自治体のエンゲージメント向上策とは?離職を防ぐ調査・分析の進め方や注意点を解説

  • 働き方
  • 組織開発
  • 退職防止

自治体におけるエンゲージメント向上策は、単なる職員満足度の改善ではありません。行政計画にもとづく調査設計と部局・属性別の分析を通じて、持続可能な公共サービスを支える組織づくりへとつなげる取組みです。 
民間企業とのめざす姿の違いから、若手離職や人員不足による職員の負担増といった特有の課題背景、さらにエンゲージメント調査を組織改善につなげるための実践的な分析プロセスや運用上の注意点について順に解説します。 

この記事の要約

  • 自治体のエンゲージメントは職員満足度ではなく公共サービスへの主体的貢献を示す
  • 定期的な人事異動や縦割り構造など自治体特有の課題がエンゲージメントを低下の要因
  • 調査は全庁平均ではなく部局や属性別の違いを分析し現場の改善行動を促す
  • 現場の負担軽減や匿名性担保など運用時の配慮が継続的な組織改善につながりやすい
  • 専門家の支援も活用しながら既存調査の再分析を実施し次年度計画へ施策を反映する

自治体がめざしたいエンゲージメントが高い状態とは?

自治体におけるエンゲージメントは、利益追求を前提とした民間企業の枠組みをそのまま当てはめにくい面があります。自治体がめざしたいエンゲージメントの高い状態を、3つの観点から整理します。

観点要点
地域貢献の実感自治体の使命と自身の役割が結びつき、住民の暮らしへの貢献を手応えとして感じられている
自発的な貢献意欲給与や福利厚生などの待遇面への満足ではなく、自治体の理念や目的に共感し、組織や地域のために貢献したいという意欲を持っている
主体的な改善組織の使命を理解し、公共サービスの改善に主体的に貢献している

自治体の使命と自身の役割を結びつけ、地域への貢献を実感できている

職員エンゲージメントが高い状態の前提となるのは、自治体が果たすべき使命と自分の担当業務のつながりを、職員自身が理解できていることです。窓口対応や事務処理といった日々の業務が、住民の暮らしや地域の将来にどう結びつくのかが見えていれば、仕事に対する納得感と誇りが生まれやすくなります。政策の目的や成果を庁内で丁寧に共有し、住民からの反応を職員に還元する仕組みを整えることで、地域への貢献を実感できる状態に近づくでしょう。

待遇面だけでなく、自治体の理念や目的への共感を持っている状態

給与や福利厚生といった待遇面への満足にとどまらず、自治体の理念や政策の目的に共感し、その実現に向けて主体的に貢献したいと考えている状態も職員エンゲージメントが高いと言えます。自治体職員一人ひとりが、住民サービスの向上や地域課題の解決という組織の使命を自分事として捉え、日々の業務に取組めていることが重要です。

満足度とエンゲージメントの違いは、「組織から何を受け取っているか」を測るのか、「組織にどれだけ貢献したいと思っているか」を測るのかにあります。満足度は、給与や休暇制度、福利厚生、職場環境といった組織から提供される条件への評価を示す指標です。一方でエンゲージメントは、組織のビジョンに共感し、住民サービスの向上という目的のために自ら動こうとする意欲の強さを表します。とくに自治体は、利益分配のようなわかりやすいインセンティブを用意しにくい組織です。待遇面の改善にとどまらず、仕事への誇りを育て、職員の意欲を組織の成果へつなげる視点が求められます。

前例踏襲だけでなく公共サービスの改善に能動的な状態

前例どおりに業務を処理するだけでなく、より良い方法がないかを職員自身が考え、公共サービスの維持・改善に自発的に取組めている状態が、本来めざしたい自治体におけるエンゲージメントが高い状態です。住民の多様なニーズに応えるには、与えられた業務を正確に進める力に加えて、部局や職種を越えて連携する主体性も求められます。前例踏襲にとどまらない提案が歓迎される組織風土があれば、改善の動きは個人の努力ではなく組織の習慣として定着しやすくなるでしょう。

自治体で起こるエンゲージメント低下の要因とは?

