管理職の役割とは?求められる能力や管理職に向いている人の特徴は?

  • 人材育成の基礎知識
  • マネジメント

組織の責任者である管理職には、チームの成果を最大化したり、部下の成長を支援したりする重要な役割があります。管理職がこれらの役割を全うするためにも、人事部門では管理職が必要なスキルを習得できるよう社員研修をはじめとした人材育成の施策を講じることが大切です。

この記事では、人事ご担当者さまに向けて、管理職についての基礎知識のほか、管理職の役割や求められる能力、向いている人の特徴などを解説します。優秀な管理職を確保するためにも、ぜひ参考にしてみてください。

管理職についての基礎知識

はじめに、管理職が組織の中で担う役割や、役職の種類といった基礎知識を解説します。管理職の特徴について改めて確認してみましょう。

管理職とは?

管理職とは、企業における部署やプロジェクトチームの責任者として、部下を指揮・管理する職位のことです。管理職の条件は法律で明確に定義されているわけではありません。そのため、具体的な管理職の範囲や役割は企業ごとに異なります。

なお、管理職は場合によって労働基準法における「管理監督者」としての扱いを受けることがあります。管理監督者とは、労働条件の決定や労務管理に関して経営者と一体的な立場と見なされる者のことです。管理監督者は「労働基準法」で定められた労働時間・休憩・休日の制限を受けません。管理職が管理監督者に該当するかどうかは、個別の「職務内容」「責任と権限」「勤務態様」「待遇」などから総合的に判断されます。詳しくは厚生労働省が公表する資料「労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」でご確認ください。

【参考】「管理監督者の範囲の適正化 パンフレット 労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために」(厚生労働省)

(労働時間等に関する規定の適用除外)
第四十一条 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

  • 一 別表第一第六号(林業を除く。)又は第七号に掲げる事業に従事する者
  • 二 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  • 三 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの

【引用】「労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)」(e-Gov 法令検索)

管理職の主な種類

管理職の役職には、主に以下のような種類があります。どの役職以上を管理職として扱うかの定義は企業によって異なり、明確な決まりはありません。企業によっては、係長・主任以上を管理職と見なす場合があります。

管理職の種類概要
本部長・事業部長事業部門全体の責任者
部長・ゼネラルマネージャー部署単位での責任者
次長部長の補佐
課長・マネージャー課やチームの実務統括
店長店舗運営の責任者
係長・主任※現場の責任者
  • 企業によって管理職に含める場合がある

管理職と他の言葉の違い

  • 管理職と一般社員の違い
    管理職と「一般社員」は、仕事の責任範囲に違いがあります。一般社員は個人の担当業務に責任を負いますが、管理職は部下を含む組織全体の成果に対して責任を負います。また、一般社員は個人の成果が評価対象となる一方、管理職は組織全体の成果が評価対象です。
  • 管理職と役職者の違い
    「役職者」とは、組織において特定の役割や職務を与えられた人のことです。役職(=肩書き)を持つ人は、全員が役職者に該当します。それに対して、管理職の基準は企業によって異なり、役職者のうち管理職に該当する人・該当しない人が存在します。
  • 管理職とマネージャーの違い
    「マネージャー」とは、組織やチームのマネジメントを担うポジションのことです。マネージャーには組織やチームを目標達成へ導く役割があります。マネージャーが管理職に該当するかどうかは企業によって異なり、管理職に該当する人・該当しない人が存在します。
  • 管理職と役員の違い
    「役員」とは、法人の経営に関与する取締役・会計参与・監査役をさします。役員は会社と委任契約を締結して業務を担います。それに対して、管理職に該当する従業員は会社と雇用契約を締結して業務を担う労働者である点が大きな違いです。
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    など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

管理職の主な役割・仕事内容

管理職のポジションに就く責任者は、組織において以下の重要な役割・仕事内容を担います。ここでは、一般的な管理職の職務を具体的に解説します。

チームの成果最大化と成長の支援

管理職は、個人の業績を追求する「プレイヤー」とは異なり、チーム全体の目標達成に責任を持つ「マネージャー」です。そのため、チームの成果を最大化し、成長を支援する以下の役割を担います。

