自治体で生成AIを活用するには?庁内業務での活用例と導入時の注意点を解説

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庁内業務への生成AIの導入は、都道府県や指定都市では大きく進んでいます。一方、その他の市区町村では導入済は一部にとどまり、実証実験中・導入検討中の段階にある団体も少なくありません。近年は規程や過去資料を参照するRAGの活用も広がっており、2026年現在、本格運用を見据えた体制づくりが課題となっています。政府では2026年6月にデジタル庁が『行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(第2.0版)』を策定しています。自治体では、総務省の『自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)』や別添の『生成AIシステム利用ガイドライン(ひな形)』を踏まえ、安全にナレッジを活用する体制づくりが求められます。
本記事では、自治体特有の情報管理課題を踏まえ、庁内業務での代表的な活用例やRAGの仕組み、導入時の注意点、PoCから利用定着までのステップを順に解説します。

この記事の要約

  • 行政のAI活用は大規模導入やRAG利用へ進んでおりガイドラインに沿った運用が必要
  • 庁内の情報分散や異動による知識リセットを防ぐため業務に特化した生成AIが有効である
  • RAGを活用すると庁内規程やマニュアルを参照し、情報源を明示した回答を得やすくなる
  • 導入時は個人情報の保護に加え旧版規程の整理や誤答時の確認体制の構築が必要である
  • 閉域環境で安全に構築でき運用の伴走まで対応するソリューションの活用が推奨される

庁内業務で生成AI活用が求められる背景

自治体の業務では扱う文書が多岐にわたります。業務に必要な情報にたどり着くまでに時間がかかることもあるでしょう。加えて、定期的な人事異動や、個人情報など機密情報を扱う業務が多いことも、情報の管理・活用を難しくする要因となります。ここでは、庁内業務で生成AI活用が求められる背景を整理します。

自治体特有の課題生成AIがもたらす解決策
庁内文書の分散保管保管場所を意識せず、一度の検索で必要な情報を横断的に抽出できる
人事異動による知識の属人化過去の照会回答や引き継ぎ書を参照データ化し、着任直後の職員にも判断基準を引き継げる
閲覧権限の複雑さ利用者の役職や所属に応じて、閲覧権限のある情報だけを出しわけられる

庁内文書が分散し、必要な情報を探しにくいため

自治体には法令や条例だけでなく、要綱や手順書、過去の通知文など数多くの文書があります。これらが庁内の複数システムやファイルサーバーに分散して保管されているケースも見られます。どこに何があるかを職員が把握していない場合、探すだけで時間を消費しかねません。生成AIに庁内のデータを連携することで必要な情報を一度の検索で引き出せる可能性があります。紙媒体で残る資料もデジタル化して読み込ませることで、探す手間のさらなる削減が期待できます。

異動により、業務知識の引き継ぎが難しいため

行政機関では定期的な人事異動が前提となるため、特定の部署に蓄積された業務知識が引き継がれないまま失われやすい傾向にあります。前任者が残した過去の照会回答や引き継ぎ書を生成AIの参照用データとして整備しておくと、着任直後の職員でも過去の判断基準を自身で確認できるでしょう。引き継ぎ期間中の業務の停滞を防ぎ、担当者が変わっても住民や他部署への回答品質を一定に保ちやすくなります。

閲覧権限や情報管理に配慮した運用が求められるため

庁内で扱う情報には、全職員が閲覧できる規程類だけでなく、特定の部署や管理職しかアクセスできない機密性の高い文書も含まれます。そのため職員は、必要な情報を探す際にどこまで参照してよいかの判断に迷ったり、権限を持つ担当者へ都度確認したりする手間が生じがちです。生成AIは、職員ごとの閲覧権限を踏まえて回答や情報提供を行うことができるため、セキュリティを維持しながら必要な情報へスムーズにアクセスを実現できる可能性があり、庁内業務での活用が求められています。

