人材マネジメントの基本や成功のポイントを解説

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少子高齢化による人材不足や、働き方の多様化が進む現代において、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを向上させる重要性が、ますます高まっています。しかし、具体的に何から手をつければよいのか、どうすれば自社の経営戦略と連動させて効果的な人材活用ができるのか、悩んでいる人事担当者の方も多いのではないでしょうか。そこで注力したいのが、人材マネジメントです。この記事では、人材マネジメントの基本的な考え方から、その目的、具体的なプロセス、そして成功させるための重要なポイントについて、わかりやすく解説いたします。

人材マネジメントとは

人材マネジメントとは、企業の経営戦略を実現するために、従業員という「人的資源」を最大限に活用するための戦略的な仕組みや取組みの総称です。企業を構成する経営資源は「ヒト・モノ・カネ・情報」と表現されますが、その中でも「ヒト」は、ほかの資源を生み出し、活用する主体として最も重要な要素です。

人材マネジメントでは、単に人員管理を行うにとどまらず、従業員一人ひとりの能力やスキル、経験を可視化し、適切な採用、育成、配置、評価、報酬を通じて、個々のパフォーマンスとモチベーションの最大化を図ります。その結果、組織全体の生産性を向上させ、企業の持続的な成長を促すことを目的としています。

ここで、「人事管理」や「労務管理」といった類似する用語との違いを明確にしておきましょう。

労務管理

労務管理とは、主に、従業員の労働条件や福利厚生、安全衛生など、労働環境を整備・管理する業務をさします。勤怠管理、給与計算、社会保険手続きなどが労務管理に含まれ、法令遵守(コンプライアンス)の側面が強いのが特徴です。

人事管理

人事管理とは、主に従業員の「管理」に焦点を当てます。労務管理を含む場合もありますが、採用、配置、異動、昇進・昇格といった人事制度の運用が中心となります。

人材マネジメント

人材マネジメントは、「労務管理」と「人事管理」の二つの要素を含みつつ、さらに「経営戦略」との連動を重視する点が大きな違いです。経営目標の達成という上位の目的から逆算し、どのような人材が必要で、その人材をどのように確保・育成・活用していくかを戦略的に設計・実行するアプローチが「人材マネジメント」なのです。

人材マネジメントが注目される背景

なぜ今、多くの企業で人材マネジメントの重要性が再認識されているのでしょうか。 その背景には、日本企業を取巻く深刻な環境変化があります。

人材不足

最も大きな要因が、深刻な人材不足です。少子高齢化の進展により、日本人の生産年齢人口(15歳~64歳)は、減少の一途をたどっています。この結果、多くの産業で人手不足が常態化しており、従来のやり方では必要な人材を確保すること自体が困難になってきています。こうした状況下で企業が成長を続けるためには、限られた人材リソースをいかに有効活用するかが重要な問題となります。

新規採用の強化だけでなく、現在在籍している従業員一人ひとりの生産性を向上し、その能力を最大限に引き出すことが不可欠です。また、優秀な人材に長く活躍してもらうための「リテンション(定着)施策」の重要性も高まっています。戦略的な人材マネジメントを通じて、従業員が働きがいを感じ、成長できる環境を整備することが、人材の確保と定着の両面で重要な鍵となっているのです。

働き方改革の推進

政府主導で進められてきた「働き方改革」も、人材マネジメントが注目される大きな要因です。長時間労働の是正や同一労働同一賃金、柔軟な働き方の推進(テレワーク、フレックスタイムなど)により、従業員の働き方や価値観は多様化しました。この結果、かつてのような画一的な管理手法は通用しなくなり、企業は従業員一人ひとりのライフスタイルやキャリアプランに寄り添った、個別最適化された対応が求められています。

たとえば、テレワーク環境下では、従業員の業務プロセスが見えにくくなるため、成果にもとづいた公正な評価制度の構築や、従業員エンゲージメント(企業への愛着や貢献意欲)を維持・向上させるためのコミュニケーション施策が重要となります。多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できるような、柔軟かつ公平なマネジメント体制の構築が急務となっています。

競争優位性の確保

ビジネスのグローバル化やデジタル技術の急速な進展により、市場の不確実性は高まり、企業間競争は激化しています。このような時代において、企業が持続的に成長し、競争優位性を確保するための源泉は、他社が模倣できない「人材」そのものにあるという考え方が主流となっています。これは、いわゆる「人的資本経営」の考え方であり、人材を単なるコストや労働力としてではなく、投資対象の「資本」として捉え、その価値を最大限に高めることで企業価値の向上につなげようとするものです。

優れた技術やビジネスモデルも、それを生み出し、運用するのは「人」です。従業員のスキル、知識、創造性を体系的に育成し、イノベーションを生み出せる組織風土を醸成することこそが、現代の経営戦略において重要です。

