コンピテンシー評価とは?メリットや導入手順を解説

  • 評価制度

コンピテンシー評価とは、高い業績を上げている従業員に共通して見られる「行動特性(コンピテンシー)」を評価基準として設定し、従業員の行動を評価する手法です。昨今のビジネス環境において、従業員の能力を多角的に評価し、企業の競争力を高める手法として「コンピテンシー評価」が大きな注目を集めています。従来のような職務遂行能力だけでなく、高い成果を生み出す人物に共通する「行動特性」を基準に据えることで、より客観的で納得感の高い人事評価の実現が期待されているのです。

現在、働き方の多様化やDXの進展に伴い、従来の年功序列や曖昧な評価基準を見直す動きが加速しています。そこで、優秀な人材の定着と育成、そして組織全体のパフォーマンス向上を両立させるために、コンピテンシー評価の導入を検討する企業が少なくありません。

この記事では、コンピテンシー評価の基本的な概念から、導入することで得られる具体的なメリット、さらにはスムーズな運用を開始するための手順までを詳しくご紹介いたします。

  • 資料「AIを活用した人事評価制度の最前線」のサムネ画像

    AIを活用した人事評価制度の最前線

    • 評価業務におけるAIの活用領域
    • AI導入時のステップガイドと注意点

    など、人事評価へのAI活用で知っておきたいポイントをまとめています。

コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは、高い業績を上げている従業員に共通して見られる「行動特性(コンピテンシー)」を評価基準として設定し、従業員の行動を評価する手法のことです。従来の能力評価が「何を、どれだけ知っているか(知識・スキル)」に焦点を当てていたのに対し、コンピテンシー評価は「その知識を活かして、どのような成果に結びつく行動をとったか」を重視します。

この評価手法の背景には、米国ハーパード大学の教授であった心理学者のデイヴィッド・マクレランド(David McCleland)氏の研究があります。彼は、学歴や知能テストの結果だけでは将来の業績を予測できないことを発見し、高業績者に共通する具体的な行動パターンこそが重要であると提唱しました。

現代の日本企業において、この評価制度が注目されているのは、ビジネス環境が激しく変化しているためです。従来の職能給制度や年功序列では、役割が多様化する現代の業務に対応し切れないことが課題となっているのです。コンピテンシー評価を導入することで、組織が求める「具体的な行動」を明文化し、主観を排除し、客観的な評価体系を構築することが可能になります。

コンピテンシー評価の項目例

コンピテンシー評価を実務で運用する際には、自社が求める行動特性を具体的な評価項目へと落とし込む必要があります。ここでは、全社員に共通して求められるものと、特定の職種や役職に求められるものの2層構造で、評価項目の具体例をご紹介します。

従業員の成熟性に関する項目

全社共通の指標として、コンプライアンスの遵守、企業の理念やビジョンの理解など、すべての従業員が備えておくべき基本的な行動特性グループです。組織文化の醸成や、会社全体のベクトルを合わせるために重要な役割を果たす項目です。

  • コンプライアンス・倫理観…法令遵守はもちろん、企業倫理にもとづいた誠実な行動をとっている。
  • 企業理念の体現…会社のミッションやビジョンを正しく理解し、それにもとづいた行動を選択している。
  • チームワーク・協調性…部署や役職の垣根を越えて、他者と協力しながら目標達成をめざしている。

思考特性に関する項目

業務を遂行する上での「考え方」や「分析の質」に焦点を当てたグループです。企画部門や管理職層において特に重視される項目です。

  • 戦略的思考…中長期的な視点で、組織の利益を最大化するための道筋を立てている。
  • 問題解決能力…発生している事象の本質を見抜き、根本的な解決策を提示し実行している。
  • 創造性・革新性…従来の慣習に捉われず、新しいアイデアや手法を積極的に取り入れている。

対人特性に関する項目

顧客やチームメンバー、ステークホルダーとの関係構築における行動特性グループです。営業職やプロジェクトマネージャーに欠かせない要素です。

  • コミュニケーションスキル…相手の意図を正確に汲み取り、自身の考えを論理的かつ説得力を持って伝えている。
  • リーダーシップ…チームの士気を高め、メンバーの能力を最大限に引き出すための働きかけを行っている。
  • 交渉・調整力…利害関係が対立する場面において、双方が納得できる着地点を見出している。

