人材育成マネジメントとは?進め方やポイントを解説

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企業の持続的な成長において、従業員の能力を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを高める「人材育成マネジメント」は非常に重要なものです。多くの企業で育成の仕組み化や効果測定が課題となる中、効果的なマネジメント手法の確立が急務となっており、適切な進め方や必要なスキルを理解し、実践することが求められています。この記事では、人材育成マネジメントの基本的な考え方から、具体的な進め方、成功のポイントまでをわかりやすく解説いたします。

人材育成マネジメントとは

人材育成マネジメントとは、企業の経営目標や事業戦略を達成するために、従業員一人ひとりのスキル、知識、経験を計画的に育成し、そのプロセスやリソースをマネジメントする一連の活動のことです。ただ研修を実施するだけでなく、従業員が持つ潜在能力を引き出し、組織全体のパフォーマンスを最大化することをめざす、戦略的な取組みをさします。人材育成マネジメントは、変化の激しい現代のビジネス環境において、企業の持続的な成長を支えるための根幹を成します。

マネジメント・人材マネジメントとの違い

「人材育成マネジメント」は、類似するマネジメント・人材マネジメントといった用語と区別して理解することが重要です。「マネジメント」とは、一般的に「経営管理」や「組織運営」と訳され、企業などの組織が設定した目標を達成するために、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を効率的に活用し、管理する活動全般をさします。また「人材マネジメント(人的資源管理:HRM)」は、マネジメントの中でも特に「ヒト(人材)」に焦点を当てた領域です。採用、配置、評価、報酬、労務管理、そして育成など、従業員に関わるあらゆる管理業務を含みます。

これに対し「人材育成マネジメント」は、人材マネジメントの広範な領域の中でも、特に「育成」の側面に特化した概念です。従業員の能力開発を、いかに計画・実行し、評価・改善していくかを管理するプロセスです。人事戦略の中核的な機能の一つといえるでしょう。

人材育成マネジメントが重要な理由

なぜ今、多くの企業において、「人材育成マネジメント」の重要性が高まっているのでしょうか。その背景には、日本企業が共通して直面している、避けて通れない3つの大きな環境変化が存在します。

労働人口の減少と採用競争の激化

第一に、労働人口の減少と採用競争の激化です。少子高齢化の影響により、国内の生産年齢人口は減少傾向にあります。その結果、多くの業種で人材不足が深刻化し、優秀な人材を確保するための採用競争が激しさを増しています。企業にとって、必要な人材を「採用」だけで充足し続けることは容易ではありません。このため、すでに在籍している従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性を向上させる「内部育成」の戦略的重要性が急速に高まっているのです。

ビジネス環境の急速な変化

第二に、ビジネス環境の急速な変化です。DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展、グローバル化、市場ニーズの多様化など、企業を取巻く環境は「VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)」と呼ばれる予測困難な状況にあります。昨日までの成功体験や過去のスキルセットが、今日には通用しなくなるケースも少なくありません。企業がこの激しい変化に適応し、持続的に成長していくためには、従業員が常に新しい知識やスキルを学び直す(リスキリング)ことのできる、計画的な育成マネジメント体制が不可欠なのです。

従業員の価値観の多様化・人材の流動化

第三に、従業員の価値観の多様化と人材の流動化です。終身雇用が前提ではなくなり、働き方やキャリアに対する価値観は大きく多様化しました。現代の従業員は、給与や待遇といった金銭的な報酬だけでなく、「その会社で自分が成長できるか」「キャリアアップにつながる経験を得ることができるか」を重視する傾向にあります。企業が体系的な育成の機会を提供し、従業員の成長を支援する姿勢を明確にすることは、仕事への意欲や組織への愛着を高めます。その結果、優秀な人材の離職を防ぎ、定着率を向上させる効果も期待できます。