自治体組織には、構造的・環境的な事情に起因する特有のモチベーション阻害要因が存在します。ここでは、離職や意欲低下の背景にある具体的な課題を5つの観点から整理します。

課題の背景影響と要点
成果実感の得にくさ明確な成果指標や肯定的な評価が届きにくく、仕事の手応えを感じにくい
定期的な人事異動数年ごとに担当が変わり、専門性の蓄積と中長期のキャリア形成が難しくなる
若手の離職と採用難人材流出と人材確保の難しさが重なり、残る職員の負担増が次の離職を招きやすい
縦割りの組織体制部局間の連携が途切れ、業務の属人化と対応力の低下を招く
人員不足と業務の複雑化一人あたりの負担が増え、育成やマネジメントまで手が回らない

自身の仕事の成果を実感しにくいため

行政の仕事は施策の効果が現れるまでに数年かかるものが多く、自分の業務がどのような成果につながったのかを短期間で確認しにくい特徴があります。売上や利益のようなわかりやすい指標を設けにくいため、努力や工夫が数値に表れず、評価への実感を得にくくなります。住民からは要望や苦情が届きやすい一方で感謝の声は届きにくく、うまく機能している業務ほど「当たり前」と扱われがちです。進捗を示す中間指標が共有されないままだと、努力が可視化されず、日々の業務に意味を見出しにくい状態が続きやすくなります。

定期的な人事異動によりキャリア形成が難しいため

数年ごとの定期人事異動は、幅広い行政分野を経験できる一方で、専門性を積み上げにくい側面もあります。異動ごとに業務も人間関係も一から築き直すため、中長期のキャリアパスを描きにくくなります。専門性を高めたい若手や中堅は、意欲と配置の不一致が不満につながりやすい傾向です。希望や適性と配置が結びついていないと、異動そのものがキャリア形成の断絶として受け止められ、意欲の低下につながりやすくなります。

若手の離職が増え採用にも困難があるため

近年は多くの自治体で若手職員の早期離職が指摘されており、人材確保の難しさが組織の活力低下につながりやすい状況です。年功序列型の給与や条例で定められた処遇は成果や意欲を反映しにくく、若手が将来像を描きにくくなります。行政職の採用は競争試験が前提で、受験準備に一定の期間を要することから、通年採用や高い初任給を示す民間との人材獲得競争で不利になりがちです。試験日程の複数回化や年齢要件の緩和など見直しを進める自治体も増えていますが、採用が追いつかなければ、人員が減っても業務量は変わらず、残った職員の負担が増えて次の離職を招く悪循環に陥りかねません。

縦割り体制で連携が途切れがちになるため

部局ごとの所掌が明確に分かれた縦割り体制は、責任の所在をはっきりさせる一方で、部署をまたぐ課題への対応力を弱める要因になり得ます。住民の相談が複数の部署に関わる場合でも情報が共有されず、部署間での引き継ぎの繰り返しや二重対応が発生すれば、職員自身も仕事の達成感を得にくくなるでしょう。部署内で業務が閉じたまま属人化が進むと、特定の担当者に過度な負担が集中し、組織全体での柔軟な対応が難しくなります。

人員不足や業務の複雑化により職員の負担が高まりやすいため

行政需要が多様化・複雑化する一方で、地方公共団体の職員数は平成29年以降、微増から横ばいで推移しています。防災や児童相談所など需要が急増した分野の増員に追いつかず、一人あたりが抱える業務量と難易度が高まりやすい状況です。住民対応に加えて議会・監査対応や制度改正への対応が重なると、日々の処理が優先され、改善や振り返りに充てる余裕を失いかねません。現場の管理職もプレイングマネージャーとしての役割を求められ、職場環境の改善や部下との対話に十分な時間を割けないケースも少なくありません。

エンゲージメントの調査結果を組織改善につなげるプロセス

自治体では成果実感の得にくさや人事異動、若手離職、人員不足など、エンゲージメントの低下につながるさまざまな課題が存在します。しかし、こうした課題は経験や印象だけでは実態を正確に把握しにくく、効果的な対策の優先順位も定めにくいのが実情です。そのため、まずは職員の意識や組織の状態を客観的に可視化し、課題の所在を明らかにすることが重要になります。