行動特性(実行力)に関する項目

立てた計画を完遂し、成果へと結びつけるための「動き」を評価する項目群です。

  • 目標達成意欲(達成指向性)…高い目標に対しても粘り強く取組み、完遂するための具体的なアクションを起こしている。
  • 自律的行動…上司の指示を待つだけでなく、自ら課題を見つけて主体的に業務を推進している。
  • スピード感…変化の激しい市場環境に対応し、迅速な意思決定と実行を行っている。

管理・育成特性に関する項目

主にマネジメント層に求められる、組織運営や部下の成長支援に関する行動特性グループです。

  • 人材育成…部下の強みと弱みを把握し、適切なフィードバックや機会の提供を通じて成長を促している。
  • 組織マネジメント…リソースの適切な配分を行い、組織全体のパフォーマンスを最適化している。

コンピテンシー評価を導入するメリット

コンピテンシー評価を導入することで、人事制度の適正化だけでなく、経営戦略の実現にもつながります。コンピテンシー評価を導入する主なメリットは、次の4点です。

公平な人事評価により社員の納得感が高まる

コンピテンシー評価の最大のメリットの一つは、評価基準の客観性が向上することです。従来の評価制度では「主体性がある」「責任感が強い」といった抽象的な表現が使われることが多く、評価者の主観や感情が入り込みやすい側面がありました。コンピテンシー評価では、高業績者に共通する具体的な「行動特性」を基準に据えるため、評価のブレが最小限に抑えられます。社員にとっても「どのような行動が高評価につながるのか」が可視化されるため、結果に対する納得感が醸成されやすくなります。透明性の高い評価体制は、社員のモチベーション維持や離職防止において極めて重要な役割を果たすでしょう。

評価者が評価をしやすくなる

評価を行う管理職層にとっても、コンピテンシー評価は有効な手法となります。明確な行動基準が存在することで、評価者は日々の業務の中で部下のどのような振る舞いに着目すべきかが明確になるためです。具体的なチェックリストや基準に沿って判断できるため、評価作業にかかる心理的負担や工数が軽減されるでしょう。また、フィードバック面談においても、改善すべき点を具体的な「行動」のレベルで指摘できるため、建設的なコミュニケーションが可能になります。評価のバラつきを防ぐことは、管理職全体のマネジメント能力の底上げにもつながります。

効率的に人材育成できる

コンピテンシー評価は、育成のガイドラインとしても機能します。評価項目は「理想的な社員像」を具現化したものであるため、社員は自分に足りない行動や、次にめざすべきステップを正しく把握できます。配属部署によって教育環境に差が出ることが課題となるケースも少なくありませんが、全社的なコンピテンシーモデルを共通言語とすることで、どの部署においても一定の基準にもとづいた指導が行われるようになります。社員が自律的にスキルアップを図る環境が整うことで、教育コストの最適化と効率的な人材底上げが期待できるでしょう。

戦略的に人材をマネジメントしやすくなる

経営戦略と連動したコンピテンシーを設定することで、組織全体の方向性を一致させることが可能になります。たとえば、イノベーションを重視する戦略をとる企業であれば「既存の枠組みに捉われない提案行動」を高く評価する項目を盛り込みます。このように、経営トップが求める人材像を評価制度に直接反映させることで、戦略の実行に必要な行動を組織全体に浸透させやすくなるのです。適材適所の配置や、次世代リーダーの早期選抜においても、数値化された行動特性データは有効な判断材料となります。その結果、変化の激しい市場環境においても、柔軟かつ迅速な人材マネジメントが実現するでしょう。