  • 目標設定と目標達成の推進
    管理職は的確な目標を設定し、達成へ向けてチームを牽引します。その際は、目標達成のために業務の優先順位づけや適切なリソース配分を行う必要があります。また、組織の方針を現場レベルへ落とし込み、具体的な目標として示しながらチームを導くことが重要です。現実的かつ組織の成長につながる目標を策定するとともに、部下やチームメンバーの個人目標との整合性をはかります。
  • プロジェクトマネジメント
    プロジェクトを円滑に進行させるためには、管理職が日々の進捗状況を把握し、問題発生時は即座に対応しなければなりません。業務が滞りなく進行しているか確認し、ボトルネックを特定したら早期に改善施策を検討します。その際は、PDCAサイクルを回して現場主導で業務改善を進める体制を整備する必要があります。他部署との連携や調整も含めて、広い視野でマネジメントを実施することが重要です。
  • 部下の育成とチームパフォーマンスの向上
    管理職は、傾聴・成熟度に応じた指導・効果的なフィードバックなどの手法によって部下の成長を促します。一人ひとりに適した育成方法で部下の能力を効果的に伸ばし、チーム全体のパフォーマンスを最大化することが大切です。さらには、定期的な面談で部下のキャリア志向に寄り添いながら、OJTや研修制度活用で着実なステップアップを支援し、将来的なキャリア形成を後押しします。
  • 権限の付与と見守り
    管理職は、部下を抜擢して適切な権限を付与することで、業務を通じた成長の機会を創出します。部下のスキルやモチベーションを考慮して適切に業務を振り分けます。その際は、フォロー体制を整備しながらも過度な介入は避けて、部下を信頼して仕事を任せることが重要です。部下は与えられた仕事の責任を負い、時には失敗しながらも経験を積むことで、自律的に挑戦できるようになります。

自己変革と変化への適応

昨今の予測困難な時代における管理職には、常に学習して変化へ柔軟に対応する姿勢が不可欠です。自己変革や変化への適応の観点から、組織内で以下の役割が求められます。

  • セルフマネジメント
    管理職には自身の心身を健やかに維持するセルフマネジメントスキルが求められます。仕事中に自分の感情やストレスを適切にコントロールすることで、組織の雰囲気や人間関係を良好に保つことが大切です。また、自身の時間やタスクを適切に管理し、安定してマネジメントを実施する必要があります。
  • 意識と価値観の更新
    管理職はプレイヤーとしての成功体験に固執せずに、新たな情報や価値観を積極的に取入れながら、常に自分自身を更新していく意識を持つ必要があります。また、無意識の思い込みや偏見に気づき、多様な視点を受入れて公平な判断を心がけ、組織文化の柔軟性を高めることも重要です。
  • リスキリングとテクノロジー活用
    管理職は長期的な視点に立ってスキルや知識のアップデートに努め、スキルギャップの充足をめざすリスキリングに取組めると理想的です。また、ICTやAIといった最先端のテクノロジーを積極的に活用し、新しいツールやシステムを業務に導入することで生産性向上に貢献する必要があります。

組織とチームの架け橋

管理職は、経営層の方針を部下やチームメンバーに伝えるとともに、現場の声や課題を経営層へ届ける重要な架け橋です。組織をつなぐために以下の役割を担います。

  • 多様性への対応
    多様な背景を持つ人たちが働く職場では、管理職がさまざまな価値観や働き方(テレワークや時短勤務など)を理解し、個々の違いを尊重したマネジメントを行うことが重要です。そこでは、メンバー同士の相互理解を深めて、個性や強みを活かした役割分担ができる組織をめざします。一人ひとりが能力を発揮することで組織の力を最大限に引き出せるようになります。
  • チームマネジメント・チームビルディング
    管理職はチーム内のコミュニケーションを活性化させて信頼関係や協力体制を構築する役割を担います。定期的な1on1ミーティングを通じてチームメンバーの状況を把握し、心理的安全性を確保する必要があります。テレワークのようなオンライン環境下においても、メンバーの能力を最大化するチームビルディングの施策を実施し、一体感の醸成に努めることが大切です。
  • 組織方針の浸透と反映
    管理職は、上層部の考えや企業理念を浸透させるために、ミッションを自分の言葉で伝える必要があります。自社の理念を組織全体に浸透させることで、メンバーの行動や判断に一貫性が生まれ、組織全体の方向性を揃えることが可能です。同時に、チームが直面する課題や改善点を上層部へ共有し、コミュニケーションの橋渡し役としての機能も期待されています。
  • 働きやすい環境づくり
    管理職には働きやすい職場環境を整備するという重要な役割があります。部下の労働時間や業務量を管理するとともに、健康やメンタルヘルスに配慮することが大切です。部下が安心して働けるよう日々のコンディションに気を配り、異変が見られた場合は早めに対策を講じます。また、ハラスメント防止の方針を明確化し、相談を受けた場合は迅速な問題解決に努めます。