エンゲージメント調査を単なる職員アンケートの集計で終わらせず、実効性のある組織改善へ結びつけるために、現状把握から効果検証までの手順を明確にしておきましょう。

ステップ実施する内容
指標の設定行政計画や人材方針から測るべき組織状態を定義する
複数切り口での分析全庁平均ではなく部局や属性の違いに着目して課題を探る
改善の実行分析結果を現場に還元し具体的なアクション計画を立てる
効果の測定施策前後の変化を確認して次年度の計画や運用に反映する

ステップ1:行政計画や人材方針から指標を決める

エンゲージメント調査を実施する際は、既存の総合計画や人材育成・確保方針と連動した評価指標を最初に設定しましょう。他組織の汎用的な設問をそのまま流用しても、自庁がめざす職員像や公共サービスのあり方と合致しなければ、有意義な示唆は得られにくくなります。組織の使命を達成するために必要な職員の行動や職場の状態を具体的に言語化し、測定できる調査設計へ落とし込むのが理想的です。

ステップ2:全庁平均ではなく部局・属性別に分析する

調査結果は全体平均の確認に留めず、所属部局、職種、職階、年代といった属性ごとの差異まで細かく分析しましょう。自治体は多種多様な業務を抱える複合組織であり、本庁と出先機関、事務職と専門職では直面している課題が異なる傾向にあります。全体のスコアでは見えにくい特定部署の過負荷や、特定年代のエンゲージメント低下を可視化することで、対策が求められる領域と優先順位を特定しやすくなります。

ステップ3:分析結果を現場の改善行動に落とし込む

可視化された課題を人事部門だけで抱えず、管理職や現場の職員と共有し、職場レベルでの具体的な改善行動へつなげましょう。集計レポートを配布するだけでなく、管理職向けのワークショップや職場内での対話の場を設け、結果の背景にある要因を掘り下げる支援がおすすめです。日々の業務の中で実践できる小さなアクションを積み重ねると、自分たちで職場を良くできるという当事者意識が高まりやすくなります。

ステップ4:施策前後の変化を測り次年度へ反映する

実行した改善施策の成果をパルスサーベイやヒアリングで定期的に検証し、次年度の組織施策や予算編成へ反映させましょう。一度の調査と施策で終わらせず、施策前後の変化をデータで追跡すると、何が効果的だったのかを客観的に評価しやすくなります。成功した好事例を庁内で共有し、想定した成果が出なかった部分はアプローチを見直す取組みを継続することで、組織力の向上につながるでしょう。

調査・分析を運用する際の注意点

自治体という組織特性を踏まえ、調査の実施が新たな負担や不信感を生まないよう、運用面での細やかな配慮が求められます。

注意する観点運用のポイント
負担の軽減回答時間や時期を工夫し多忙な現場でも実施可能にする
匿名性の確保個人を特定させないルールを設けつつ施策の根拠を提示する
体制の維持担当者が異動してもノウハウが引き継がれる仕組みを作る

現場の業務負担にならないよう配慮する

調査を実施する時期や回答にかかる時間を調整し、多忙な現場職員に新たな負担が生じないよう配慮しましょう。繁忙期を避ける、設問数を絞り込んで回答時間を短縮する、スマートフォンからも回答できるようにするといった工夫が、回答率の向上につながる傾向にあります。現場の負担感に配慮せず調査を進めると、回答自体が目的化し、正確な実態を把握できないばかりか、組織改善への協力姿勢を低下させるおそれがあります。

匿名性を担保しつつ施策判断の根拠を整理する

職員が評価への悪影響を恐れずに率直な意見を出せるよう、調査の匿名性を制度として担保しましょう。回答人数が少ない部署の結果は合算して表示するなど、個人が特定されない集計ルールを事前に周知し、心理的安全性を確保するのが理想的です。自由記述などから得られた定性的な声は、特定個人の不満として扱うのではなく、組織構造の課題を示す客観的な根拠として整理し、施策判断に活用しましょう。

担当者が変わっても継続できる運用体制を作る

人事・総務担当者の定期的な異動を前提に、分析の手順や結果の読み解き方、現場への還元方法をマニュアル化し、誰でも継続できる運用体制を整えましょう。特定の担当者のスキルや熱意に依存した取組みは、担当者が変わったタイミングで途絶えるケースも少なくありません。標準化されたテンプレートやガイドラインを整備し、組織としての知見を蓄積していく仕組みづくりがおすすめです。

