〝やりっぱなし〟で終わらない「管理職研修」の秘訣とは?
- 体系的な管理職育成の考え方
- NTTグループの管理職研修の事例
など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

「多額の費用と時間をかけて管理職研修を実施したのに、現場からは『意味がなかった』という声が上がる」「研修アンケートの満足度は高いが、管理職の行動が何も変わらない」、このような悩みを抱えてはいないでしょうか。管理職研修そのものの意味がないわけではありません。研修が「意味ない」結果に終わってしまうのには、企画から実施、実施後に至る各段階に原因が潜んでいます。
この記事では、管理職研修が失敗に終わる10の原因を分析し、研修を本当に意味のあるものへと変革するための5つの具体的なポイントを解説します。

管理職研修が「意味ない」と評価されてしまう背景には、研修の企画段階から研修後のフォローアップに至るまで、さまざまな原因が考えられます。ここでは、陥りがちな10個の原因を「研修前」「研修中」「研修後」の3つのフェーズにわけて具体的に見ていきましょう。
管理職研修が失敗する原因の多くは、実は研修がはじまる前から存在しています。計画段階での不備が、研修そのものを形骸化させてしまう要因になり得ます。ここでは、研修前に潜む3つの原因について解説します。
研修の目的が曖昧で共有されていない
研修を企画する上で最も重要なのは、目的を明確にすることです。「管理職にどのようなスキルを身につけてほしいのか」「研修を通じて組織のどんな課題を解決したいのか」といった目的が曖昧なままでは、研修内容も的外れなものになってしまいます。たとえば、「新任管理職向けの研修」というだけでは、プレイヤーからマネージャーへの意識転換を促したいのか、部下育成のスキルを身につけてほしいのかが不明確です。目的が曖昧だと、受講者も「なぜこの研修を受ける必要があるのか」を理解できず、モチベーションが上がりにくくなってしまいます。
研修内容が自社の課題と合っていない
他社で成功した研修や、流行りのテーマを安易に取入れるだけでは、成果につながらない可能性があります。自社の経営戦略や現場の課題と連動していない研修は、受講者にとって「自分には関係ない話」と捉えられてしまう恐れがあります。たとえば、現場が部下とのコミュニケーションに課題を抱えているのに、経営戦略に関する知識をメインにインプットする研修では、現場の課題解決にはつながりにくいでしょう。事前に管理職層へのヒアリングやアンケートを行い、現場のリアルな課題を把握した上で、研修内容を設計することが不可欠です。
受講者に前向きな参加姿勢がない
管理職研修が「価値を感じにくい」と思われてしまう背景には、受講者の姿勢が影響することがあります。会社からの指示だからと消極的に受講している状態では、学習内容が自分ごととして捉えられず、成果に結びつきにくくなります。特に、長年の経験から自分なりのスタイルが固まっている管理職ほど、新しい知識やスキルを取入れる必要性を感じにくい傾向があります。そのため、研修が自分や組織にもたらす効果や目的を、事前にしっかりと共有し、腹落ちした状態で参加してもらうことが欠かせません。
研修前の準備が万全でも、研修当日の進め方や受講者の姿勢によっては、効果が大きく損なわれてしまいます。ここでは、研修中に起こりがちな「意味がない」と言われる原因を3つご紹介します。
受講者の当事者意識が高くない
研修は受講者が主体的に学びを得る場です。「この時間をどう活かすか」という意識が低いまま参加すると、得られる学びも限定的になります。ディスカッションで意見を述べない、他者の発言に関心を示さないといった姿勢は、成長のチャンスを自ら手放してしまうことになります。受講者自身が当事者意識を持つことで、研修の価値は大きく変わります。
研修に双方コミュニケーションが取入れられていない
講師が一方的に話し続ける講義形式の研修は、受講者の集中力が持続しにくく、内容が記憶に残りづらい傾向があります。特に管理職研修では、知識のインプットだけでなく、実践的なスキルの習得が求められます。ロールプレイングやケーススタディ、グループディスカッションといった、受講者が主体的に参加できるプログラムを取入れ、アウトプットの機会を増やしましょう。
内容が抽象的で実践的ではない
研修で学ぶ内容が、一般的な理論や理想論に終始し、現場の具体的な業務とかけ離れていては効果が期待できません。たとえば、「リーダーシップの重要性」を説くだけでなく、「自部署の課題を解決するために、明日から具体的にどのようなリーダーシップを発揮するのがよいか」を考えてもらうような、実践に結びつく内容が不可欠です。受講者が直面しているリアルな課題をテーマにすることで、研修内容を自分ごととして捉え、現場での行動変容を促すきっかけを作ることができます。
研修で素晴らしい学びを得たとしても、現場の行動に結びつかなければ意味がありません。研修を「やりっぱなし」にせず、学びを成果につなげるためには、研修後の仕組みづくりが重要です。
研修内容を実践する機会やサポートがない
研修で学んだことをいざ実践しようとしても、日々の業務に追われて後回しになってしまったり、周囲の協力が得られなかったりするケースは少なくありません。研修後に学んだ内容を実践する場として、たとえば「1on1ミーティングの実施」や「新たな目標管理手法の導入」などを会社として設定し、上司がその実践をサポートする体制を整えましょう。
上司や周囲の理解が得られない
受講者が研修で学んだ新しいマネジメント手法を試そうとしても、上司や同僚、部下が研修内容を理解していなければ、協力は得られにくいでしょう。むしろ、「余計なことをするな」と反発を招く可能性すらあります。研修内容を管理職の直属の上司である部長、役員などに事前に共有し、組織全体で管理職の行動変容を後押しする雰囲気を作りましょう。
振り返りや効果測定の仕組みがない
研修は一度受けて終わりではありません。研修から数か月後にフォローアップ研修を実施するなど、定期的に学びを振り返り、実践状況を確認する機会を設けることが、知識の定着につながります。「研修で学んだことをどのくらい実践できたか」「実践した結果、どのような変化があったか」を振り返ることで、研修の効果を測定し、次回の研修内容の改善に活かすことができます。
学んだことが評価に結びつかない
研修で推奨される行動と、社内の人事評価制度が連動していない場合も、行動変容につながりにくくしまいます。研修で「短期的な成果だけでなく、部下の長期的な成長を支援することが重要」と学んだとしても、評価が短期的な業績のみで決まるのであれば、管理職は部下育成よりも目先の数字を優先してしまうでしょう。研修で促す行動変容が、評価としても反映される仕組みを構築する必要があります。
など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

