます。そのため、管理職には目標設定における高いスキルと、ビジョンを持って組織の力に変える戦略的な能力が求められます。

管理職がよく陥る目標設定の落とし穴

目標を設定する過程では管理職が見落としがちな「落とし穴」が存在します。適切かつ効果的な目標設定を行うためには、陥りやすい「落とし穴」を理解し、意識的に気づき、対応することが求められます。

●抽象的な目標設定になってしまう

管理職が目標設定を行う際、最初に陥りがちなのが抽象的な目標の設定です。具体性を欠いた「売上の向上」や「顧客満足度の向上」といった目標では、チームメンバーが具体的にどう動いてよいか理解しづらくなります。

●成果が測定しづらい 目標設定になってしまう

曖昧な目標は、達成基準が不明確で、問題を引き起こします。基準が曖昧だと、メンバーは自分の役割や達成度を把握できず、どの程度の努力が必要かも判断できずにストレスを抱える原因となります。

●メンバー個々で完結する目標設定になってしまう

さらに、管理職がチーム全体を意識せず、メンバー個人に閉じた目標を設定すると、チームの協力体制に悪影響を及ぼします。個々の成果ばかりを重視する目標設定は、メンバー間の不協和音を生むことがあり、チーム全体で共有し一丸となって取組むという姿勢が欠ける恐れがあります。

これらの落とし穴を避けるためには、具体的で測定可能な目標設定が不可欠です。具体的な目標により、各メンバーは自分の役割と責任を理解しやすくなり、行動に移すことができます。そして、チーム全体で協力し合う環境を作り、促進することが重要です。管理職は上記のような目標設定における陥りやすい落とし穴を認識し、意識的に回避することで、より効果的なチーム運営と組織の向上を図ることができます。

目標設定の基本フレームワークの使い分け

では、前章で述べた落とし穴を回避し、効果的な目標設定を実現するためにはどのような工夫が有効なのでしょうか。ここでは、実務で活用できるフレームワークを中心にご紹介します。

●SMARTの法則の特長

管理職にとって、チームの成果を最大化するには目標設定が不可欠で、SMARTのフレームワークがその基盤となります。SMARTは、「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Relevant(関連性のある)」「Time-bound(期限のある)」の5要素から構成され、目標を具体的かつ達成可能にするための強力なツールです。これにより、チームは明確な指針を持ち、進捗を測定できるようになります。

●OKRの自由度と柔軟性

一方、OKR(Objectives and Key Results)は、柔軟性がある目標管理法です。「Objectives(目的)」と「Key Results(主要な結果)」で構成され、管理職はチームにとって挑戦的な目標を設定することで組織の成長を支援することができます。OKRは戦略的に大きなビジョン達成をめざし、組織全体で効果的に目標へ向かうことを後押しします。

●フレームワークの使い分け

SMARTとOKRはどのように使い分けたらよいのでしょうか。具体的・短期的な目標が求められる場合はSMARTが適しており、イノベーションや組織の成長を促進する場合はOKRが効果を発揮する傾向があります。このように、フレームワークを適切に使い分ける力が、管理職には求められます。

フレームワークを適切に導入することで、管理職はチームの目標意識を高め、結果として組織の成功を実現します。このような取組みによって、管理職は組織を導くことができるのです。

チームを巻き込むコミュニケーション術

管理職の設定する目標が「押し付け」にならないためには、チームを巻き込み、共に進んでいくためのコミュニケーションが欠かせません。管理職は、メンバーと目標を共有し、納得を得るプロセスを大切にする必要があります。ここでは、意識したいポイントをお伝えします。

●メンバーの意見を取り入れる

目標を設定する際の最初のステップは、メンバーからの意見を取り入れることです。策定段階でメンバーを巻き込むことで、視点や意見が反映され、より具体的で達成可能な目標が生まれます。これにより、メンバーは目標への責任感を持ち、自発的な行動が促されます。

●目標を明確に伝える

次に、管理職は目標を明確に伝達する必要があります。目標の目的や意義を詳しく説明することで、メンバーは自分たちの仕事がどのように組織全体に寄与するかを理解できます。これにより、チームの連携とモチベーションが向上します。

●定期的な進捗共有とフィードバックを行う

また、目標達成に向けた進捗を定期的に共有することも重要です。定期的なミーティングで進捗を確認し、成功事例を共有することで、メンバーがポジティブなフィードバックを得ることができます。これにより、改善点を見つけ出し、必要に応じた目標の修正が可能です。

●メンバーの意見を聞く姿勢を継続する

信頼関係を築くためには、管理職はメンバーの意見を積極的に聞く姿勢を持ち続けることが大切です。問題が発生したときには、対話を通じて解決策を模索し、メンバーが意欲をもって取組めるようサポートします。

このように、目標を押し付けるのではなく、チームを巻き込み共に成長する姿勢が管理職に求められています。適切なコミュニケーションを通じて、チームが一丸となって目標に向かう環境を整えることで、組織全体の成果を生むことができるのです。