自治体の組織改善に一貫して取組むには外部支援も検討する

庁内のリソースだけで高度な分析や現場支援まで進めることが難しい場合は、外部の専門的なソリューションの活用も選択肢の一つになるでしょう。

外部支援活用のポイント得られるメリット
専門家の活用課題の整理から効果測定までの一貫した伴走支援を受けられる
スモールスタート既存データの再分析や特定部局での試行から段階的にはじめられる

公共機関の支援実績がある委託先を選ぶ

自治体の組織特性に精通した外部機関の支援を受けると、調査の設計から現場での改善アクション、自走化までのプロセスを円滑に進めやすくなります。人事部門だけでは対応しきれない管理職へのフィードバックや、他自治体の好事例を取り入れた施策の提案など、専門家ならではの客観的な視点とノウハウの活用も期待できるでしょう。庁内の関係部署と連携しながら、組織風土の変革を進める後押しになります。

既存調査の再分析や小規模な試行から始める

外部支援の活用は、全庁的な大規模調査の導入とセットで考える必要はありません。すでに実施している職員アンケートの再分析や、特定の課題を抱える部局に絞った試行から相談する進め方も可能です。過去のデータを専門家の視点で属性別にクロス集計し直すだけでも、庁内では見落としていた課題の偏りを発見できるケースも少なくありません。特定の部署で小さな成功事例を作り、成果を庁内へ示すことで、段階的に全庁的な施策へと拡大しやすくなります。

自治体のエンゲージメント向上を一体設計

ここまで見てきたように、自治体のエンゲージメント向上は、調査ツールを導入するだけでは成り立ちません。行政計画との接続から効果測定までを一体で設計し、庁内で回し続ける体制が必要になります。とはいえ、人事部門だけでこの全工程を担うのは負担が大きいのが実情でしょう。

NTT ExCパートナーでは、改善の一連の流れを一貫して支援します。まず総合計画や人材育成・確保方針からめざす組織状態と指標を整理し、職員負担と匿名性に配慮した職員調査を実施。所属・職種・職階・年代・勤務形態などの属性別分析に自由記述やヒアリングを重ね、全庁と各部局の優先課題を設定していきます。

その後は、管理職ワークショップや職場対話といった管理職・職員それぞれが担う改善アクションを具体化。パルスサーベイなどで効果測定を行い、好事例の共有や運用手順書の整備によって、担当者が変わっても回り続ける自走化までを見据えます。新たな調査の実施に限らず、既存調査の再分析や特定部局での試行、管理職支援のみのご相談にも対応しています。現状整理の段階からでも構いませんので、ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

自治体の職員エンゲージメント向上は、民間企業の手法をそのまま流用するのではなく、公共サービスの持続性という目的に沿って調査・分析を設計する取組みです。全庁平均では見えにくい部局や職種別の課題を可視化し、現場の管理職や職員による具体的な改善行動へつなげるプロセスが求められます。しかし、慢性的な業務過多や頻繁な異動が前提となる組織構造の中で、人事部門が独力で詳細な属性別分析から現場の伴走支援までを完遂するには限界があるでしょう。調査を実施したものの、集計レポートの共有だけで次の施策を見出せず、施策が停滞するケースも少なくありません。まずは既存調査の再分析や特定部局での試行など、着手しやすい範囲からはじめ、必要に応じて公共機関の支援実績がある外部の専門家と連携することが、継続的な組織改善への近道となるでしょう。

ExCの強み

  • NTTグループの技術力を活用した
    先端ソリューション

    • NTTグループの研究開発の実績や技術力を基盤にしたソリューションで、一歩先を行く、科学的アプローチを実現

  • 人事・総務の各領域に精通した
    プロフェッショナルが伴走

    • 30年以上にわたりNTTグループの人事・総務を担ってきたHC領域の専門家が伴走

  • 『人と組織を変える施策の実行』と『振り返りでやりっぱなしを防止』の文字を、双方に向かう矢印でサイクルになっていることを表した図。

    施策効果の振り返りまでを
    実施して改善サイクルを実現

    • ExCパートナーのソリューションでは、実行後の振り返りを行い、次の改善活動に向けた示唆出しまでサポートします。

30年以上のご支援で
培われたノウハウで
800社以上の企業での
導入実績