管理職が陥りやすい課題は?企業が行うべき対策と解決への流れ、成功事例を紹介

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管理職はリーダーシップを発揮して組織の中核を担う重要な存在です。場合によっては現場で実務を担当しながら、管理職としての役割を兼任しているケースもあるでしょう。管理職の組織内における役割の多様さゆえに、日々さまざまな課題に直面しやすいといえます。

この記事では、人事ご担当者さまに向けて、管理職が直面しやすい具体的な課題を解説します。また、管理職の課題解決のために企業ができる対策や、課題解決の成功事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

管理職が直面しやすい具体的な課題

多くの企業では、通常業務や部下育成をはじめとしたさまざまな場面で、管理職が以下のような課題に直面しています。管理職が陥りやすい課題を知るために、まずは具体例を確認してみましょう。

仕事の進め方に関するよくある課題

  • チーム全体の方向性が定まらない
    チームの方向性や目的が定まらず、チームメンバーが一体感を持って業務を遂行するのが難しいという課題です。管理職が立てた目標が不明確であったり、数値が現実離れしていたりするケースも少なくありません。
  • チームの業務効率に課題がある
    業務効率が低下し、チーム全体の生産性が落ちてしまうという課題です。マネジメント経験の少ない管理職が人員や時間などのリソースを適切に割り振れていなかったり、適切な優先順位で指示していなかったりする場合があります。
  • チーム内で同じ問題が繰り返し起こる
    チーム内で同様の問題が頻発してパフォーマンスの低下を招くという課題です。計画の実行後に振り返りと改善を実施していない可能性や、メンバーの能力ややる気を考慮せずにアサインしている可能性があります。

部下との関係や育成に関するよくある課題

  • 部下とのコミュニケーションが滞っている
    上司・部下間のコミュニケーションが停滞して、信頼関係を構築できていないという課題です。管理職が部下の意見や悩みをじっくりと聞く機会が不足している可能性があります。
  • 部下の反発ややる気の低下が起こっている
    部下の反発やモチベーション低下で指導が困難になるという課題です。管理職が一方的な伝え方をしていたり、部下の能力や成長段階に適した指導ができていなかったりするおそれがあります。場当たり的な指導のため、部下が自ら考えて行動できるようになりません。

自身の管理や考え方に関するよくある課題

  • 管理職のストレスがチームの雰囲気に悪影響を与えている
    ストレスを抱えた管理職がチームの雰囲気を悪化させてしまうという課題です。日常業務では進捗の遅延や品質の低下が起こるリスクがあり、ストレスの発生を避けられません。その際に管理職の自己管理が不足していると、良好な雰囲気を醸成できず、チームワークの低下を招くおそれがあります。
  • 管理職が部下に仕事を任せることができない
    管理職が「自分でやったほうが早い」という考えに囚われて、部下に仕事を任せることができないという課題です。一人で仕事を抱え込んでしまうと、本来の管理職の役割である組織・チームにおける成果の最大化を果たせなくなってしまいます。
  • 管理職が臨機応変に判断できない
    管理職が状況に合わせて適切に判断できていないという課題です。過去の成功体験や固定観念に固執する管理職が、これまでと違う取組み方やビジネス環境の変化を受入れられないケースが少なくありません。

業務量に関するよくある課題

  • 管理職の業務量が過剰になっている
    管理職の業務負担が過剰となり、コア業務であるマネジメントに時間を割けなくなるという課題です。管理職としての業務に加えて現場の仕事も担っている管理職は、業務量が多くなりやすい傾向にあります。

環境変化への対応に関するよくある課題

  • 管理職が画一的なマネジメントを行っている
    画一的なマネジメントによって多様なメンバーが能力を十分に発揮できていないという課題です。多様な背景(年齢・性別・国籍・ライフスタイルなど)を持つ人材の価値観や働き方を、管理職が受入れられていない可能性があります。
  • 管理職が新しい知識やスキルを習得していない
    管理職の学習意欲が低く、最新の知識やスキルが不足するという課題です。たとえばリモートワーク導入にともなうマネジメント業務の変化など、新しい技術や働き方に追いつけず、時代の変化に対応できないケースも見られます。

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管理職の課題解決のために企業ができる対策

ここまでご紹介したような課題に直面する管理職のために、企業は課題解決につながる対策を講じて、管理職のパフォーマンス向上を支援する必要があります。ここでは、管理職の課題解決のために企業ができる対策をご紹介します。

管理職の能力開発を支援する

「仕事の進め方」「部下との関係や育成」「自分自身の管理や考え方」に関する課題を乗り越えるには、企業が管理職に適切な学習の機会を提供することが重要です。具体的には以下の施策を検討するとよいでしょう。