メンバーの能力を引き出す目標設定

チームを巻き込むコミュニケーションを目標設定にいかす中で、具体的にどのような視点で目標を意識合わせしていくとよいのでしょうか。ここでは、「能力を引き出す」観点で必要な目標設定の要素をご紹介します。

●「任せる」視点を持つ

まず、「任せる」視点です。適切な目標を設定し、それに向けて必要なリソースとサポートを提供することで、メンバーが責任感と自主性を持つことにつながります。手段を委ねることで、メンバーは自ら考え工夫する余地を持つことができ、主体的に行動できるようになります。結果としてチーム全体のパフォーマンスを高める効果的なアプローチへとつながるのです。

●「育てる」視点を持つ

次に、「育てる」視点を持つことが鍵です。管理職はメンバーの強みと弱みを理解し、目標設定に反映させる必要があります。特定のスキル向上を目標に加えることで、キャリア成長を支援し、長期的なモチベーションを維持することが可能です。

●個人別の目標を設定する

個人別の目標設定では、メンバーの現在のスキルレベルと目標達成までの道筋を具体的に可視化します。これにより、メンバーは何をすべきかを明確に理解し、自信を持って取組むことができます。

●積極的なフィードバックをする

前章でも述べたように管理職には、積極的なフィードバックが求められます。メンバーの能力を引き出すために、成果や課題に対する具体的でタイムリーなフィードバックが重要です。成果は事実に基づき評価し、課題は改善の方向性を示すことが求められます。対話を通じて相手の考えを尊重し、メンバーが自身の成長の可能性に気づくことができるようなコミュニケーションを心がけましょう。

●チャレンジを提供する

最後に、適切なチャレンジを提供することが目標設定の重要な要素です。日々の業務レベルより高いレベルへの挑戦を提供することで、メンバーの能力が引き立てられます。その結果、チーム全体の成長が促進され、組織への貢献度が高まるのです。

管理職がこれらの視点を持ち、メンバーの能力を引き出す目標設定を行うことで、チームは強化され、目標達成が一層現実的になります。このアプローチにより、より効果的なチーム運営と組織の発展が期待されます。

設定目標の運用におけるポイント

ここまでで、目標設定の重要性、落とし穴を防ぐ工夫、効果的な目標設定を実現するためのメンバーへの働きかけを具体的に見てきました。では、設定した目標を運用する中、組織の成果を最大化させるには、どのような取組みが必要なのでしょうか。本章では、目標設定後に意識したいポイントをご紹介します。

●定期的な進捗確認の重要視する

管理職にとって、設定した目標を達成するためには、目標設定後の進捗の管理と評価が欠かせません。まず、進捗確認のための定期的なミーティングを設けることが基本です。管理職はチームの目標達成状況を定期的にレビューし、具体的な進捗を確認する必要があります。これにより、チームメンバーは自分の役割を意識し、目標に向けた努力を続けやすくなります。

●プロセスも重視する評価を行う

また、進捗を確認する際には、数値による目標の評価だけでなく、プロセスや過程における取組みも評価の基準とすることがポイントです。管理職は成果だけでなく、目標に向けた努力や学びを評価することで、メンバーのモチベーションを高めることができます。

●目標修正に柔軟に対応する

さらに、必要に応じて目標を修正する柔軟性も重要です。状況の変化に対応し、現状に沿った目標を再設定することは、長期的な成功につながります。管理職には、現状を的確に分析し、新たな目標を提示できる力が求められます。

●管理職が模範となる

管理職自身が信頼の模範となることも重要なポイントです。誠実さを持ち、自らが掲げた目標に対して一貫した姿勢を示すことで、メンバーからの信頼が深まり、メンバーも自信を持って目標に取組むことができるでしょう。

●成功をチーム内共有し、次へのステップを示す

最後に、管理職は達成された目標をチーム全体で共有し、努力を称賛するとともにその経験を次の目標設定に活かす必要があります。これにより、チーム全体の士気が向上し、次の挑戦に向けた意識が高まります。

このように、目標設定をして終わり、ではなく、目標の進捗を適切に管理し評価することが、管理職の大きな役割です。これにより、チームは持続的に成長し、組織全体の成功に貢献していくことができるのです。

まとめ

管理職による効果的な目標設定は、チームの成功に不可欠です。SMARTやOKRなどのフレームワークを活用し、具体的で測定可能な目標を設定することで、チームは方向性を理解しやすくなります。また、透明性のあるコミュニケーションや定期的なフィードバックを通じて、メンバーの理解と信頼を深めることが重要です。適切な裁量を与え、自主性を促すことでモチベーションも向上します。

適切な目標設定と管理・フィードバックを通じて、管理職はチームと共に成長し、組織全体の発展に貢献していくことができます。継続的な努力と改善を重ねることが、成功への鍵となるでしょう。

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