人材育成に研修は必要?種類や進め方まで解説

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人材育成において、研修の果たす役割は非常に大きいものです。
新入社員の即戦力化や中堅社員のスキルアップ、管理職のマネジメント力向上など、研修を効果的に活用することで、組織全体の成長を促進できます。

ただし、自社に最適な研修内容や進め方を設計するには、現状の課題を正確に把握し、目的に合わせた種類と手法を選ぶことが重要です。

この記事では、人材育成のための研修について、種類や設計の進め方、実施時のポイントまで解説いたします。

人材育成に研修は必要?

そもそも、人材育成に研修は必要なのでしょうか?
一方的な講義形式の研修では実践的なスキルが身に付かなかったり、全社員が同じ内容を受講するために個別のニーズに対応できていなかったりなど、研修の効果を疑う方もいらっしゃるかもしれません。 
 

研修の必要性

企業が競争力を維持し、成長を続けるためには、従業員のスキルや知識の向上が不可欠です。
特に、社会や技術の変化が激しい現代では、研修を通じて組織全体の対応力を高めることが求められているといえます。 
 

研修の目的

企業が研修を実施する目的は多岐にわたりますが、主に以下の5つが挙げられます。

即戦力化の促進

新入社員やキャリア採用者が、早期に会社の戦力として活躍できるようにするためです。

例:業界知識の習得、企業文化の理解、基礎スキルの習得。

中堅社員のキャリアアップ

中堅社員のスキルアップや役職者への昇進をサポートするためでもあります。
研修によって、次世代リーダーを育成するための土台作りを行います。

例:プロジェクトマネジメントやプレゼンテーションスキルの習得。

管理職のマネジメント強化

組織全体をまとめる管理職に必要なリーダーシップやマネジメント能力を育成する目的でも研修を実施します。

例:部下の育成方法、意思決定スキル、チームビルディングの習得。

グローバル人材の育成

海外展開や異文化間の協働が求められる場面で活躍できる人材を育成する目的でも研修を実施します。

例:語学スキル、異文化理解、国際業務のプロセスの習得。

変化に対応する力の向上

DX(デジタルトランスフォーメーション)などの新しい取り組みに対応できるスキルやマインドセットを従業員に身につけてもらうことを目的に実施される場合もあります。

例:DXへの理解習得、データ分析スキル、AIツールの活用の習得。

従業員の創造力とイノベーション力の向上

競争の激化する市場環境において、創造性とイノベーションは企業が差別化を図るために不可欠です。そのため、研修では新しい視点を養い、柔軟な発想を引き出すプログラムを取り入れることが目的とされます。

例:デザイン思考やクリティカルシンキングの習得。

人材育成研修のメリット

人材育成研修を導入することで、企業に多くのメリットがもたらされます。
研修を実施することで、従業員個々のスキルや知識を向上させるだけでなく、組織全体の生産性向上や企業競争力の強化にもつながります。

以下で、具体的なメリットをご紹介します。 
 

従業員のスキルと知識の向上

従業員は、研修を通じて業務遂行に必要なスキルや専門知識を身につけることができます。
特に、急速に進化する業界や技術の変化に対応するためには、最新の情報やスキルを学ぶ場として研修が欠かせません。 
 

従業員のキャリア成長とモチベーション向上

研修は、従業員がキャリアを発展させるための基盤を築くための良い機会でもあります。
また、研修で自身の成長を実感できれば、モチベーション向上にもつながります。
従業員は、研修を用意してくれる会社が自分を大切にしていると感じられることで、組織へのロイヤルティも高まります。 
 

業務効率と生産性の向上

研修で得たスキルや知識を実務に活かすことで、業務効率が向上し、結果的に組織全体の生産性も向上します。

特に、現場の問題解決能力を高める研修は、業務改善やコスト削減につながる可能性があります。
 

優秀な人材の確保と定着

研修制度を充実させることで、企業は採用市場での魅力を高めることができます。 さらに、既存の従業員に対しても、成長の場を提供することで、離職率の低下につながります。 
 

組織の競争力向上

市場環境が急速に変化する中、企業が競争力を維持するためには、変化に迅速に対応できる組織体制が必要です。
そこで、研修を通じて、従業員に市場や技術の変化に対応するスキルを習得してもらうことで、企業全体の競争力の向上につながります。 
 

組織文化の形成と価値観の浸透

研修は、企業の価値観やビジョンを従業員に伝えるための手段でもあります。
研修を通して、従業員間で共通の目標や考え方を浸透させることができ、強い組織文化の形成につながります。 
 

従業員間のコミュニケーションとチームワークの強化

研修は、従業員が他部門や異なる役職の同僚と交流し、互いの視点や知識を共有する場としても機能します。

これにより、社内のコミュニケーションが円滑になり、部門間の壁を取り払う効果が期待されます。また、グループワークやディスカッションを取り入れた研修では、チームとして課題解決に取り組む機会が増え、チームワークの向上にもつながります。 

