アセスメント研修とは?手法や導入のポイントを解説

  • 人材育成の基礎知識
  • 社内トレーニング

近年、企業を取巻く環境の変化が加速する中で、人的資本経営の重要性が高まっています。
組織の成長を支えるためには、従業員一人ひとりの能力や適性を正確に把握し、個々の特性に合わせた人材育成を戦略的に行うことが不可欠です。
しかし、従来の評価方法や研修だけでは、従業員の潜在能力や客観的な強み・弱みを十分に引き出し、育成につなげることが難しいという課題を抱えている人事担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。 
そこで注目されているのが、社員の能力や適性を客観的かつ多角的に評価するための手法であるアセスメント研修です。

この記事では、人事部門の皆さまが知っておきたいアセスメント研修の基本的な定義や目的、具体的な手法、そして導入・実施を成功させる重要なポイントまでを詳しくご紹介いたします。
アセスメント研修を通じて得られたデータは、単なる評価にとどまらず、適切な人材配置や効果的な能力開発プランの策定に役立ちます。

  • 資料「人事異動をスムーズに行うコツ 成功のポイントと注意点、避けるべきパターンを解説」のキャプチャー画像

    さまざまな調整が必要になる人事異動。本資料では、スムーズな人事異動に向け知っておきたい基礎知識から、成功のポイント、よくあるFAQなど幅広くご紹介します。

  • タレントマネジメントシステム「カオナビ」×人材育成ソリューションのサムネ画像

    在籍社員のスキル情報等を一元化・可視化することで、現場に眠る人財発掘、スキルギャップを埋める人材育成、最適配置を実現。 NTTExCパートナーでは、カオナビに蓄積された人材データに基づき、人材育成体系を策定し、各種人材育成ソリューションまでワンストップでご提供いたします。

アセスメント研修とは

アセスメント(Assessment)とは、直訳すると「評価」「査定」を意味します。
人事施策における「人材アセスメント」とは、昇進・昇格候補者や次世代リーダー候補者などの対象者の潜在能力や適性を、テストやシミュレーションを通じて第三者が公平に評価するプロセスをさします。

これを踏まえると、「アセスメント研修」とは、これら評価プロセスと、その結果を活用したフィードバックや育成計画の策定までを含む、より広範な研修をさします。

従業員一人ひとりの能力、適性、行動特性などを、客観的かつ多角的な視点で評価・測定し、その結果を人材育成や配置に活用するために実施する研修です。

アセスメント研修の目的と一般的な研修との違い

一般的な研修が、特定の知識やスキルの習得を主目的とするのに対し、アセスメント研修の主な目的は、受講者の「強み・弱み・潜在能力」を「客観的に評価・測定した結果」を活かすことにあります。

アセスメント研修を通じて、企業側が「適材適所の人員配置」や「次世代リーダーの発掘」、受講者側は「自己の成長課題の明確化」を実現することが狙いです。

特に、管理職や次世代リーダーを対象として実施されることが多く、マネジメントスキルや課題解決能力の向上に向けた動機づけとしても使用されます。

アセスメント研修のメリット

アセスメント研修を導入することで、企業側と従業員側の双方に次のようなメリットがもたらされます。

適切な昇進・昇格、配置

アセスメント研修の最大の特長の一つは、客観的かつ公平な評価が可能になる点です。

従来の評価制度では、直属の上司による主観や、過去の売上実績などの限定的な情報のみにもとづいて、昇進や配置が決定されることが少なくありませんでした。
しかし、これでは従業員の潜在能力や、現在の職務では発揮されていない隠れた適性を見落としてしまう可能性があります。

一方、アセスメント研修では、外部の専門家であるアセッサーが、ロールプレイングやコンピテンシー面談といったシミュレーションを通じて、受講者の行動特性や意思決定プロセスを多角的に観察し評価します。
こうすることで、「昇進後のポジションで求められる能力」や「特定の部署で必要とされる資質」について、客観的なデータにもとづいた判断が可能となります。

特に、管理職や次世代リーダーの選抜においては、現在のパフォーマンスだけでなく、将来的な環境変化への適応力や、部下を導くマネジメントスキルといった潜在的なリーダーシップを見極めることが重要です。

アセスメントの結果では、これらの資質を明確に可視化されるため、適材適所の実現と、人事評価に対する公平性・透明性の向上に貢献します。
評価の信頼性が高まることで、従業員が決定に納得しやすくなる効果も期待できます。

  • 資料「人事異動をスムーズに行うコツ 成功のポイントと注意点、避けるべきパターンを解説」のサムネ画像

    人事異動をスムーズに行うコツとは?