庁内業務における生成AIの代表的な活用例

庁内のナレッジと生成AIを組み合わせると、バックオフィス業務の負担軽減が期待できます。具体的なユースケースを紹介します。

活用シーン生成AIによる処理内容
過去資料の検索あいまいなキーワードから関連する過去の照会回答を探す
規程の問い合わせ職員からの人事や総務関連の質問に自動で一次応答する
起案文書の作成過去のフォーマットと新規の要件を組み合わせて文案を作る

過去の照会回答やマニュアルを素早く探す

住民や他部署からの複雑な問い合わせに対して、過去にどのような回答をしたのかを探す作業には、多くの時間を要します。生成AIに過去の照会記録や業務マニュアルを読み込ませておくと、正式な専門用語がわからない場合でも、自然な話し言葉での検索から該当する事例を見つけ出せるでしょう。検索にかかる時間が減れば、本来の窓口対応や政策立案に注力しやすくなります。

庁内規程に沿って問い合わせに回答する

総務や人事などの管理部門には、各種手当の申請方法や休暇制度に関する定型的な質問が日々寄せられます。手続きを定めた規程類をAIが参照できる形に整備し、チャットボット形式で職員の質問へ自動応答させる運用が考えられます。管理部門の電話対応やメール返信の負担が減り、質問した職員側も担当者の不在を気にせず、いつでも回答を得やすくなるでしょう。

過去資料を参照して起案文書の下書きを作る

新たな施策の稟議や通知文を作成する際、過去の類似文書を探してフォーマットを踏襲する作業に手間がかかっているケースは少なくないでしょう。生成AIに過去の起案文書群を参照させ、「この資料をもとに令和8年度版の要綱案を作成して」と指示を出すと、文脈を踏まえた草案を短時間で得やすくなります。職員は出力された文案の推敲と事実確認に時間を充てることができます。

庁内情報の参照に役立つRAG(検索拡張生成)とは?

一般的な生成AIはインターネット上の公開情報などをもとに回答するため、庁内の独自業務に対応するにはRAGという技術がおすすめです。RAGの仕組みと利点を解説します。

RAGの主な特徴庁内業務におけるメリット
外部データの連携庁内の独自規程やマニュアルにもとづく回答が可能
情報源の提示回答の根拠となった文書のURLやファイル名を明示する

独自のデータベースを検索して回答を生成する仕組み

RAGとは、生成AIにあらかじめ用意した独自のデータベースを検索させ、検索結果をもとに文章を作成させる技術です。一般的なAIモデルが学習していない庁内独自のルールや最新の通知文であっても、RAGを利用すると内容を踏まえた回答を得やすくなります。参照先を庁内のデータに限定できるため、業務の実態に沿った回答を得やすい点も利点の一つと言えるでしょう。

情報源を明示して回答の根拠を示す仕組み

行政機関の業務では、回答の内容がどの条例や規程にもとづいているのかという根拠の提示が常に求められます。RAGを組み込んだ生成AIであれば、回答文と併せて参照したマニュアルの該当箇所やファイルへのリンクも出力できるでしょう。職員がAIの回答をそのまま受け入れず、引用元の文書を直接確認できるため、誤った情報をもとに業務を進めてしまうリスクの低減につながります。

業務に生成AIを導入する際の注意点

生成AIを安全かつ効果的に利用するには、システムの機能面だけでなく、運用ルールやデータの状態への配慮が求められます。導入前に確認したい事項を整理します。

注意したいポイント具体的な対応策
情報漏洩の防止AIに参照させるデータから個人情報や機密情報を除外する
誤答時の対応質問者がAIの回答に疑問を持った際のエスカレーション先を定める
データの品質管理参照用データから古い規程を削除し、用語の揺れを統一する

