管理職に向いている人の特徴とは?人事が押さえるべき適性の見極め方

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管理職に向いている人をどう見極めるかは、多くの人事担当者が抱える課題です。管理職は現場の成果を上げるだけでなく、部下を育成し、組織全体の方向性を整える役割を担います。しかし、優秀なプレイヤーが昇進しても、管理職としての適性が不足していればチームの成果が落ちることもあります。そのため、登用前に「管理職に向いている人はどのような人物か」を明確にし、必要な資質やスキルを見極めることが欠かせません。本記事では、管理職に向いている人の特徴、求められるスキルや能力、向いていない人との違い、評価の仕組み、育成施策までを網羅的に解説します。人事担当者が適材適所を実現し、登用後のミスマッチを防ぐための実践的なヒントをお届けします。

管理職に向いている人を見極める重要性

管理職は、単に部下を管理する役職ではなく、組織の方向性を具体化し、成果を最大化するための重要なポジションです。人事担当者にとって、適性のある管理職を見極めることは単なる昇進に関する判断にとどまらず、企業の成長戦略に関係する重大な意思決定といえます。ここでは、管理職の役割と登用判断を誤った場合のリスク、そして人事が担うべき戦略的な視点について解説します。

企業の成長に関係する管理職の役割

管理職は、経営方針を現場へ浸透させる橋渡し役です。チームの目標設定、業務の優先順位づけ、部下の育成・評価など、日々の意思決定が組織全体の生産性に影響します。管理職に向いている人を適切に選ぶことで、現場は一体感をもって成果を上げやすくなり、離職率の低下やエンゲージメント向上といった副次的効果も期待できます。逆に、適性の低い人を登用すると、指示系統が混乱し部下の士気が下がるなど、企業成長に好ましくない影響を与える可能性があります。

登用判断を誤ることで生じるリスク

管理職に向いている人を見誤ると、組織にはさまざまな負の影響が及びます。たとえば、プレイヤーとしては優秀でもマネジメント能力が不足している場合、部下とのコミュニケーションが滞り、目標達成が困難になることがあります。また、不公平な評価や曖昧な指示が続けば、職場への不満が増大し離職につながり、その結果採用や教育コストが発生することもあります。このようなリスクを避けるためには、スキルや実績だけでなく、管理職に求められる資質や価値観を多角的に評価する必要があります。

人事が果たすべき戦略的な視点

人事担当者は、単に人材を選抜するのではなく、企業のビジョンや戦略に沿った管理職像を明確に定義しなければなりません。そのうえで、管理職に向いている人を客観的に評価できる仕組み—たとえばコンピテンシー評価やアセスメントツールの導入—を整備することが重要です。さらに、候補者に不足している資質については研修やOJTを通じて計画的に育成し、将来的に管理職として活躍できる人材を育てる体制を構築することが、企業の持続的成長につながります。

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管理職に向いている人の基本的な資質とは

管理職の登用で重要なのは、「何ができるか」だけでなく「どんな資質を持っているか」を見極めることです。管理職に向いている人は、単なる業務遂行能力だけでなく、チーム全体によい影響を与える人間的な資質を備えています。ここでは、管理職として求められる代表的な資質を取上げ、それぞれの重要性を解説します。

高い責任感と倫理観

管理職に向いている人は、与えられた職務に対して強い責任感を持っています。責任感は、困難な状況でも逃げずに課題解決に向き合う姿勢を生みます。また、倫理観が欠けていると不正や不公平な判断につながり、組織全体の信頼を損ないます。人事担当者は、過去の業務経験や行動を確認し、誠実さや組織全体を見据えた行動が取れているかを確認しておくとよいでしょう。

判断力と冷静な意思決定力

管理職に向いている人は、複雑な状況でも冷静に情報を整理し、迅速かつ的確な意思決定ができる力を持っています。現場では想定外のトラブルが発生することも多く、感情的な反応ではなく合理的な判断が求められます。この資質を見極めるには、ストレス環境下での対応事例や、複数の選択肢から最適解を導いた経験をヒアリングすることが有効です。

周囲をまとめるリーダーシップ

管理職は、チームメンバーを動機づけ、協力を引き出す役割を担います。管理職に向いている人は、単なる指示役ではなく、メンバーの意見を尊重しながら方向性を示し、全員が同じゴールをめざせる環境をつくります。人事は、候補者がどの程度リーダーシップを発揮してきたか、周囲からの信頼度や影響力を含めて評価することが重要です。

管理職に求められるスキルと能力

管理職に向いている人を選ぶ際には、資質だけでなく具体的なスキルと能力を確認することが必要です。管理職は組織の目標を達成するために多岐にわたる役割を担うため、現場の成果を最大化するスキルセットを備えている必要があります。ここでは、管理職に求められる4つの主な能力について整理します。

