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社員が学ばない理由は「意欲」ではなかった ――DX人材育成を全社で進める「学習ロードマップ」設計

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株式会社NTT ExCパートナー ラーニングソリューション事業部  NTTグループ営業部門 営業担当 友野 樹一

IT企業

業界・業種IT系

従業員1001人~

ITソリューションやデジタル技術を活用し、企業のDX推進を支援する企業。社内においても、業務変革やデジタル活用に継続的に取組んでいる。

研修やeラーニングを整備しているにもかかわらず、
「社員のリスキリングが思うように進まない」 
「積極的に学んでもらうためにはどうすればいいのか…」 
そんな悩みを抱える人事・育成担当者は少なくありません。

このとき、多くの企業が「研修の中身」や「社員の意欲」に目を向けがちですが、実は問題の本質は、別のところにあるケースもあります。

本事例では、社員が学ぶ際の「つまずき」に着目して、“社員が学びたいときに学べる仕組み”である「選択型の研修」に“学ぶべきゴールと、そこに至る道筋”を示す「学習ロードマップ」を加えることで社員の自律的な学びを促進した取組みを紹介します。

本プロジェクトを支援したNTT ExCパートナーの友野が、課題の背景から「学習ロードマップ」設計の考え方、成果と変化までを振り返ります。

本事例のポイント

全社員の学習を前進させる“学習ロードマップ”を設計


全社的なDXスキルの強化のため、社員が迷わず段階的にスキルを習得できるよう「次に何を学ぶべきか」が一目でわかる学習ロードマップを設計。学びの順序と到達イメージを明確にし、学習の継続を後押ししました。

IT基礎から学べる“全社員対応”の学習設計


DXスキルは、一定のIT基礎知識を前提とする応用領域です。そこで、DXスキルだけでなく、IT基礎スキルから学べる学習ロードマップもあわせて設計し、社員一人ひとりが自分のレベルに合ったところから段階的に学習を進められる環境を整えました。

1,000以上の研修から必要な学びを厳選-”選ぶ負担”を取り除き、学習効率を最大化


お客さま社内で優先度の高い学習テーマに絞り込んだ上で、1,000以上の研修を精査し、ロードマップに掲載するコースを厳選。社員が迷わず、効率よく学習を進められる状態を整えました。

研修はあるのに、社員が学びはじめられなかった理由

――今回お客さまにはどのような課題があったのでしょうか。

お客さまは事業の持続的な成長を目的として人材育成に力を入れており、なかでも、事業成長には欠かせないものとして、DXスキルの全社的な強化に取組まれていました。
強化すべきDXスキルと、スキルレベルを設定し、めざすべき姿とゴールが明確になっていたほか、受講者がいつでも学習可能な研修コース(公開講座等)を提供するなど、社員の学習環境も整備していました。
しかし、「自分にはどのコースが合うのか」「レベルを上げていくためには、どの順序で受講していけば良いのかわからない」という理由で、社員が研修コースを選べず、学びの一歩目を踏み出せなかったり、学びが断片的になったりするなど、“学ぶ意欲があっても学びが前に進まない”という状況でした。
こうした状況に課題感をもったお客さまから、受講者が迷わず学習を進められるよう、研修コースのラインナップを整理し、「DXスキルを体系的に学べる学習ロードマップを作成して欲しい」というご相談をいただきました。

どんな社員でもDX人材をめざせる道筋を描く

――どのような方針でロードマップの設計・提案をされたのですか。

お客さまがロードマップの設計を希望した“DXスキル“は、AI活用・データ活用・セキュリティの3つの分野でした。これらは一般的に、一定のIT基礎知識を前提とする応用領域に位置づけられます。しかし、お客さま社内には、普段は企画・営業職などに従事しており、IT基礎知識から学ぶ必要がある社員も一定数いました。私たちは、もし“DXスキル”に限って学習ロードマップを作成してしまうと、基礎知識がある一部の社員しか学習を進められず、全社施策としての効果が限定的になることを懸念しました。

お客さまのめざす「DXスキルの全社的な強化」を達成するためには、どのスキルレベルの社員を起点にしても、“DXスキル”を習得できる道筋を描くことが重要だと考えました。
そのため、IT基礎知識から段階的にレベルを引き上げていくことができる学習ロードマップの設計を提案しました。

――「IT基礎知識から学習できるロードマップの作成」という提案の結果、採用されたとのことですが、その理由はなんだったのでしょうか。

ご評価いただいた理由は2つあります。1つ目は、IT基礎から段階的に学べる設計により、幅広いスキルレベルの社員が学習を進められ、DXスキル習得を促進できる点です。2つ目は、お客さまの事業特性上、異動によってSE業務を担う部署に配属されるケースがあるため、本ロードマップは、スタッフ部門からSE系部門へ異動する社員のリスキリング支援としても活用でき、人事施策として有効である点をご評価いただきました。

誰もが迷わず進める“学習ロードマップ”の完成

――最終的にどのようなロードマップを作成されたのでしょうか。

大きく分けて、次の2種類のコースマップを作成しました。

1 IT基礎スキル

DXスキル(AI活用・データ活用・セキュリティ)を学ぶ前提として必要となる、共通のIT基礎スキルを整理し、スキルごとにマップを作成しました。
研修コースをITSSのレベル評価ごとに並べることで、ITの知識にばらつきがある状態でも、どこから学習をはじめればよいのかわかるよう整理しています。さらに、スタッフ部門とエンジニア/SE部門では、必要なスキルが異なります。そこで、それぞれの職種がどの研修から学習をはじめればよいかを整理し、コースマップに反映しました。