人材育成研修のデメリット

人材育成研修には多くのメリットがありますが、注意点やデメリットも考慮する必要があります。

以下で、研修のデメリットと、その対策について解説します。 
 

コストが高額になりやすい

研修には、講師費用や会場費用、教材費など、さまざまなコストがかかります。
特に、外部講師を招いたり大規模な研修を行ったりする場合、その費用負担は企業にとって大きなものになりやすいです。

対策:

  • オンライン研修の活用で、会場費用や交通費を削減する。
  • 研修の内製化を推進し、社内の専門家を活用して研修を実施することでコストを抑える。
  • 研修費用に関する公的助成金を活用して費用負担を軽減する。

 

研修が業務の負担になる

研修を実施することで、従業員が本来の業務を遂行する時間が減少してしまいます。
また、業務が忙しい時期に研修を行うと、研修と業務のバランスを取るのが難しくなり、研修に集中できない可能性があります。

対策:

  • 研修スケジュールを最適化し、業務の繁忙期を避けて計画的に研修を実施する。
  • 数時間で完結するコンパクトな研修を取り入れる。
  • 業務に支障が出ないよう、代替業務体制を整備する。

 

効果がすぐに見えにくい

研修の効果は、実施直後にすぐ結果として現れるわけではありません。
特に、リーダーシップやコミュニケーションスキルのようなソフトスキルを向上させる研修では、成果が見えるまでに時間がかかる場合があります。

対策:

  • 効果測定の仕組みを導入し、研修前後のパフォーマンスの変化を追跡する。
  • 振り返りの場を設け、研修後に学びを実務にどのように活かしたかを定期的に報告させる。
  • 研修後の具体的なKPIを設定し、進捗を評価する。

 

一律の研修内容が全員に適さない

従業員ごとにスキルやニーズが異なるため、一律の研修内容がすべての参加者に適切であるとは限りません。
このため、一部の従業員にとっては、研修が実りの少ないものになる可能性があります。

対策:

  • 参加者の役職やスキルレベルに応じた研修を設計する。
  • 事前ヒアリングを実施して従業員のニーズを把握し、研修内容に反映させる。
  • 集合研修、オンライン研修、OJTなどを組み合わせ、多様な形式の研修を提供する。

 

従業員の意欲や参加意識が低い場合がある

従業員が研修に対して高いモチベーションを持っていない場合、学びが浅くなり、研修の成果が十分に得られない可能性があります。

たとえば、研修の目的やメリットが従業員に明確に伝わっていない場合は、この問題が顕著になりやすいです。

対策:

  • 研修の目的や期待される効果をあらかじめ伝えておく。
  • 研修への参加や成果に応じて評価や報酬を与える。
  • 強制的な全員参加ではなく、意欲の高い従業員を選抜して実施する。

研修にはどのような種類がある?

企業が従業員のスキル向上やキャリア支援を目的として実施する研修にはさまざまな種類があります。
それぞれの研修形式に特徴があるため、目的や対象者に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。

以下に、代表的な研修の種類と、その特徴をご紹介します。 
 

集合研修

集合研修とは、講師が進行を担当し、複数の従業員が同じ場で学ぶ形式の研修です。
新入社員研修やマネジメント研修など、幅広い目的で実施される一般的な研修方法です。

集合研修での講師には、内部講師と外部講師の2種類があります。

内部講師

内部講師とは、社内の専門知識やスキルを持つ、経験豊富な従業員が講師を務める形式です。
自社独自のノウハウや文化を伝えやすい点が特徴です。

  • 内部講師のメリット…コストが抑えられる。社内事情を反映できる。
  • 内部講師のデメリット…講師のスキルに依存しやすい。

外部講師

専門知識を持つ外部のプロフェッショナルを講師として招く形式です。
最新の業界トレンドや専門的な知識を学ぶのに適しています。

  • 外部講師のメリット…専門性が高い。客観的な視点が得られる。
  • 外部講師のデメリット…コストがかかる。自社向けの内容にカスタマイズできない場合がある。

 

OJT(現場研修)

OJT(On-the-Job Training/現場研修)とは、実際の業務を通じてスキルを習得する方式の研修形式です。
現場の上司や先輩が指導者となり、実務を経験しながら必要な知識やスキルを学びます。

  • OJT(現場研修)の特徴…実務をしながら学ぶため、即戦力を育成しやすい。
  • OJT(現場研修)のメリット…学んだことをすぐに実践できる。現場の課題をリアルタイムで共有可能。
  • OJT(現場研修)のデメリット…指導者のスキルに依存する。体系立てた教育が難しい。

 

Off-JT(実務外研修)

Off-JT(Off-the-Job Training/実務外研修)とは、職場を離れて行う研修のことです。
外部の研修や講座に参加する形式が一般的で、新しいスキルや知識を体系的に学ぶ良い機会となります。