  • 資料「AIを活用した人事評価制度の最前線」のサムネ画像

    AIを活用した人事評価制度の最前線

    • 評価業務におけるAIの活用領域
    • AI導入時のステップガイドと注意点

    など、人事評価へのAI活用で知っておきたいポイントをまとめています。

コンピテンシー評価の導入手順

コンピテンシー評価を導入する際は、現場の混乱を防ぎ、実効性を高めるために慎重なステップを踏む必要があります。ここでは、導入手順を8つのステップでご紹介します。

1.自社の戦略から求められる人材像を定義する

最初に行うべきは、自社の未来を見据えた理想像の明確化です。明確化は、次の2つの手順で行います。

  • 自社の事業環境の分析&経営トップから組織の将来ビジョンや戦略を確認する
    外部環境の分析(PEST分析や3C分析など)を行い、自社が今後数年でどのような立ち位置をめざすのかを再確認します。人事部門は経営層と密にコミュニケーションをとり、「どのような行動をとる社員が、これからの成長を支えるのか」という本質的な問いへの答えを引き出す必要があります。
  • 今後の自社の方向性を踏まえた上で、求められる人材像を検討し、定義づける
    経営戦略を明確にし、具体的な人物像へと落とし込みます。「主体性がある」といった抽象的な表現を避け、「不確実な状況下でも、自ら情報を収集し、周囲を巻き込んで解決策を提示する人材」といった具体的な定義を行います。

定義した人材像を構成する「行動」にはどのようなものがあるか、仮説を立てます。この時、現時点で高い成果を出している社員へのインタビューや行動観察を行い、彼らの成功要因を抽出するハイパフォーマー分析が有効です。

立案したコンピテンシー項目が、本当に成果に関係しているかを検証します。アンケート調査や統計的な分析を組み合わせ、特定の行動をとっている社員が実際に高いパフォーマンスを発揮しているかを客観的に確認しましょう。

検証された項目をまとめ、全社共通の「コア・モデル」と、職種ごとの「職系モデル」などに整理します。これが評価制度の「骨格」となります。

各コンピテンシーに対し、5段階などの評価レベル(習熟度)を設定します。
たとえば、

  • レベル1:受け身の行動
  • レベル2:習慣的な行動
  • レベル3:自律的な行動
  • レベル4:創造的な行動
  • レベル5:周囲に影響を与え、変革をもたらす行動

といったように、誰が見ても判断できる基準を策定しましょう。

制度の目的、評価基準、給与への反映方法などを、全従業員に対して丁寧に説明しましょう。一方的な通達ではなく、なぜこの制度が必要なのか、従業員のキャリアにとってどのようなメリットがあるのかを伝えることが重要です。

いきなり本運用をはじめるのではなく、一部の部署や期間を限定してプレ運用(試行)を行います。ここで「評価基準が厳しすぎる」「項目が現場の業務と合っていない」といった不備を洗い出し、微調整を行います。

プレ運用での調整が完了したら、いよいよ本運用を開始します。導入後も、半期や通期ごとに評価の分布や現場の声を収集し、制度が形骸化していないか、経営戦略とズレが生じていないかを確認し、改善を継続しましょう。

コンピテンシー評価の注意点

コンピテンシー評価は、正しく運用されれば組織に大きな変革をもたらす強力な仕組みですが、導入すること自体がゴールになってしまうと、期待した効果を得ることは難しくなります。一度決めたルールが硬直化しやすいと、現場の実態と乖離してしまうリスクがあります。ここでは、制度を形骸化させず、実効性を持ち続けるために人事部門が意識すべき重要な注意点を解説します。

評価基準や項目を定期的に見直す

ビジネス環境や市場のニーズは常に変化しており、昨日までの「正解となる行動」が明日も通用するとは限りません。たとえば、以前は「緻密な計画を立てて着実に遂行する」といった行動が高く評価されていても、現在のような不確実な時代においては「不完全な状態でも素早く着手し、修正しながら進める」スピード感のある行動の方が成果に直結する場合があります。コンピテンシーの項目は、一度、設定したら終わりではなく、社会情勢や自社の経営戦略の変更に合わせて、定期的な更新を行うことが不可欠です。少なくとも数年に一度、あるいは新規事業の立ち上げや組織再編のタイミングで、現在のハイパフォーマーの定義がズレていないかを確認し、必要に応じて評価基準を更新し続ける必要があります。