部下との信頼関係を築くコミュニケーション力

管理職に向いている人の条件として、まず重要なのがコミュニケーション力です。部下が安心して相談できる環境をつくることで、情報の共有や問題発見が早まり、チームの生産性が高まります。単なる伝達能力だけでなく、相手の立場を理解し、建設的なフィードバックを行えるスキルが求められます。

問題を整理し解決に導く課題解決力

現場では日々大小さまざまな問題が発生します。管理職に向いている人は、複雑な事象を整理し、根本原因を見極めて解決策を提示できる課題解決力を持っています。場当たり的な対応ではなく、再発防止を意識した施策を打ち出せるかが重要なポイントです。

チームの成長を支援する育成力

管理職は、自分だけが成果を出すのではなく、チーム全体を成長させる役割を果たします。管理職に向いている人は、部下の強みを引き出し、成長を後押しする育成力を発揮します。人事担当者は、OJTの経験や指導スタイルをヒアリングし、候補者がどれだけ周囲の能力向上に貢献してきたかを確認するとよいでしょう。

組織目標を達成するマネジメント力

最後に重要なのが、チームを目標達成へと導くマネジメント力です。管理職に向いている人は、リソース配分、業務の優先順位付け、進捗管理を的確に行い、成果を出す仕組みをつくります。この能力が欠けていると、いくら優秀なメンバーがいても結果が伴わない可能性があります。

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管理職に向いている人と向いていない人の違い

管理職の登用判断が難しい理由のひとつは、「向いている人」と「向いていない人」の違いが明確に言語化されていないことです。管理職は成果を出すだけでなく、チームの成長と組織文化の維持にも責任を負います。ここでは、管理職に向いている人の特徴と向いていない人の傾向、さらに登用判断の時に陥りやすい落とし穴を解説します。

向いている人の典型的な特徴

管理職に向いている人は、全体を見渡す視点と周囲を巻き込む力を併せ持っています。責任感が強く、課題が発生した際には原因を冷静に分析し、解決策を提示できるタイプです。また、部下の意見を尊重し、対話を通じて信頼関係を築く姿勢がある人は、チームのパフォーマンスを引き出しやすくなります。さらに、組織目標と現場の状況をバランスよく調整できる柔軟性も、管理職に向いている人の大きな強みです。

向いていない人に見られる傾向

一方で、管理職に向いていない人は、個人プレーに偏りがちで、チーム全体を意識した行動が少ない傾向があります。感情的になりやすく、冷静な意思決定が苦手な人や、部下の育成よりも自分の業績を優先してしまう人は、結果としてチームの士気を下げる可能性があります。また、フィードバックに積極的でない、問題解決を先送りにするタイプも、管理職としてはリスク要因です。

よくある失敗例から学ぶ登用判断の落とし穴

よくある失敗のひとつが「プレイヤーとして優秀だから」という理由に重きをおいて登用するケースです。営業成績が高い、専門スキルが優れているといった実績は重要ですが、それだけでは管理職に向いている人とは限りません。結果として、マネジメント業務にストレスを感じ、部下育成や組織運営が滞ることがあります。人事担当者は、成果だけでなく行動特性やコミュニケーションの質を多面的に評価し、向き不向きを見極める必要があります。

管理職登用の判断を誤りやすいポイント

前述の陥りやすい落とし穴で解説したように、管理職に向いている人を見極める際、人事担当者が無意識に陥りやすい判断の偏りがあります。これらを把握しておくことで、登用後のミスマッチを防ぎ、組織全体のパフォーマンス低下を回避することができます。ここでは特に注意すべき3つのポイントを解説します。

陥りやすい判断①社歴や経験年数に重きをおく判断

長年勤めている社員は会社への貢献度が高いと評価されやすく、管理職候補として推薦されることも少なくありません。しかし、社歴や経験年数が長い=管理職に向いている人とは限りません。経験は重要な指標ですが、現場をリードする意欲や変化に対応する柔軟性が伴わなければ、管理職として機能しにくい場合があります。人事担当者は「何年働いてきたか」ではなく、「どのような行動を取ってきたか」「どんな価値を組織にもたらしてきたか」を見極める視点を持つことが大切です。

陥りやすい判断②専門スキルの高さに重きをおく判断

優れた専門スキルを持つ社員は、業績面での貢献度が高く、昇進候補として名前が挙がりやすい傾向があります。しかし、スキルが高いからといって管理職に向いている人とは限りません。管理職に必要なのは、個人の成果だけではなくチーム全体の成果を最大化する能力です。プレイヤーとしての能力が高い人ほど、自分で解決する習慣が強く、部下に任せるのが苦手なケースもあります。登用前にマネジメントスタイルや部下への指導経験を確認しておくと安心です。