  • ITSS(IT Skill Standard)とは、IT人材に求められる実務能力を整理・体系化した指標。経済産業省が策定した後、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が改訂・公開している。

プロジェクトマネジメント

2 DXスキル(AI活用・データ活用・セキュリティ) 

AI活用・データ活用・セキュリティのそれぞれのスキルを細分化し、学習テーマを設定しました。研修の難易度ごとに初級から上級※へと段階的にスキルを高めていける構成としました。(※初級から上級:レベル設定はお客さま社内のスキルレベル設定に基づく)

1、2合わせ、学習テーマごとに整理された合計52テーマの学習ロードマップを完成させました。

1,000以上の研修から「本当に必要な学び」を選び抜く

――今回のロードマップを設計するうえで、特にこだわったポイントを教えてください。

学習テーマの決定:必要なスキルを見極め、優先順位をつける

今回の設計で特にこだわった点は、大きく2つあります。
1つ目は、スキルと学習テーマを決定する工程です。
企業の業種・業態、人材構成、業務環境などに応じて、学ぶべきスキル・学習テーマには濃淡があります。
例えば今回のお客さまは、ネットワーク系サービスに強みを持つ業態で、社員の多くがすでにネットワークに関する知識を有していました。そのため、基礎的な内容の重複を避ける観点から、ネットワーク領域の学習テーマは必要最低限に絞り込みました。また、データベース領域の学習では、複数のRDBMS製品・実施環境が存在しますが、実業務を意識して、適切なRDBMSに限定して、学習テーマを選定しました。
一方、プロジェクトマネジメントの学習は、PMBOKの知識領域であるスコープ・スケジュール・コストなど複数の観点に分解できますが、どれか一つが欠けてもプロジェクト全体の品質や成果に影響を及ぼします。そのため、学習テーマは絞り込まず、基礎から体系的に学べるよう網羅的に整理しました。
このように「この組織にとって、今本当に必要なスキル・学び」に絞り込むことで、効率よく学習を進められる土台を整えました。

研修の選定:受講者のつまずきを想定し、最適な研修に絞り込む

2つ目は、「どの研修を選ぶか」を判断する部分です。
学習テーマの決定後、テーマごとに研修を並べるロードマップ作りに取り掛かりました。お客さまは1,000以上の研修コースをお持ちでしたが、それをそのままロードマップに落とし込んでしまうと、結局また「どれを受ければいいのかわからない」状態に戻ってしまう可能性があります。そのため、同じ学習テーマの研修コースがある場合は、ロードマップでの位置づけや受講者のつまずきやすさを踏まえて、どのコースが最適かを一つひとつ見極め、本当に必要なコースだけを残すことにしました。例えば、ロードマップの入口に置く入門・初学者向けの研修については、到達目標、概要、カリキュラムを確認し、受講者の視点で、理解しやすい説明順や演習構成になっているかを重点的にチェックし、厳選しました。 さらに、ロードマップは全社員に展開されるため、受講時間や難易度が過度に高くならないコースを選び、無理なく知識を修得可能なコースを優先的に厳選しました。

学習ロードマップは、学習テーマの設定や研修コースの選定・構成を誤ると、かえって学習を複雑にし、難しくしてしまうこともあります。だからこそ今回の設計では、学習テーマの決定から研修コースの選定まで、お客さまと何度も議論を重ねながら、ていねいに整理していきました。

社員自ら「最初の一歩」「次の一歩」を選び進められる状態へ

――今回の取組みによる効果と、今後の展望を教えてください。

ロードマップ公開後、IT基礎スキル・DXスキルに関する研修の1年間の受講件数は、公開前と比較して約2.5倍となりました。

この結果は、社員にとって学びはじめるまでのハードルが明らかに下がったことを示していると考えています。これまでは、数多くの研修が用意されているものの「どの研修からはじめればよいかわからない」「どのように学習を進めていけばよいかわからない」といった理由から、学習の最初の一歩で立ち止まってしまうケースが少なくありませんでした。今回の取組みで、「まずはここから」「次はこれ」と学びの道筋を明確に示したことで、社員が自分自身で次の行動を判断しやすい状態をつくることができました。

今後も、受講状況や学習の進み方を継続的に観察し、ロードマップのアップデートを重ねていくことで、社員の自律的な成長を一層促進できるよう、ご支援していきたいと考えています。

また、今後の展望として、学習ロードマップを起点に、受講状況や学習の進捗を把握することで、社員一人ひとりのスキルレベルや成長の過程を可視化できないか検討を進めています。こうしたデータを活用することで、学習の成果を次の育成施策や研修設計につなげていく、循環型の人材育成にも発展させていきたいと考えています。

  • 文中に記載の企業名・組織名・所属・肩書き・取材内容などは、全て2025年12月時点(インタビュー時点)のものです。

VOICE

株式会社NTT ExCパートナー
ラーニングソリューション事業部 NTTグループ営業部門 営業担当 友野 樹一

DX人材育成に取組むなかで、「研修は用意したが、社員が動かない」「どこから手をつけるべきかわからない」と感じる場面は少なくありません。社員が迷わず次の一歩を選べること。学びたいと思った瞬間に、すぐ行動に移せること。その環境を整えることが、自律的なリスキリングを動かす第一歩になります。本事例が、自社のDX人材育成を見直すヒントとなれば幸いです。

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