コンピテンシー評価を導入・運用するプロセスでは、評価シートの記入や集計といった事務的な作業に追われ、本来の目的を見失ってしまうケースも少なくありません。しかし、コンピテンシー評価の真の目的は、単に従業員に点数をつけることではなく、高い成果を生み出す行動を組織全体に浸透し、人材を育成することにあります。このため、「項目が細かすぎて評価者の負担が増え、フィードバックが疎かになる」「評価を決定することだけに意識が向き、部下との対話が減る」といった事態は避けなければなりません。常に、「この評価項目は本当に従業員の成長につながっているか」「経営目標の達成に寄与しているか」という本質的な問いを現場に投げかけ、目的意識を共有し続けることが重要です。

コンピテンシー評価は、成果を出すための行動を評価する優れた手法ですが、それだけで人事評価のすべてを完結させるのは危険です。なぜなら、どれほど素晴らしい行動をとっていたとしても、ビジネスにおいては最終的な成果(売上やプロジェクトの完遂)が伴わなければ、組織の持続的な成長は望めないからです。そのため、多くの企業では「コンピテンシー評価」と、数値目標の達成度を測る「MBO(目標管理制度)」や「OKR」などを組み合わせて運用しています。「どのような行動をとったか(プロセス)」と「何を実現したか(成果)」の両面から多角的に評価することで、よりバランスの取れた、納得感の高い人事制度を構築できるでしょう。

MBO(目標管理制度)については、下記の記事をご覧ください。

まとめ

コンピテンシー評価のように客観的な基準にもとづく評価を用いることで、従業員のエンゲージメントを高め、自律的な組織文化を醸成することが可能です。特に、複雑化する業務の中で最適な人材配置や育成が求められる 企業にとって、コンピテンシー評価の導入は持続的な成長に向けた重要な一歩となるでしょう。まずは自社のハイパフォーマーがどのような行動をとっているかを分析することから、はじめてみてはいかがでしょうか。

なお、コンピテンシー評価をさらに効果的に運用するためには、評価と連動した「教育・研修プログラム」の充実が欠かせません。社員が評価を通じて気づいた課題を、具体的なスキルアップにつなげる仕組みを整えることで、組織のパフォーマンスは最大化されます。

NTT ExCパートナーでは、企業が抱える課題に応じて多様な研修サービスをご提供しています。お客様のニーズや業務特性に最適化した、効果の高い研修プログラムをご提案いたします。研修後の振り返りはもちろん、次の改善につながる示唆出しまで一貫してサポートし、育成施策の成果最大化を実現します。

  • タレントマネジメントシステム「カオナビ」
                                                のサムネ画像

    タレントマネジメントシステム「カオナビ」は、人事業務のDX化を推進するソリューションです。賃金制度の改革をはじめとした人事戦略に注力するために、従業員情報の一元管理や評価業務のデジタル化といった幅広いニーズに対応し、人事業務の根本的な効率化を支援します。

  • 資料「人事評価制度の作り方」のキャプチャー画像

    人事評価制度の設計がはじめての方にもわかりやすいよう、基本的な流れや人事評価で用いられる手法、成功のポイントな、評価面談の留意点など幅広く解説します。

関連事例

CASE STUDY

NTTグループの人事制度と「NTT Group Job Board」の活用

  • IT・情報通信
  • 1,001人~
  • 働き方
  • 組織開発
  • 生産性向上
  • DX

NTTグループの人事制度の特徴や、自律的にキャリアを検討・実現していくため考え方、仕組みをご紹介いただきます。

ExCの強み

  • NTTグループの技術力を活用した
    先端ソリューション

    • NTTグループの研究開発の実績や技術力を基盤にしたソリューションで、一歩先を行く、科学的アプローチを実現

  • 人事・総務の各領域に精通した
    プロフェッショナルが伴走

    • 30年以上にわたりNTTグループの人事・総務を担ってきたHC領域の専門家が伴走

  • 『人と組織を変える施策の実行』と『振り返りでやりっぱなしを防止』の文字を、双方に向かう矢印でサイクルになっていることを表した図。

    施策効果の振り返りまでを
    実施して改善サイクルを実現

    • ExCパートナーのソリューションでは、実行後の振り返りを行い、次の改善活動に向けた示唆出しまでサポートします。

30年以上のご支援で
培われたノウハウで
800社以上の企業での
導入実績