  • 実践的な研修の実施
    管理職が日々の業務で求められるスキルを習得できるよう、定期的な社員研修やeラーニングを実施します。たとえば「目標管理の方法」「仕事の割り振り方」「部下の話の聞き方」「フィードバックの出し方」など習得すべきスキルは多岐にわたります。特に管理職になって間もない対象者は、“個人の仕事を遂行する一般社員”から“チーム全体の力を引き出す管理職”のマインドセットにスムーズな意識転換ができるよう、個別の支援を検討しましょう。
  • 新しい知識や技術の習得支援
    管理職が時代の変化へ柔軟に対応できるよう、社内外で多様な学習の機会を提供し、前向きにスキルや意識をアップデートするよう促すことが大切です。たとえば、AIやIoTをはじめとした最先端の技術の活用方法や、多様な背景を持つメンバーとの働き方など、新しい知識や技術の習得を積極的に促進しましょう。

管理職の仕事の負担を減らして効率を上げる

管理職が「業務量」に関する課題に直面している場合は、業務を抱え込みやすい状況を改善し、本来のマネジメントに集中できる環境を整える必要があります。その際は以下の施策が有効です。

  • 業務の見直しと削減
    管理職が抱える仕事の現状を見直し、削減できる業務がないか確認しましょう。たとえば、会議の出席や報告書の作成などの必要性を改めて検討し、業務量を最適化できると理想的です。優先順位の高い業務を見極めて、管理職が重要な業務へより集中できるよう環境を整備します。
  • ツールの導入と使い方の指導
    管理職の業務効率化に貢献するデジタルツールを導入し、人事担当者が使い方や効果的な活用方法などを伝えてフォローしましょう。たとえば、プロジェクト管理ツールやチャットツールを活用することで、業務管理や社内の情報共有を効率化できる可能性があります。

コミュニケーションを促し、心の健康を支える

「部下との関係や育成」「管理職自身の管理や考え方」に関する課題には、管理職の人間関係の質と精神的なサポートを強化する施策が効果的です。以下の施策で管理職が一人で抱え込まないような環境づくりを行いましょう。

  • 管理職の心の健康サポート
    社内に専用の相談窓口を設置し、管理職がストレスや悩みを抱えているときに利用できるように整備しましょう。また、相談窓口を設置した際は、一般社員だけでなく管理職も利用対象であることを案内し、気軽な相談を呼びかけることがポイントです。
  • 部下との面談(1on1)の質向上支援
    部下が面談(1on1)で安心して意見を伝えられるようにするために、管理職のコミュニケーションスキルやヒューマンスキルの向上を支援しましょう。傾聴力や伝達力を習得して円滑にやりとりするために、コミュニケーションに重点を置いた研修内容を定期的に実施することが大切です。
  • 管理職同士の交流の場作り
    管理職が他部署の管理職と情報交換や悩みの共有ができるよう、管理職向けの交流会や勉強会を開催するとよいでしょう。同じ立場にある管理職同士のコミュニケーションの機会を提供すると、互いに支え合える関係を築きやすくなります。

会社全体で管理職を支える基盤を作る

「管理職自身の管理や考え方」「環境の変化への対応」に関する課題は、管理職を支える基盤作りを行うことで解決に導くことができます。管理職が課題を乗り越える支援を行い、モチベーション維持につながる施策を検討しましょう。

  • 管理職の期待を明確化
    管理職に対して「会社として何を期待しているか」「どのような役割を担ってほしいか」を明確に伝えましょう。会社側の期待を共通認識として持たせることでモチベーション向上につながります。また、影響力のある経営層が管理職の努力を認め、感謝や期待のメッセージを積極的に発信することも有効です。
  • 柔軟な働き方をサポート
    管理職や部下が柔軟な働き方を実現できるよう、「リモートワーク(テレワーク)」や「フレックスタイム」といった制度を整備しましょう。その際は、新たな制度の導入によって起こり得る問題や対処法を管理職へ共有し、必要に応じて支援することが大切です。柔軟な働き方は組織にメリットをもたらす半面、マネジメントの複雑化を招く可能性があります。管理職が自信をもってマネジメントできるようサポートも含めて体制を整えましょう。

人事部の担当者が、管理職の課題を解決する流れ

管理職の課題を解決するために、人事部の担当者が解決策を実行する流れを5つのステップでご紹介します。人事を担当する方は、具体的にどのような流れで取組むべきか確認してみましょう。

Step1.管理職の課題を明確にする

まずは自社の管理職が直面する課題を明確にします。その際は「部下との1on1でなかなか本音を引き出せない」といった形で、具体的な状況や行動のレベルで課題を洗い出しましょう。