人材マネジメントを行う手順

人材マネジメントは、経営戦略と連動させ、体系的に進めることが重要です。ここでは、人材マネジメントを導入・実践するための基本的な手順を解説します。

組織の目標・課題の明確化

最初に行うべきは、自社の経営戦略やビジョンを再確認し、それにもとづいた「組織の目標」を明確にすることです。売上拡大、新規事業の創出、グローバル展開など、企業がめざす方向性によって、必要とされる人材の質や量は大きく異なります。

次に、その目標達成の観点から、現状の「人材面での課題」を洗い出します。たとえば、「次世代のリーダーが育っていない」「特定の部門で専門スキルを持つ人材が不足している」「従業員のモチベーションが低下傾向にある」といった課題が挙げられます。この段階では、従業員のスキル、経験、年齢構成、離職率といったデータを客観的に分析し、現状を正確に可視化することが不可欠です。

計画の立案

現状の課題が明確になったら、そのギャップを埋めるための具体的な「人材マネジメント計画」を立案します。人材マネジメント計画には、先に述べた人材マネジメントの構成要素(採用・育成・配置・評価・報酬)が網羅的に含まれる必要があります。

たとえば、「次世代リーダーの不足」が課題であれば、「リーダー候補の早期選抜プログラムの導入」や「マネジメント研修の体系化」といった育成計画が考えられます。「専門人材の不足」であれば、「中途採用の強化」や「リスキリング(学び直し)の推進」、「スキルに応じた報酬体系の見直し」などが施策となるでしょう。これらの施策が組織の目標達成にどのように貢献するのか、論理的に関連付けることが重要です。

実行・改善

計画を立案したら、それを実行に移します。ただし、計画を実行して終わりではないのが人材マネジメントの難しいところであり、同時に重要な点でもあります。施策を実行した結果、どのような変化が起きたのか、当初の課題は解決に向かっているのかを定期的に評価・検証する必要があります。

たとえば、研修を実施したら、受講者の理解度や行動変容を測定します。新しい評価制度を導入したら、従業員の納得度やモチベーションの変化をアンケートなどで確認します。想定する成果が出ていなければ、その原因を分析し、計画や施策そのものを見直します。このPDCAサイクルを継続的に回し続けることが、人材マネジメントを組織に根付かせ、その実効性を高める鍵となります。

人材マネジメントを行うポイント

人材マネジメントを導入し、組織に根付かせるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらを意識することで、施策の実効性を高めることができるでしょう。

企業方針に合わせた人材マネジメントを行う

最も重要なのは、人材マネジメントを企業の経営戦略や理念、ビジョンと密接に連携させることです。経営層がどのような組織をめざしているのか、そのためにどのような人材が必要なのかという「企業方針」が土台となります。

たとえば、「イノベーションを重視する」という方針であれば、画一的な評価よりも、チャレンジを奨励し、失敗から学ぶプロセスを評価する制度が適しているかもしれません。逆に、「安定した品質とサービス」を強みとする企業であれば、ミスのない確実な業務遂行や、顧客志向を評価する仕組みが重要となります。

このように、自社が大切にする価値観やめざす方向性と、人材の採用・育成・評価の仕組みが一貫していることが、従業員の納得感と組織の一体感を醸成する上では不可欠です。

人材マネジメントの内容を周知する

どれほど優れた制度や仕組みを構築しても、それが従業員に理解されていなければ機能しません。人事部門や経営層が「何のために」これらの施策を行うのか、その目的や背景、具体的な内容(評価基準や報酬体系など)を、従業員に対して丁寧に説明し、周知徹底することが極めて重要です。透明性が欠如していると、「経営層が何を考えているのか分からない」「評価が不公平だ」といった不信感や憶測を招き、かえって従業員のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。定期的な説明会の開催、社内ポータルでの情報発信、管理職を通じた意図の伝達など、あらゆる手段を講じて、制度の透明性を確保し、従業員の理解と納得を得る努力が必要です。

個人目標は従業員自身が設定する

人材マネジメントの目的は、従業員のパフォーマンスとモチベーションを最大化することにあります。そのために有効なのが、従業員自身が「個人目標」を設定することです。

もちろん、目標は組織の目標と連動している必要があります。しかし、会社や上司から一方的に「やらされ感」のある目標を押し付けられるのではなく、組織の目標達成に貢献するために「自分は何ができるか、何をすべきか」を従業員が自ら考え、上司と対話しながら主体的に目標を定めるプロセスが重要なのです。自分で設定した目標には当事者意識が生まれ、達成に向けたモチベーションや従業員エンゲージメントの向上につながります。管理職は、部下の成長を促すような、かつ達成可能な目標を設定できるよう、サポートする役割を担います。

まとめ

人材マネジメントは、人材不足や働き方の多様化といった現代の経営課題に対応し、企業の持続的な成長を実現するための根幹的な取組みです。成功のためには、経営方針との一貫性を保ち、制度内容を従業員にしっかり周知し、従業員自身の主体的な目標設定を促すことが鍵となります。本記事で解説した基本とポイントを参考に、ぜひ自社に最適化された人材マネジメントの構築と実践に取組んでいただきたいと思います。

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