管理職研修が「意味ない」と言われる原因を避けるためには、研修の企画から効果測定までを一貫したプロセスとして捉え、戦略的に設計することが重要です。ここでは、研修の成果を最大化するための5つのポイントを解説します。
最初に行うべきは、研修の目的を明確に定義することです。それは「なぜ、この研修を行うのか?」という問いに対する答えを明確にすることです。自社の中期経営計画や事業戦略、人事戦略を深く理解し、「戦略を実現するために、管理職にどのような役割・行動を期待するのか」を具体化します。目的が明確であればあるほど、研修内容の軸が定まり、受講者への説明にも説得力が生まれます。
| 悪い目的設定の例 | よい目的設定の例 |
|---|---|
| 新任管理職に必要なスキルを学ぶ機会を提供する | 事業部のクロスセル強化戦略を推進するため、新任管理職が管轄チームの壁を越え、他チームと連携して目標達成するリーダーシップを身につける |
| 1on1を導入する | 若手社員の離職率低下という課題に対し、管理職が部下のキャリア自律を支援するための傾聴力とコーチングスキルを習得し、月1回の1on1が定着する |
研修の目的が定まったら、次に対象となる管理職が現在どのような課題に直面しているのかを把握します。本人へのヒアリングやサーベイ、さらにはその上司や部下からの多面的な情報を集めることで、より解像度の高い課題が見えてきます。「会社が学ばせたいこと」と「本人が学びたいこと」のギャップを埋めることが、研修への主体的な参加を促す鍵となります。
研修プログラムを設計する際は、知識をインプットする時間と、それを使って実践するアウトプットの時間のバランスを意識しましょう。インプットはeラーニングなどで事前に行い、集合研修の場ではディスカッションやケーススタディ、ロールプレイングといったアウトプットに多くの時間を割くのが効果的です。知識が定着し、現場で「使える」スキルへと変換されやすくなります。
研修を1回だけのイベント(点)で終わらせず、継続的な学びの機会(線)として設計しましょう。研修前に事前課題で意識づけを行い、研修後には定期的なフォローアップセッションを設けます。たとえば、1か月後に研修参加者で集まり、「学んだことを実践してみてどうだったか」「どんな壁にぶつかったか」を共有するだけでも、学びの継続と定着に大きな効果があります。
研修の効果測定は、学習の理解度や満足度だけでなく、「行動」がどう変わったかに焦点を当てることが有効的です。研修の3か月後などに、本人とその上司、部下に対して「研修で学んだ○○について、実践できていますか」「管理職の△△という行動に変化は見られますか」といった具体的な行動指標でアンケートやインタビューを行います。研修の成果を客観的に評価し、次への改善につなげることができます。
など、育成・研修を成果につなげるポイントをご紹介します。

これまでにご紹介したポイントを実践しても、管理職の育成に課題が残る場合、研修という手法だけでなく、より広い視野で対策を考える必要があります。
管理職の成長を促す方法は、集合研修だけではありません。たとえば、挑戦的な業務を意図的に与える「タフアサインメント」、豊富な知識と経験を有した管理職の先輩(メンター)による業務上・キャリア形成も含めた支援活動である「メンター制度」、他の管理職の課題解決を支援する「ピアコーチング」など、多様な育成手法があります。研修とこれらの施策を組み合わせることで、より効果的な育成体系を構築できます。
社内のリソースだけで研修を企画・運営することに限界を感じる場合は、外部の研修会社やコンサルタントといった専門家の力を借りることも有効な選択肢です。豊富な他社事例や専門的な知見にもとづいた客観的なアドバイスは、社内だけでは気づけなかった新たな課題の発見や、効果的なプログラム設計につながるでしょう。
従来の管理職研修で成果が出ない背景には、部下の成熟度に応じた機会の提供ができていない可能性が挙げられます。NTT ExCパートナーの「部下指導力強化研修」では、状況対応型リーダーシップの理論をもとに、多様な部下特性やシチュエーションに応じた育成スキルを実践的に習得できます。傾聴・質問力の強化から、年上部下や成長意欲の低い部下への対応まで、ロールプレイングを通じて実務に直結する指導力を養成します。お客さまの課題に応じて内容はカスタマイズ可能ですので、内製での研修では、自社の課題に応じた設計に負担を感じている企業の方におすすめです。組織目標を達成できる管理職への変容をご支援する研修ソリューションです。
管理職研修が「意味ない」ものになるか、「価値ある投資」になるかは、その設計思想に大きく左右されます。重要なのは、研修を単発のイベントとして捉えるのではなく、企業の経営戦略を起点とした、継続的な人材育成の仕組みの一部として位置づけることです。本記事で紹介した原因と対策を参考に、管理職研修の見直しを検討されている方は、管理職と組織がともに成長できる「意味のある研修」を実現に、本記事で紹介した対策を参考にしてみてください。
を学ぶことができる研修です。
をご紹介します。
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