陥りやすい判断③情意に流される判断

「そろそろ昇進させてあげないと可哀想」「人柄がいいから任せてみよう」という情意的判断は、人事の現場では少なくありません。しかし、こうした判断は管理職に向いている人の適性を客観的に見極める妨げになります。結果として、適性のない人が登用され、部下のモチベーション低下や離職につながる可能性があります。評価基準を明文化し、情意や年功ではなくコンピテンシーや行動評価に基づいた判断を徹底することが重要です。

管理職に向いている人を見極める評価方法

管理職に向いている人を正しく選抜するためには、感覚や主観に頼るのではなく、客観的かつ多面的な評価方法を活用することが重要です。ここでは、実務で取入れやすい4つのアプローチを紹介します。

適性検査による客観的評価

管理職に向いている人かどうかを判断するうえで、適性検査は有効なツールです。性格傾向、リーダーシップスタイル、ストレス耐性などを定量的に把握することで、登用後の行動を予測しやすくなります。特に、意思決定の傾向や協調性といった面談では把握しにくい特性を明らかにできる点が大きなメリットです。

360度評価で把握する多面的な視点

上司・同僚・部下といった複数の立場から評価を集める360度評価は、管理職に向いている人の全体像を把握するのに有効です。自己評価と周囲からの評価のギャップが明らかになるため、本人の成長課題も見えやすくなります。特に、部下からのフィードバックはマネジメント適性の有無を知る重要な材料となります。

面談や行動観察で確認する実践的適性

数値データだけでは判断しきれない部分は、面談や行動観察で補うことが必要です。管理職に向いている人は、問題解決のプロセスや部下との関わり方に特徴が表れます。実際の会議での発言や、チームへの指示の出し方などを観察し、リーダーとしての振る舞いが自然にできているかを見極めましょう。

過去の成果や行動特性の分析

最後に、これまでの業務成果や行動履歴の分析も欠かせません。単に業績が高いかどうかではなく、どのように成果を出してきたのか、周囲と協働して結果を出した経験があるかを確認することが重要です。管理職に向いている人は、成果と行動の両面で一貫性を持ち、組織全体への貢献が見られる傾向があります。

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管理職に向いている人材を育成する施策

管理職に向いている人を選ぶだけでなく、候補者が成長しやすい環境を整えることも人事の重要な役割です。登用前から必要なスキルを身につけられる仕組みを整備することで、管理職になってからのミスマッチや早期離職を防ぎ、組織全体のパフォーマンスを底上げできます。ここでは、実践的な育成施策を4つ紹介します。

昇進前後に必要な研修プログラム

管理職に向いている人であっても、マネジメントスキルや人事評価の知識が不足している場合があります。昇進前には「管理職の役割」「部下育成」「コンプライアンス」といった基礎研修を行い、昇進直後にはケーススタディを交えた実践型研修で現場対応力を強化します。段階的な研修により、スムーズに役割を遂行できるようになります。

OJTとメンター制度の活用

現場での経験を通じて学べるOJTは、管理職に向いている人を育成するうえで欠かせません。経験豊富な先輩管理職をメンターとして配置し、日々の業務で生じる疑問や課題を相談できる仕組みをつくることで、学びの定着が加速します。特に初めて部下を持つ管理職にとっては、心理的な安心感を得られる点も大きな効果です。

フィードバック文化の醸成

管理職としての成長には、定期的なフィードバックが欠かせません。上司からの一方的な評価だけでなく、部下や同僚からの360度フィードバックを取入れることで、管理職に向いている人の強みと課題が明確になります。人事は、フィードバックを受入れやすい文化づくりを推進し、改善行動が組織全体に広がるよう支援しましょう。

不足部分を補うキャリア支援の仕組み

管理職候補の中には、一部のスキルや経験が不足している場合があります。そうした候補者に対しては、外部セミナーの受講やプロジェクトリーダーの経験を通じて不足を補う機会を提供することが有効です。計画的なキャリア支援により、管理職に向いている人材を中長期的に育成できます。

管理職に向いている人材像を明確化し、適切な登用と育成を進めよう

管理職に向いている人を見極めることは、組織の成長を左右する人事施策です。本記事でご紹介したように、人事担当者は、自社における「管理職に向いている人材像」を言語化し、評価基準を明確にし、昇進前研修やOJT、メンター制度を組み合わせ、候補者のスキル向上を計画的に支援することが求められます。
管理職の登用は一度きりの判断ではなく、継続的な人材開発サイクルの中で行う取組みです。評価・育成・配置を一貫したプロセスとして運用することで、適材適所を実現し、組織全体の成果を最大化できるでしょう。

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