  • Off-JT(実務外研修)の特徴…業務外での集中学習が可能。
  • Off-JT(実務外研修)のメリット…専門的な知識やスキルを習得できる、リフレッシュ効果も期待できる。
  • Off-JT(実務外研修)のデメリット…業務との関連性が薄れる可能性がある。

 

オンライン研修

オンライン研修とは、インターネットを活用してリモートで学習する形式です。
時間や場所を選ばずに参加できる点が魅力です。

  • オンライン研修の特徴…自宅や職場からアクセス可能。コスト削減につながる。
  • オンライン研修のメリット…時間の柔軟性が高い。全国規模での研修が可能。
  • オンライン研修のデメリット…集中力を保ちにくい。双方向性に欠ける場合がある。

 

eラーニング

eラーニングとは、専用の学習システムを活用して個人で進める学習形式のことです。
事前に録画された講義や教材を使用するため、従業員が自分のペースで学ぶことができます。

  • eラーニングの特徴…自己管理型の学習が可能。
  • eラーニングのメリット…コストを抑えやすい。反復学習ができる。
  • eラーニングのデメリット…学習効果が受講者のモチベーションに依存しやすい。

 

自己啓発

自己啓発型の研修とは、従業員が自主的に進める形式を指します。
資格取得やキャリアアップをめざして行われることが多く、企業が一部費用を補助するケースもあります。

  • 自己啓発の特徴…従業員の自主性を重視している。
  • 自己啓発のメリット…モチベーションが高い従業員に適している。個人のニーズに応じた学習が可能。
  • 自己啓発のデメリット…企業が成果を測定しにくい。

人材育成研修の設計方法

人材育成研修を効果的に実施するためには、計画的かつ段階的に設計することが重要です。
ここでは、研修の目標設定から振り返りまで、成功する研修設計の手順を解説します。 
 

1.研修の目標を立てる

研修を成功させるためには、まず明確な目標を設定することが不可欠です。
目標は、研修の成果を測る基準となるため、具体的かつ測定可能な内容にする必要があります。

研修の目標例:

  • 新入社員研修では、「1か月以内に基本業務を独立して行えるようになる」。
  • 管理職向け研修では、「部下のパフォーマンス向上を目的としたフィードバック技術を習得する」。

 

2.研修担当者を決める

研修の担当者を適切に選定することも成功の鍵です。担当者は研修内容の設計から進行、結果の分析まで多岐にわたる役割を担います。 
 

3.研修方法を決める

研修の目的や対象者に応じて、最適な研修方法を選択しましょう。
研修にはどのような種類がある?」でご紹介したような形式を組み合わせることで、より効果的な研修が実施可能です。 
 

4.研修内容を決める

研修の具体的な内容を決める際は、参加者のスキルレベルや役職、目標に応じて設計しましょう。内容は体系的かつ実践的であることが理想です。

たとえば、営業職向け研修では、コミュニケーションやプレゼンテーションの実践練習を中心に設計するといった具合です。

設計のポイント:

  • 参加者がどのようなスキルを必要としているかを事前に分析する。
  • 学んだことをすぐに業務に活用できるよう、実務に即した内容を取り入れる。

 

5.研修の実施

ここまで準備してきた内容に合わせて、実際に研修を実施します。
研修を計画どおりに進行するためには、事前準備を徹底する必要があります。

実施前の準備:

  • 参加者へ目的やスケジュールを周知する。
  • 必要な教材や機材を整える。
  • 研修場所の確保またはオンラインツールの設定を行う。

実施中のポイント:

  • 参加者が積極的に参加できる雰囲気を作る。
  • フィードバックを行い、参加者の理解度を確認する。

 

6.研修の振り返り・報告書の作成

次回以降の研修を改善するためにも、研修後の振り返りと結果分析を行いましょう。

具体的な振り返り方法:

  • アンケートを実施し、参加者の意見を収集する。
  • 目標達成度を測るためのテストや実務でのパフォーマンス評価をする。

また、報告書を作成する際は、次のような内容を含めると良いでしょう。

  • 研修の目的と実施概要。
  • 参加者の成果や課題。
  • 次回に向けた改善点。

まとめ

人材育成研修は、従業員のスキルや知識の向上を図り、組織全体の成長と競争力強化を支える重要な施策です。
研修を効果的に運用するためには、まず現状の課題を明確にし、目的に応じたプランを立てることが大切です。

また、研修の成果を最大化するには、継続的な学習環境の提供や実務での活用を意識した設計が求められます。さらに、フィードバックや効果測定を取り入れ、プログラムを進化させていく姿勢も重要です。
これにより、企業は従業員の成長を促進しつつ、変化する市場に柔軟に対応できる基盤を構築できます。

継続的な人材育成が、企業の成長と従業員の満足度向上に大きく寄与します。本記事をもとに、自社の研修プログラムを見直し、さらなる飛躍をめざしましょう。

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