これらの課題に対応し、企業の競争力を維持・強化するためには、その場限りな研修の実施ではなく、経営戦略と連動した「人材育成マネジメント」が強く求められています。

人材育成マネジメントの進め方

人材育成マネジメントは、その場限りな施策の繰り返しではなく、戦略的かつ体系的に進める必要があります。一般的に「現状の課題把握」「目的の明確化」「計画の立案」「実行・振り返り」という4つのステップで構成されます。この一連のサイクルを継続的に回していくことが、実効性のある人材育成を実現する鍵となります。

現状の課題の把握

最初に取組むべきは、自社の「あるべき姿」と「現状」との間に存在するギャップを正確に把握することです。まず、経営戦略や事業戦略を実現するために、組織として「どのようなスキル、知識、マインドセットを持った人材が、どの部署に、何人必要なのか」という理想像(あるべき姿)を定義しましょう。

次に、従業員へのスキルサーベイの実施、人事評価データの分析、管理職や従業員本人へのヒアリング、エンゲージメントサーベイの結果などを通じて、「現状」の人材構成やスキルレベル、育成に関する課題を可視化します。こうして「現場ではどのようなスキルが不足しているのか」「現行の育成制度は機能しているか」「従業員は自身のキャリアや成長にどのような課題を感じているか」といった点を具体的に洗い出します。

人材育成の目的の明確化

現状の課題が明らかになったら、次はその課題を解決するために「何のために人材育成を行うのか」という目的を明確に設定します。この「目的」は、必ず前段で確認した経営戦略や事業戦略と連動させることが重要です。たとえば、「次世代リーダー候補の不足」が課題であれば、「経営戦略を理解し、新規事業を牽引できる管理職候補を3年後までに10名育成する」といった具合です。あるいは「DX推進の遅れ」が課題であれば、「全社のデジタルリテラシーの底上げと、DX推進部門における専門人材の確保」といった目的も考えられます。「目的」が曖昧なままでは、後の計画が的外れなものになり、経営層や現場の共感も得られません。

計画の立案

「目的」が明確になったら、それを達成するために具体的な「人材育成計画」に落とし込みます。人事部門は、育成対象者や手法、スケジュールなどを具体的に設計します。

  • 対象者…階層別(新入社員、中堅社員、管理職など)、職種別(営業、開発、企画など)、あるいは選抜型か全社一律かなどを定めます。
  • 育成ゴール…対象者に「いつまでに」「どのような状態になって欲しいか」を、習得すべきスキルや知識、行動レベルで具体的に定義します。
  • 育成手法…ゴール達成に最適な手法(OJT、Off-JT、eラーニングなど)を選定し、組み合わせます。
  • スケジュール…育成プログラムをいつ実施し、どのくらいの期間で行うか、具体的なタイムラインを策定します。
  • 評価方法…育成の成果をどのように測定・評価するか(例:理解度テスト、行動変容の観察、業績への貢献度など)を、あらかじめ計画に組み込んでおきます。

計画の実行・振り返り

立案した計画に基づき、育成施策(研修の実施、OJTの運用など)を実行に移します。ここで最も重要なのは、「実行して終わり」にしないことです。施策の実施後には必ず「振り返り(評価)」を行いましょう。

■振り返り(評価)の項目例

  • 計画どおりに実施できたか?
  • 受講者の理解度や満足度はどうだったか?
  • 研修で学んだことが、実際の業務で活かされているか(行動変容があったか)?
  • 最終的に、設定した目的(業績への貢献など)にどの程度寄与したか?

この振り返りの結果を踏まえ、計画や施策内容の改善点を洗い出し、次のサイクルの「現状把握」や「計画立案」に活かしていきます。

人材育成マネジメントを行うポイント

単に研修制度を導入するだけでは、従業員のスキルアップや行動変容にはつながりにくいものです。人材育成マネジメントを形式的なものに終わらせず、組織の成果に結びつけるためには、いくつかの重要な視点が存在します。

ここでは、人事部門が押さえておくべき、特に重要な4つのポイントについて解説します。

取組みの目標の設定

人材育成マネジメントを成功させる上で、最も重要と言っても過言ではないのが「目標の具体化」です。前述した「人材育成の目的」 が全社的な方向性を示すものであるのに対し、「目標」は、その目的を達成するために「いつまでに」「誰が」「どのような状態になるか」を具体的に定義したものです。人事部門、特に中堅以上の企業においては、「育成施策の効果が測定しにくい」「経営層にROI(投資対効果)を説明しづらい」という課題が多く聞かれます。この課題を解決する鍵が、測定可能な目標設定にあるのです。