    • 人事異動を進める際のポイント
    • 避けるべき人事異動のパターン

    など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。

人材採用・育成の最適化

アセスメント研修の結果として、従業員個々の詳細なデータを得ることができます。
これを、人材育成プログラムの最適化に活用できます。

従業員一人ひとりの強みのほか、特に克服すべき弱みや能力のギャップを定量的に把握できるため、漠然と集合研修を実施するのではなく、個人や部門の課題にピンポイントで対応した研修計画を策定することが可能になります。

この結果、研修コストを削減しつつ、教育効果を最大化できる効率的な人材投資が実現します。

具体的には、次のような改善が行えます。

  • スキル・知識面の不足…適性検査や能力検査の結果から、業務遂行に必要な専門知識や論理的思考力の不足を特定し、その補強に特化した研修を実施します。
  • 行動特性の課題…インバスケット演習などのシミュレーションの結果から、コミュニケーションや意思決定のプロセスにおける課題を発見し、行動変容を促す研修を設計します。

このように、アセスメントの結果を起点とした「診断→育成」のサイクルを回すことで、組織全体の能力底上げにつながり、結果として企業の競争優位性の強化に結びつきます。

また、このデータは採用活動にも活かせます。
自社が求めるコンピテンシー(高い成果を生み出す行動特性)をアセスメントで定義し、それを採用選考時の基準とすることで、入社後のミスマッチを防ぎ、組織文化への適合性の高い人材を採用する精度を向上することができます。

従業員のモチベーション向上

アセスメント研修は、企業側だけでなく、従業員個人にも大きなメリットをもたらします。

従業員が研修を通じて自身の客観的な能力や行動特性について深く理解できれば、自己肯定感が高まり、同時に具体的な成長課題を明確に把握できます。
特に、普段の業務では見過ごされがちな潜在的な強みが見つかった場合、従業員は自己の可能性を再認識し、職務に対する意欲を格段に向上させることができるでしょう。

アセスメント研修の評価結果は、単に「優劣をつける」ためのものではなく、「今後の成長への具体的なヒント」として本人にフィードバックされます。
このため、従業員は「自分は会社から期待されている」という感覚を得ることができ、これが企業へのエンゲージメントやロイヤルティ(忠誠心)の向上につながります。

また、アセスメントの結果にもとづいて「このスキルを伸ばせば、将来的にこういうキャリアが開ける」という明確なキャリアパスが示されるため、従業員は日々の業務に目的意識を持ちやすくなります。

このように企業が自律的なキャリア形成を支援する姿勢を見せることで、人材の流動が激しい現代において、優秀な人材の離職率低下にもつながります。

アセスメント研修で用いる主な評価手法

アセスメント研修では、受講者のさまざまな能力や特性を多角的に測るために、複数の評価手法を組み合わせて実施します。

主な評価手法をご紹介します。

適性検査・能力検査

適性検査とは、受講者のパーソナリティ、価値観、行動特性、職務適性、ストレス耐性などを測る検査のことです。
思考の深層にある資質や志向性などを評価する手法として用いられます。

能力検査とは、社会人に求められる知的能力、作業能力、知識量、論理的思考力などを測る検査のことです。
計算能力や複雑な状況で問題を発見し解決する能力などを測定します。

これらの検査結果はグラフなどで可視化します。
従業員が自己の強みと弱みを客観的に把握する上で役立ちます。

360度評価

360度評価とは、被評価者(対象者)を上司、同僚、部下、そして自己評価といった複数の立場の人間が多角的に評価する手法で、多面評価とも呼ばれます。

特定の視点に偏らず、より客観的かつ公平な評価が可能となるのが最大の特長です。
特に、日常的な行動特性やコミュニケーション能力など、上司の視点だけでは見えにくい側面の把握に有効で、評価の信頼性・妥当性を高めることにつながります。

ロールプレイング

実際の業務で発生し得る場面(例:部下との面談、顧客との折衝など)を想定し、受講者が役割を演じる手法です。

コミュニケーション能力、傾聴力、指導力など、対人スキルや行動特性を評価するために用います。

コンピテンシー面談

コンピテンシー(competency)とは、高い業績や成果に結びつく行動特性のことです。

コンピテンシー面談では、対象者が過去に直面した具体的な状況や、その時に「どのような行動を取り」「なぜその行動を選んだのか」を深く掘り下げて聞くことで、その人の思考パターンや行動原則を把握します。

組織で求められる行動を設問として設計することが多く、将来的な成功を予測する上で重要な手法とされています。

アセスメント研修を導入する際のポイント

アセスメント研修を単なる「評価」に終わらせず、「成長」につなげるためには、導入時と実施後のプロセスが特に重要です。

アセスメント研修を導入する際のポイントは、次のとおりです。

研修目的の明確化

まず、アセスメント研修を実施する前に、「何のためにこの研修を行うのか」という目的を明確化し、受講者全員に事前に周知することが大切です。

目的が「評価」なのか「育成」なのか、あるいは「次世代リーダーの発掘」なのかによって、受講者の研修に取組むスタンスや意欲は、大きく変わってきます。
受講者に「自身の成長のきっかけを得る場」であることを理解してもらうことで、前向きな姿勢を引き出せるでしょう。