Step2.原因を分析する

続いて、管理職が直面する問題の原因や理由を分析します。たとえば「日常業務でも部下とのコミュニケーションが少ない」「部下が1on1を人事評価の場と勘違いしている」といった形で原因を特定します。

Step3.解決策を立案する

考えられる原因にもとづいて、複数の解決策を立案します。他社の事例を参考にする方法もおすすめです。たとえば「ツールを活用してオンラインのコミュニケーションを充実させる」「業務中に気軽な雑談の機会を設ける」といった対策が挙げられます。

Step4.解決策を実行する

複数の解決策のうち、もっとも有効と考えられる施策を選定して実行します。管理職と連携しながら、優先順位をつけて実行しましょう。

Step5.結果を評価する

解決策を実行した後は、結果の評価を行い、改善することが大切です。一連のサイクルを繰り返すことで、管理職が自身の課題を継続的に解決し、成長できるようになります。

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    など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

管理職の課題解決事例

ここでは、経済産業省が公表する資料「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集」をもとに、管理職の課題解決事例をご紹介します。各社の事例を参考に、管理職の課題解決へ向けた施策を検討してみましょう。

アステラス製薬株式会社

アステラス製薬株式会社では、社外から「Global head of HR」を招いて人事部門の役割を進化させて、事業部門のリーダー・マネージャーの質を高めるサポートを実施しています。また、社内のHRデータをダッシュボードにまとめて、経営層の意思決定や課題解決に役立てるデータドリブンの人事に取組んでいます。データ分析の高度化へ向けて、ピープルアナリティクスのスキルを習得した社員の確保に努めていることも特徴です。

【出典】「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 p.10」(経済産業省)

旭化成株式会社

旭化成株式会社では、自社独自のエンゲージメント調査を毎年実施し、「上司部下関係や職場環境」「社員の活力」「成長につながる行動」などを調査しています。たとえば上司部下関係に関しては、「上司の働きかけ」「仕事を支える人間関係」といった項目を測定しています。この取組みにより、ラインマネージャーは管轄する部署の回答を把握し、メンバーとの対話を通じてよりよい職場をめざすことが可能です。

【出典】「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 p.6」(経済産業省)

キリンホールディングス株式会社

キリンホールディングス株式会社では、人材の多様化を推進するために女性リーダーの育成に注力しています。具体的には、女性社員のライフイベントを考慮して早期に職務経験を積む機会を作る「早回しのキャリア形成」や、女性社員がリーダーをめざすためのスキルや機会を作る「キリンウィメンズカレッジ」の施策が挙げられます。同社は施策によって2013年度比で女性リーダーの比率は2倍以上に上昇しました。

【出典】「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 p.30」(経済産業省)

株式会社LIXIL

株式会社LIXILでは、次世代の経営幹部を育成するために各部門から推薦された従業員を選抜し、評価結果や本人の意思にもとづいた育成計画を作成しています。選抜された従業員の評価は、多面評価や外部アセスメントなどを通じて行われ、能力やポテンシャルを包括的に評価する仕組みです。また、管理職候補者に対しては、今後3年を目途に管理職登用をめざす方向性で育成に取組んでいます。

【出典】「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 p.74」(経済産業省)

株式会社日立製作所

株式会社日立製作所では、若手優秀層を含むタレントプールから経営リーダー候補を選抜・育成するプログラム「Future50」を運用しています。同社では、実績を挙げている400名のハイパフォーマーの中から50名を選抜し、経営リーダー候補として重点的な育成が行われています。若手優秀層を含む「Future50」の選抜者には、将来の経営リーダー候補として多様な成長機会が与えられます。

【出典】「人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~ 実践事例集 p.58」(経済産業省)

管理職の課題解決には社員研修による支援が有効!

ここまで、管理職が直面しやすい具体的な課題、管理職の課題解決のために企業ができる対策、課題解決の成功事例などをお伝えしました。管理職が直面する課題に対して、企業は能力開発を支援することで解決を促すことができます。社員研修をはじめとした学習の機会を提供し、管理職が課題を乗り越えるためのサポートを行うとよいでしょう。

NTT ExCパートナーでは、管理職層のスキル向上によって課題解決に貢献する各種研修プログラムをご用意しています。管理職に不可欠なマネジメントスキルや指導力を強化する研修を実施し、組織運営の課題を解決へと導きます。カリキュラムはお客さまの業務状況や課題感によって個別に設計を行うことが可能です。管理職の育成でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

「新任管理職研修 ~部下にやる気を促す目標管理(MBO)~」は、昇格して間もない新任管理職が直面する課題の解決に役立つ研修プログラムです。マネジメントスキルやコーチングスキルを習得して部下のやる気を引き出し、組織の業績向上をめざします。

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