たとえば、目的が「営業部門の提案力強化」である場合、目標は以下のように具体的に設定しましょう。

  • 「営業力強化研修の受講者が、3か月以内に学習したフレームワークを実務の提案書で80%以上活用する(行動変容)」
  • 「研修実施後6か月の、対象部門における新規顧客の平均受注単価を5%向上させる(業績貢献)」
  • 「対象者のエンゲージメントスコアにおける『成長実感』の項目を10ポイント改善する(意識変容)」

このように、数値や行動レベルで明確な目標を設定することで、施策実施後の評価(効果測定)が可能になります。その結果、施策のどこに改善点があるのかを客観的に把握でき、次の育成計画の精度を高めていくことができるでしょう。

企業方針との連動

次に重要なポイントは、人材育成マネジメントを「経営戦略」や「企業理念(ミッション・ビジョン・バリュー)」と連動させることです。人材育成は、それ自体が目的ではなく、あくまで企業がめざす方向性を実現するための「手段」だからです。

もし経営層が「DXを推進して新規事業を創出できる人材」を求めているにもかかわらず、人事部門が従来型の「既存業務の効率化」に主眼を置いた研修ばかりを実施していては、両者の間に大きなズレが生じます。企業方針と育成方針が連動していない場合、育成にコストや時間をかけても経営成果に結びつかず、現場の従業員も「会社はどちらを向いているのか」と混乱を招きかねません。

人事部門は、常に自社の経営戦略や中期経営計画を深く理解し、「その戦略を実現するためには、どのような人材が、いつまでに、何人必要なのか」という視点から、育成体系全体を設計・見直し続ける必要があるでしょう。

各部門・従業員へ目標の共有

設定した育成の目的や目標は、人事部門の中だけで留めていては意味がありません。 必ず、関連する各部門の管理職、そして育成の対象となる従業員本人にまで共有し、浸透させることが不可欠です。なぜなら、育成施策の多く(OJTなど)は現場(各部門)で実行されるためです。現場の管理職が「なぜ、今この育成が必要なのか」を理解・納得していなければ、施策への協力は得られません。「忙しい業務の合間を縫って、なぜ研修を受けさせなければならないのか」という抵抗感が先に立ってしまうでしょう。

また、従業員本人にとっても、会社が自分に何を期待しているのか、この研修を受けることでどのような成長が望めるのかが明確になることで、「やらされ感」が払拭され、主体的に学習に取組む動機づけとなります。説明会の実施、管理職への事前ブリーフィング、イントラネットでの丁寧な情報発信などを通じて、育成方針を全社的な共通認識としていく地道な努力を行いましょう。

上司・部下のコミュニケーション

人材育成の成否は、人事部門の施策設計だけでなく、現場における「上司と部下の日常的なコミュニケーション」に大きく左右されます。特に、部下のキャリア志向の理解、強みや弱みの把握、タイムリーなフィードバックといった活動は、管理職の重要な役割です。

多くの企業で導入されている1on1ミーティングなども、進捗確認の場にとどまらせることなく、部下の成長支援やキャリア相談の場として機能させることが重要です。上司が部下の考えを傾聴し、適切なコーチングやフィードバックを行うことで、信頼関係が構築され、育成効果が高まります。

しかし、管理職自身もプレイングマネージャーとして多忙であったり、部下育成のスキル(コーチング、フィードバックなど)が十分でなったりするケースも少なくありません。人事部門としては、現場任せにするのではなく、管理職向けの1on1研修やコーチング研修を実施するなど、現場のコミュニケーションの「質」を高めるための支援で積極的に介入することが、人材育成マネジメントを機能させる上で重要です。