目的に合った測定基準と研修内容の選択

目的に応じて、どの能力・特性を、どの手法で測定するかを慎重に選択する必要があります。

たとえば、管理職候補であればマネジメント能力を重点的に測るシミュレーションを、若手社員のキャリア開発が目的であれば、パーソナリティや職務適性を測る検査を組み合わせるなど、目的に合わせたカスタマイズが成功の鍵を握ります。

受講者への事前周知と動機付け

受講者に対して、評価基準や評価の活用方法を事前に丁寧に説明し、不安を取除くことが大切です。

また、研修を受けることで自身が「どのようなスキルを身につけ、どのような成長が期待できるのか」という具体的なめざす姿を提示することで、モチベーションを高めることができます。

受講前に自身の組織や個人の課題を洗い出しておくよう促すことも、研修の成果を最大化するためには、有効です。

研修後の振り返りとスキル向上機会の提供

アセスメント研修は、「評価して終わり」にしてしまうと効果が半減してしまいます。
最も成長意欲が高まっているとされるフィードバック後のタイミングで、必ずスキル向上の機会を提供する事後フォローが重要です。

次の2点を実施しましょう。

  • 振り返りの機会の提供…定期的に研修内容を振り返り、実際の業務で活かせたかをチェックする機会を設けることで、内容の定着化につながります。
  • 具体的な行動計画への接続…結果を「行動変容」につなげるため、改善点に着目しすぎず、強みをベースにしたキャリアの方向性や、今後の具体的な自己啓発計画を立てる機会を提供しましょう。

上司がメンバーの行動変化を評価する仕組みを導入することで、受講者側に継続的な業務への活用意識が生まれるでしょう。

まとめ

アセスメント研修は、社員の能力や適性を客観的かつ多角的に評価し、適材適所の実現や効率的な人材育成に繋げる上で極めて有効な手法です。

導入・実施を成功させるためには、研修目的の明確化、適切な評価手法の選択、そして何よりも研修後のフィードバックとフォローアップによる継続的な成長サイクルを確立することが重要です。

人事部門の皆さまにとって、アセスメント研修は人的資本経営を実践し、組織全体のパフォーマンスを向上させるための重要な戦略的ツールとなります。
単なる評価で終わらせず、貴社の人材が最大限の能力を発揮できる組織づくりに、ぜひご活用ください。

「研修後の振り返りとスキル向上機会の提供」でもお伝えしたように、アセスメント研修の真の価値は、その後の行動変容と継続的な成長サイクルを組織に定着させる点にあります。

アセスメントの結果を人材育成の施策に反映させ、PDCAサイクルを回すことが不可欠です。
PDCAサイクルを継続的に回すことで、組織全体の学習文化やフィードバック文化が根付き、競争力の強化が実現します。

NTT ExCパートナーが提供する「オーダーメイド研修(企画・運営)」は、まさにこの「やりっぱなしにしない」ためのソリューションです。

お客さまの「人材育成に関する課題」を詳細にヒアリングし、アセスメントで明らかになった個々人の能力課題に応じて、研修プログラムの企画から運営までを一貫してサポートいたします。

画一的な研修ではなく、特定の課題解決に特化した最適なソリューションを提供することで、アセスメント後の具体的な行動変容とスキル向上を強力にサポートいたします。

「アセスメント研修を実施したいが、希望通りの研修メニューがない」
「アセスメント研修を実施したが、上手くフィードバックが行えず、やりっぱなしになってしまう」
「研修実施後のPDCAサイクルまでフォローして欲しい」
といった課題をお持ちの企業さまにおすすめです。

「オーダーメイド研修(企画・運営)」について詳しくは、下記ページをご覧ください。

  • 資料「人事異動をスムーズに行うコツ 成功のポイントと注意点、避けるべきパターンを解説」のサムネ画像

    人事異動をスムーズに行うコツとは?

    • 人事異動を進める際のポイント
    • 避けるべき人事異動のパターン

    など、人事異動を考えるときにおさえたいポイントをまとめています。

>

ExCの強み

  • NTTグループの技術力を活用した
    先端ソリューション

    • NTTグループの研究開発の実績や技術力を基盤にしたソリューションで、一歩先を行く、科学的アプローチを実現

  • 人事・総務の各領域に精通した
    プロフェッショナルが伴走

    • 30年以上にわたりNTTグループの人事・総務を担ってきたHC領域の専門家が伴走

  • 『人と組織を変える施策の実行』と『振り返りでやりっぱなしを防止』の文字を、双方に向かう矢印でサイクルになっていることを表した図。

    施策効果の振り返りまでを
    実施して改善サイクルを実現

    • ExCパートナーのソリューションでは、実行後の振り返りを行い、次の改善活動に向けた示唆出しまでサポートします。

30年以上のご支援で
培われたノウハウで
800社以上の企業での
導入実績