管理職に求められる主な能力・スキル

管理職として職務を全うするためには、以下の高度な能力やスキルが必須となります。社員研修などを通じて組織内のスキル向上を促進しましょう。

ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、人間関係を円滑に保つために必要なスキルのことです。具体的には「コミュニケーション能力」「傾聴力」「共感力」などが含まれます。ビジネスシーンでかかわる部下・上司・関係部署・取引先など、あらゆるコミュニケーションで役立ちます。ヒューマンスキルが備わっていると、自分の考えを正確に伝えるとともに、相手の考えを正確にくみとり、スムーズに合意形成を図ることが可能です。

コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキル(概念化能力)とは、抽象的な概念を通じて物事の本質を理解するスキルのことです。具体例として「ロジカルシンキング」「ラテラルシンキング」「クリティカルシンキング」などの能力が挙げられます。複雑な物事を抽象化して考えることで、問題の整理や的確な判断がしやすくなります。組織の責任者として高度な判断を担う管理職にはコンセプチュアルスキルが不可欠です。

テクニカルスキル

テクニカルスキル(業務遂行能力)とは、業務を遂行するために必要な専門知識や実務のスキルのことです。たとえ管理職自身が実務を担当しない場合であっても、部下への適切な指導や評価を実施するためにテクニカルスキルを身につけることが推奨されます。

組織運営力

組織運営力とは、組織の目標達成へ向けて人材や経営資源を効果的に動かす能力のことです。管理職はプロジェクトの進捗管理に携わるほか、部門間の調整や意思決定を担います。組織のパフォーマンスを向上させるために組織運営力を強化する必要があります。

多様性に対応する能力

あらゆる価値観を尊重し、誰もが活躍できる職場環境を作る能力です。近年のビジネスシーンでは、性別・年齢・国籍・働き方の多様化にともない、一人ひとりを受入れるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の姿勢が重視されるようになりました。管理職にはメンバーの個性を強みとして活かす柔軟性が求められます。

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    など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

管理職に向いている人・向いていない人の特徴

組織を率いる優秀な管理職を確保するためには、企業内の人材の適性を見極めることが大切です。ここでは、管理職に向いている人・向いていない人に共通する特徴をご紹介します。

管理職に向いている人の特徴

  • 組織視点で物事を考えられる
    管理職の適性があるのは、組織全体の目的や方針を理解し、組織視点で思考して行動できる人です。経営層と現場の橋渡し役となり、リーダーシップを発揮してチームを正しい方向に導くために欠かせない資質だといえるでしょう。
  • 他者の成長を支援する意識がある
    自身の成長だけでなく、部下の育成にも強い関心を持ち、周囲の成長を一緒に喜べるような人は管理職に向いています。メンバーのモチベーション向上により長期的な組織の発展に貢献できる点で、管理職の素質があるといえます。
  • 人とかかわることに抵抗がない
    コミュニケーションに前向きで他人と協働することを苦に感じない人は、管理職として活躍が期待できます。組織内での対人関係を良好に保ち、日々の業務で部下との対話や他部署との連携をスムーズにこなすことが可能です。
  • 自己管理ができる
    自らの健康や感情を適切にコントロールできる、セルフマネジメントスキルが高い人は、管理職として求められる能力を安定的に発揮できるでしょう。強いストレスやプレッシャーを感じる状況下でも、冷静かつ論理的な判断や意思決定が可能です。

管理職に向いていない人の特徴

  • 数字や調整業務に強いストレスを感じる
    管理職の業務には、「目標管理」「予算管理」「勤怠管理」「成績評価」といった数値を扱う仕事が数多くあります。また、業務において他部署との折衝やトラブル対応も不可欠となるため、管理職になるには数字や調整業務の適性が問われます。
  • 思い込みや偏見が強い
    根拠のない個人的な感覚のみで評価を下したり、相手の性別・年齢・ライフスタイルによって不公平な態度を取ったりする人物は管理職として望ましくありません。思い込みや偏見が強い管理職は、職場の信頼や安全を損なうおそれがあるため注意が必要です。
  • 過度に完璧主義
    過度な完璧主義で他人に仕事を任せられない管理職は、部下の成長機会を奪うだけでなく、自身が過重労働に陥ってしまうおそれがあります。「仕事を任せた後は信じて見守る」というスタンスを持てないと管理職を任せるのは難しいでしょう。

社員研修で管理職の役割に応じたスキル習得を促しましょう

ここまで、管理職についての基礎知識、管理職の役割や求められる能力、向いている人の特徴などをお伝えしました。管理職は組織の責任者として重要な役割を担うことから、高度なスキルを求められます。人事部門では管理職に向いている人材を見極めるとともに、必要なスキルを習得してもらうために、社員研修をはじめとした人材育成の施策を検討するとよいでしょう。

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