人材育成マネジメントに活かせる手法

人材育成マネジメントの計画を立案する際には、具体的な育成手法を選定する必要があります。これらは単独で用いるのではなく、育成の目的や対象者(階層、職種など)に応じて、複数を効果的に組み合わせられるのが一般的です。ここでは、代表的な4つの手法について解説します。

OJT

実際の業務(On-the-Job)を通じて、上司や先輩社員が指導役となり、部下や後輩に対して必要な知識、スキル、業務遂行の心構えなどを計画的に指導・育成する手法です。

OJTのメリット

OJTのメリットは、実務に即した内容を直接学べるため、スキルの定着が早い点です。また、指導側(上司・先輩)のマネジメントスキルや指導力の向上にもつながります。 個別最適化された指導がしやすいのも特長です。

OJTのデメリット

OJTのデメリットは、指導役となる社員のスキルや熱意によって、育成の「質」にバラツキが出やすい点です。また、指導役の業務負担が増加することも課題となります。体系的な知識伝授が難しく、断片的な知識習得となる可能性もあります。

Off-JT

日常の業務から離れた場所(Off-the-Job)で行われる学習形態全般を指し、集合研修、外部セミナーへの参加、ワークショップなどが該当します。

Off-JTのメリット

業務から切り離された環境で学習に集中できるため、専門的な知識やスキルを体系的に習得しやすい点がメリットです。また、他部署の従業員や社外の参加者と交流することで、新たな視点や気づきを得る機会にもなります。

Off-JTのデメリット

研修の実施にはコスト(参加費用、会場費、講師料など)や時間が必要です。また、研修で学んだ内容が実務に活かされず、「やりっぱなし」に終わってしまうリスクがあります。

SD(Skill Development)

SD(Self Development)は「自己啓発」と訳され、従業員が自らの意思に基づいて、業務に関連する知識やスキルを自主的に学習することを指します。人事部門としては、従業員の自発的な学びを後押しする環境整備が求められます。具体的には、書籍購入費用の補助、資格取得支援制度、外部講座やeラーニング受講料の補助などが挙げられます。

SD(Skill Development)のメリット

SD(Skill Development)は、従業員自身の学習意欲や成長意欲(主体性)を引き出すことができます。変化の激しい時代において、組織が提供する研修だけではカバーしきれない領域を補完する役割も持ちます。

SD(Skill Development)のデメリット

あくまで個人の自主性に依存するため、会社として全社的に特定のスキルを底上げしたい場合には限界があります。

eラーニング

eラーニングは、PCやスマートフォン、タブレットなどのデジタルデバイスとインターネットを活用して学習する形態です。Off-JTの一種として位置づけられることもありますが、その利便性から近年、急速に普及しています。

eラーニングのメリット

eラーニングのメリットは、受講者が時間や場所の制約を受けずに、自分の都合のよいタイミングで学習を進められる点です。また、理解度に応じて同じ単元を繰り返し学習(反復学習)することも容易です。企業側(人事部門)にとっては、多数の従業員の学習進捗や履歴を一元管理しやすいというメリットがあります。

eラーニングのデメリット

一方、対面研修とは異なり、実技の習得や受講者同士のディスカッションには不向きな場合があります。また、受講者のモチベーション維持が難しく、学習が継続しないケースも見られます。

まとめ

人材育成マネジメントは、労働人口の減少やビジネス環境の急速な変化に対応し、企業が持続的に成長するために不可欠な戦略的取組みといえます。成功の鍵は、経営戦略と連動した明確な「目的」を設定し、「現状把握」「計画立案」「実行・振り返り」というPDCAサイクルを確実に回すことにあります。OJTやOff-JT、eラーニングといった多様な手法を効果的に組み合わせ、従業員の能力を最大限に引き出す仕組みを構築することが求められます。特に、研修や学習で得た知識を実務で活かし、定着させるための「振り返り」のプロセスは重要です。
たとえば、NTT ExCパートナーが提供する「GrowNavi Reflect(グロウナビ・リフレクト)」は、こうした育成施策との連動により、学びの業務実践を促し、効果的な振り返りをサポートします。

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