個人情報や機密情報の入力を避ける

生成AIが参照するデータベースに、住民の個人情報や公開前の入札情報などが混入しないよう、厳重な管理が求められます。導入の初期段階では、一般職員が閲覧しても問題のない規程やマニュアルに参照範囲を限定する方法が考えられます。AIに入力したプロンプトが外部のAIモデルの再学習に利用されないよう、データ保護方針が明確なサービスを選定しましょう。

誤答を前提に人の確認体制を整える

生成AIは事実と異なる内容を出力するハルシネーションを起こす可能性があり、すべての回答が正しいとは限りません。誤った回答が出た場合に備え、情報源のリンクを確認するよう利用する職員へ周知しておきましょう。AIの回答だけでは解決しない場合や内容に疑義がある場合に、担当部署へ直接問い合わせができるエスカレーションのフローも用意しておくのが理想的です。

旧版規程や表記ゆれを事前に整理する

AIの回答精度は、参照させる元のデータの品質に左右されます。同じ規程の改定前と改定後のファイルが混在していると、AIが古い情報を参照して回答するリスクが高まりかねません。正式名称と現場の職員が使う略称が異なると、必要な文書が検索されないケースもあります。稼働前に不要なファイルを削除し、表記を揃える棚卸し作業を進めましょう。

業務でのAI活用を成功に導くステップ

生成AIの導入を実証実験のまま終わらせず、本格的な運用へ移行させるための具体的な手順を解説します。

導入のステップ実施する内容
業務とナレッジの整理対象とする業務を決め、参照させるドキュメントを棚卸しする
PoCの実施と精度検証限定された環境でAIを動かし、回答の正確さや使い勝手を確認する
研修と利用の定着職員へプロンプトの書き方や注意点を指導し、利用を促す
状況分析と継続改善質問のログを分析し、不足しているナレッジを追加・更新する

ステップ1:業務を整理してナレッジを棚卸しする

AIツールの選定に入る前に、どの部署のどのような業務にAIを適用するのかを特定しましょう。対象業務が決まったら、その業務で参照するマニュアルやFAQを洗い出し、格納場所と最新版の所在を一覧化します。データが紙のまま残っている場合はテキスト化を進めるなど、AIが情報を正確に読み取れる状態を整えることが最初のステップです。

ステップ2:PoCでAIの回答精度を検証する

整備したナレッジの一部を使ってPoCを実施し、想定どおりの回答が得られるかを検証しましょう。実際の業務で頻出する質問を入力し、回答の内容だけでなく、適切な根拠ドキュメントが提示されているかを確認する作業です。精度が低い場合は、検索用のキーワードを調整したり、参照させるデータを扱いやすい形に加工したりするチューニングを繰り返し、品質を高めていきます。

ステップ3:職員研修を実施して利用を定着させる

システムが完成しても、現場の職員が使いこなせなければ、期待した業務効率化につながらない恐れがあります。本格導入のタイミングで研修会を開き、生成AIの基本的な仕組みや、意図した回答を引き出すための具体的な指示の出し方を共有しましょう。機密情報の入力禁止や回答の事実確認など、ガイドラインに沿った利用ルールを併せて浸透させることで、安全な運用体制の構築につながります。

ステップ4:利用状況を分析しナレッジを更新する

運用開始後は、職員がどのような質問を入力しているか、AIが適切に回答できているかを定期的に分析しましょう。回答できなかった質問のログを確認し、該当するマニュアルが不足している場合は新しく作成してAIに追加学習させる運用です。法令改正や制度変更があった際は速やかに参照データを差し替えるなど、ナレッジの継続的なメンテナンスが利用率の維持につながります。

外部サービスを活用して庁内に生成AI導入を進める利点

閉域環境の設計やナレッジの棚卸し、利用ログにもとづく改善までを自庁の担当者だけで担うには、相応のノウハウと工数が求められます。外部の支援サービスに任せることで得られる利点を整理します。

外部サービスに任せられる領域期待できる効果
閉域網を想定したシステム構築自治体のセキュリティ要件に沿った構成で機密性の高い情報を保護できる
庁内規程を参照する仕組みの整備独自の規程にもとづく回答環境を短期間で用意し担当者の負担を減らせる
導入から運用までの伴走課題の可視化やPoC、利用ログの分析・改善まで一貫して進められる

閉域環境で安全な情報参照を実現できる

行政機関でAIを活用するにあたり、大きな懸念の一つに挙げられるのが情報の外部流出です。自治体特有のセキュリティ要件に対応した外部サービスを選ぶことで、閉域環境での利用を前提としたシステム構成で設計を進められます。外部ネットワークから遮断された領域で庁内文書を処理する構成を採ると、情報漏洩のリスクを抑えながら、自庁のセキュリティポリシーに沿ったAI導入をめざせるでしょう。

規程の問い合わせや文書作成を効率化できる

職員からの問い合わせに一次応答するチャットボットを構築するには、規程や業務マニュアルをAIが参照できる形に整える必要があります。この作業には、データ加工や検索精度の調整といった専門的な知見が求められます。構築を外部に任せられれば、総務や人事などのバックオフィス部門が抱える定型的な質問への対応を早期に軽減できるでしょう。過去の資料を参照した文書作成支援まで含めて設計を依頼すれば、起案文書や通知文の作成にかかる時間の短縮も見込めます。

課題の可視化から運用定着までを支援してもらえる

AI活用が定着しない要因の多くは、システムの納品後に改善の担い手がいなくなる点にあると考えられます。導入前の業務整理から本格運用後のチューニングまでを継続的に支援する事業者であれば、対象業務の選定やナレッジの棚卸しといった初期段階の課題を可視化できるでしょう。PoCを通じた環境構築や運用ルールの設計まで任せられる点も、利点として挙げられます。運用開始後も利用状況の分析や検索精度の向上、新しいナレッジの追加といった改善が続くため、AIが使われないまま終わる事態を避けやすくなります。

AI活用を自治体の業務へ実装する

自治体における生成AI活用では、AIツールの選定だけが論点ではありません。対象業務の整理やナレッジの棚卸し、セキュリティ・権限設計、PoC、利用定着、継続改善までを一体で進めることが重要です。ツール導入だけが先行すると、「使われないAI」「答えが信頼できないAI」になりかねません。

NTT ExCパートナーでは、庁内問い合わせや情報検索といった対象業務の整理から着手し、規程・マニュアル類のナレッジ整備、PoC、環境構築、運用設計、利用分析・改善までを一貫して支援します。どの業務からAIを適用するか、誰にどこまで参照権限を与えたほうがよいかといった論点も、公共機関特有の説明責任や年度運営を踏まえて設計できる点が特徴です。

庁内問い合わせ対応には、生成AIチャットボット「YourNavi-QAI-総務」を活用いただけます。組織内の規程や業務マニュアルなどを根拠として回答を返す仕組みで、閉域環境を想定した構成、課題の可視化から改善設計・運用までの支援、規程類への問い合わせや各種文書作成の効率化を実現します。まずは現状整理からご相談ください。

まとめ

庁内業務への生成AI導入は、2026年現在のガイドラインに準拠しながら、情報分散や知識の属人化といった課題の解消をめざす取組みです。RAG技術を活用して規程やマニュアルを参照させると、根拠の明確な回答を導き出しやすくなります。

ただし、導入を成功させるには、事前のナレッジ整理や旧版規程の削除、利用ルールの周知といった運用面の準備が求められます。システム構築だけでなく、対象業務の洗い出しから職員への定着、継続的な精度改善までを自庁の担当者だけで進めるには、相応のノウハウと時間が必要でしょう。過去資料の検索や問い合わせの一次応答、起案文書の下書き作成といった効果を継続的に得るには、閉域環境の設計から利用ログにもとづく改善まで支援できる外部サービスの活用も選択肢となります。まずは対象業務の整理から着手し、自庁に合った進め方を検討してみてはいかがでしょうか。

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